小麦粉の価格高騰で注目高まる「米粉」でパンを作るメリット、デメリットとは?
米粉は小麦粉よりも安い?
Q.米粉で作るのに向いているパン、向いていないパンについて、教えてください。例えば、フランスパンのような硬いパンの製造時に米粉を使った場合、おいしく作れるのでしょうか。
山崎さん「米粉で作るのに向いているのは、食パンや丸パンなどのソフト系のパンだと思います。なぜなら、型に流し込み、比較的簡単に『しっとり』『軽い食感』でおいしく仕上げられるからです。
ロールパンやフランスパンも作ろうと思えば作れますが、成形するためにサイリウムやタピオカ粉、片栗粉などの食材を加える必要があるのと、先述のように、乾燥を防ぐパーム油などを多用しなければならず、手間がかかります」
Q.「国内のコメの自給率はほぼ100%なので、米粉は小麦粉よりも価格が安い」といった印象があります。実際に、米粉は小麦粉よりも安いのでしょうか。
山崎さん「現時点では、米粉の方が小麦粉よりも製粉コストがかかるので、その分、価格も高いです。日本における小麦の主要輸入国は、アメリカ、カナダ、オーストラリアですが、昨今の北米産の不作などの影響から、政府は『輸入小麦の政府売り渡し価格(政府から製粉会社などに売り渡す価格)』を4月から17%余り引き上げました。それでも、小麦粉の方が米粉よりも安いのが現状です。現在の小麦粉と米粉の価格は次の通りです。
薄力粉(一般的な天ぷら用小麦粉)1キログラム当たり290円前後
強力粉(一般的な製パン用小麦粉)1キログラム当たり360円前後
米粉(一般的な天ぷら用米粉)1キログラム当たり390円前後
ミズホチカラ(一般的な製パン用米粉)1キログラム当たり800円前後」
Q.今後、パン店の間で米粉を使う動きは広まるのでしょうか。
山崎さん「個人的な意見としては、既存のパン店が米粉を100%使ったパンを取り扱うことは、あまり期待できないかと思います。なぜなら、先述の通り、米粉パンと小麦粉パンとでは、工程や扱い方などが全く違うからです。
ただ、小麦粉パンの製パン中に米粉を配合して『しっとり』『もっちり』という食感を加える職人さんは増えるかもしれません。また、ウクライナ危機が長期化し、小麦粉が高騰し続けた場合、パンの中に米粉を配合して材料費を抑えていく職人さんも登場するかもしれません。
一方、米粉を主原料に使う新たなパン店が増えていく可能性は考えられます。農林水産省によると、米粉の本年度の需要量は4万3000トンと過去最多を更新する見通しで、米粉の利用拡大を図る法律が施行された2009年からの第1次ブームのピークと比べ、1.7倍に伸びており、『しっとり感』や『もっちり感』で徐々に人気を集め、第2次ブームが起きているとも言われます。
また、米粉の活用を後押しするため、東京都は、生産者団体や他地域などと連携し、米粉を使った商品の開発や販売に関する支援事業を開始しました。都の6月補正予算で8000万円を計上し、2023年3月末まで実施する方針です。
こうした状況には、『食料自給率の向上』のほか、先進国同様、日本国内においても『SDGsへの取り組み』や『輸入小麦の残留農薬問題』『高グルテン問題』『グルテン不耐症』『小麦アレルギー』『セリアック病』などの対策として、『グルテンフリー食への関心』が高まっていることが背景にあると言えます。
セリアック病の世界的有病率は、世界人口の1.4%との報告があります。実際に日本でも、グルテンの摂取によるアレルギーなどで困っている人たちが多く存在しているので、今後、米粉パンの学校給食や米粉パンの専門店などの需要は増えていき、それに伴い、この問題に長期にわたり、本気で立ち向かい続けているわれわれのような料理人やパン職人、パティシエが増えていくことが考えられます」
(オトナンサー編集部)

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