オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

客が落とした料理、飲食店が無料で作り直す必要ある? 専門家に聞く

セルフサービスの飲食店で客が料理を運ぶ際に誤って床に落としたときに、店側が無料で作り直すのは適切なのでしょうか。飲食店コンサルタントに聞きました。

セルフサービスの飲食店で料理を床に落としたら…
セルフサービスの飲食店で料理を床に落としたら…

 ファストフード店やショッピングモールのフードコート内にある飲食店の多くは、セルフサービスを採用しており、この場合、注文した料理の席への運搬や食器の後片付けは、客が自ら行うのが一般的です。こうした店で、客が料理を運ぶ際に誤って床に落としてしまうことがありますが、飲食店によっては無料で作り直すことがあるようです。

 こうした行為について、ネット上では「対応が素晴らしい」「ファストフード店では普通のこと」と評価する声の一方、「モンスタークレーマーを生み出す」「当たり前のサービスだと思う人が出てくる」と否定的な意見もあります。飲食店で客が料理を運ぶ際に誤って床に落としたときに、店側が無料で作り直す必要はあるのでしょうか。飲食店コンサルタントの小倉朋子さんに聞きました。

料理の管理は客の責任

Q.セルフサービスの飲食店で、客が料理を運ぶ際に誤って床に落としてしまうことがあります。その際、料理を無料で作り直す飲食店もあるようですが、この行為は必要なのでしょうか。

小倉さん「セルフサービスの飲食店では、基本的に客は代金を支払った後、自分で商品を席まで運びます。客はその流れを承知の上で注文しているはずなので、商品を受け取った時点でその商品は客のものです。そのため、注文した商品に関しては、基本的に持ち主である客が自分の責任で取り扱うべきではないでしょうか。店側が料理を無料で作り直す必要はないと私は考えます。

客が落とした料理を店側が無料で作り直す行為が当たり前になっていくと、店のサービスの範囲や、客と店の責任の所在が曖昧になる可能性があります」

Q.では、なぜセルフサービスの飲食店の中には、客が床に落とした料理を無料で作り直す店があるのでしょうか。

小倉さん「日本における客商売の長年の慣習や客側に心地よく過ごしてもらいたいという気遣い、SNSでクレームが拡散されるリスクを回避したいなど、さまざまな理由で“無料で作り直す”という行為に至るのだと思います。

特に多店舗展開するファストフード店の場合、一店舗でも客から低く評価されるようなことがあれば、その情報がネットで拡散する可能性もあり、他店舗への影響も少なくないでしょう。そうなれば、店にとって大きな損失になりかねないため、客とのトラブルはできるだけ避けたいのが実情です。

また、すべての店員が常に臨機応変に、適切な対応をするのは難しいので、何かあった際は、できるだけクレームにならない対応を優先する傾向もあると思います」

Q.料理を運んでいるときではなく、食事中に料理を床に落とした客が無料で作り直すよう要求してきた場合、店側はどのような対応をするのが望ましいのでしょうか。

小倉さん「2つの対応が考えられます。1つは同じ料理を無料で作り直して渡す、もう1つは客に再注文するよう求め、客側の判断に委ねることです。これは店側の考え方によって変わるので、どちらの方が望ましいとは言い切れません。ただ、店側が無料で作るのは、あくまでも店側の“好意”と捉えるべきで、本来は客側が再注文し、きちんとその分の料金を支払うべきだと思います。

先述のように、飲食店の商品を購入した時点で、それは既に客のものなので、落とさないよう丁寧に扱うのが道理です。料理を落としてしまった場合、店員に床を掃除させてしまうことになるため、店のオペレーションの流れが一時的に止まります。また、周囲の客にも気を使わせてしまいます。

こうしたことを総合的に考えてみると、やはり自分が落とした料理を無料で作り直すよう店側に要求するのは、正しい行為とはいえないでしょう。飲食店で食事をするのであれば、公共の場にいるということも忘れてはいけないと思います」

Q.セルフサービスの飲食店では、どういったときにトラブルが発生しやすいのでしょうか。

小倉さん「(1)責任が伴うサービスなのか、好意のサービスなのか判別しにくい(2)店側と客側に認識の差異がある場合(3)金銭が伴う場合―の3つの要素が重なると、トラブルが発生しやすいといえるでしょう。

かつて『お客さまは神様です』という言葉もあったように、日本では客側上位の意識や慣習が古くからありました。しかし、昔は客側も心得て、そこに甘んじないよう気を使っていたのですが、近年では『その言葉通りに振る舞ってもよい』と考えてしまうケースが増えたのかもしれません」

(オトナンサー編集部)

1 2

小倉朋子(おぐら・ともこ)

トータルフードコンサルタント、大学非常勤講師、日本箸文化協会代表

飲食店、企業、宿泊業などのメニューを中心としたフードコンサルティング、コンセプト立案、ロゴマーク作成、戦略プラン立案などを一括して請け負う。テーブルマナーと食を総合的に学べる教室「食輝塾」を20年以上主宰。亜細亜大学、東京成徳大学で非常勤講師。日本箸文化協会代表でもある。トレンド分析、食文化、ダイエット、食育など、食に関する幅広い専門性を持つ。著書は監修本含め50冊以上あり、ベストセラー「世界一美しい食べ方のマナー」のほか、「やせる味覚の作り方」「メニュー開発論」「愛さる一人店のつくり方」など。「世界一受けたい授業」「芸能人格付けチェック」「チコちゃんに叱られる」など、メディア出演も多数。トータルフード( http://www.totalfood.jp

コメント

1件のコメント

  1. 小西ひろゆきっていう根性と顔がネジ曲がった国会議員を思い出したw