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高温多湿な夏は「水虫」に要注意! なぜかかる? 予防法を医師に聞く

夏のような高温多湿な時季は「水虫」にかかりやすくなると言われていますが、どのような対策が必要なのでしょうか。専門家に聞きました。

夏は「水虫」にかかりやすい
夏は「水虫」にかかりやすい

 夏のような暑い時季に注意したいのが「水虫」です。水虫は高温多湿の環境で活動が活発となり、急速に増殖すると言われています。水虫にかかると足のかゆみに悩まされるだけでなく、家族にうつしてしまう可能性もあります。

 水虫にかかった場合、どのように対処すればいいのでしょうか。また、水虫を防ぐためには日頃、どのような対策が必要なのでしょうか。アヴェニュー表参道クリニックの佐藤卓士院長(皮膚科・形成外科)に聞きました。

原因菌が皮膚の角質層や爪に寄生

Q.そもそも、水虫はどのような原因でなるのでしょうか。どの部位に、どのような症状が出るのですか。

佐藤さん「水虫の原因菌は『白癬(はくせん)菌』というカビの一種で、『ケラチン』というタンパク質を栄養源にして繁殖します。皮膚の角質層や爪にはケラチンが豊富なため、そこに寄生して感染します。

水虫は体中の皮膚のどこにでもできますが、特に足や足の爪に多くできます。皮膚にかゆいぶつぶつや水疱(すいほう)ができるほか、『足の皮がむける』『足の指の間が白くふやける』『かかとがカサカサになる』『爪が白く濁る』などの症状が出ます。常にかゆいとは限らず、かゆみをあまり感じないことも多いです」

Q.水虫はどういう人がなりやすいのでしょうか。

佐藤さん「日本人のおよそ5人に1人が水虫にかかっていると言われ、そのうち半数は『爪水虫』だと推計されています。加齢とともに皮膚の免疫力が低下するため、高齢になるにつれて、水虫にかかる割合も上昇します。ただ、子どもでも、親の水虫がうつることがあり、年齢は関係ありません。

以前は男性の方が多い(女性の約1.5倍)といわれていましたが、最近では、女性も長時間靴やブーツを履く機会が増えてきているほか、フィットネスクラブなどに通う人も増えているため、男女差はなくなりつつあります。

密閉性の高い靴を長時間履いている人、水虫にかかっている家族がいる人、銭湯やプール、フィットネスクラブによく行く人やそこで働く人は、水虫にかかりやすいので注意が必要です」

Q.水虫になりやすい環境や時期は。

佐藤さん「水虫はカビの感染症なので、気温が高く、ジメジメした場所を好み、夏の高温多湿で増殖しやすくなります。先述のように、水虫を持っている人が家族にいると、床やバスマット、スリッパなどに白癬菌がいる可能性があります。

また、銭湯や温泉、スポーツジムなど、はだしで歩くような場所には水虫菌がたくさん落ちています。夏の季節はそのような場所にいる白癬菌が増えるので、よりかかりやすくなります」

Q.足の指先がかゆかったり、皮がむけたり、かかとの皮膚が硬くなったりしている場合、水虫だと判断してよいのでしょうか。水虫かどうかを見分けるポイントはありますか。

佐藤さん「足の指先や指の間がむずがゆかったり、皮がむけたり、かかとの皮膚がカサカサしている場合は水虫の可能性がありますが、断定はできません。病院で顕微鏡検査を行い、白癬菌がいることを確認して初めて、水虫の診断がつきます。

水虫と症状が似た病気には、湿疹、かぶれのほか、汗が皮膚の中に詰まって水膨れができたり、皮がめくれたりする『汗疱(かんぽう)』、うみを持った小さな水膨れができる『掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)』などがあります。一見、水虫のように見えて、実は違った病気の可能性もあるので注意が必要です」

Q.水虫にかかった場合、どのように対処すればいいのでしょうか。

佐藤さん「水虫の症状は、見た目だけでは診断がつきにくいため自己判断せず、『水虫かな?』と思ったら、病院に行って検査を受けた方がよいでしょう。基本的には、外用薬を塗って治療します。

市販の外用薬でも治療は可能ですが、自己流で治療してもなかなか治らず、病院に行ったら他の皮膚病だったということはよくあることです。治療を始めて症状がなくなっても、まだ、白癬菌が角質層に潜んでいるので、その時点で塗るのをやめたら再発してしまいます。

治療期間は、見た目がきれいになってから、さらに1カ月以上は薬を塗り続けてください。その際、症状がある部位だけでなく、両足全体に塗ってください。爪水虫は外用薬では効きにくく、内服治療(飲み薬)が必要となることが多いので、病院を受診した方がよいでしょう」

Q.水虫の予防法について教えてください。

佐藤さん「まず、家族に水虫を持っている人がいないか確認し、もしいたら、きちんと治療することです。

家族でうつし合わないようにするために『床をきれいにする』『自分用のスリッパを履く』『バスマットはこまめに洗濯する』ことが大事です。1日1回は、足裏や足の指を丁寧に洗うようにしましょう。ちなみに、靴下やストッキングを履いていても、白癬菌は繊維の編み目を通り抜けてしまうため予防効果は期待できません。

密閉性の高い革靴やブーツなどを長時間履き続けないようにしてください。使用後は風通しを良くして保管したり、除菌スプレーを使用したりして菌を増やさないようにし、毎日同じ靴を履かずに何足かをローテーションしながら履くようにしましょう。

次に、外から水虫菌をもらってこないことです。銭湯や温泉、プール、フィットネスクラブなど多くの人がはだしで利用する施設は、白癬菌が足に付着しやすいです。そのまま持ち帰ってしまうリスクがあるので『靴を履く前に除菌シートで拭く』『帰宅したらすぐに足を洗う』などの対策を心掛けてください」

Q.水虫菌は水で洗い流せるのでしょうか。

佐藤さん「皮膚の表面に付いた菌は、洗い流す程度で簡単に落とせます。ただ、水虫菌が付いてから24時間以上放置しないことが大切です。長時間放置すると、菌が角質層内部に入り込んで繁殖を始めるためです。帰宅後は毎日、入浴時に足全体、特に足の裏、足の指の間を丁寧に洗うように心掛けてください」

(オトナンサー編集部)

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佐藤卓士(さとう・たかし)

医師(皮膚科・形成外科)・医学博士

アヴェニュー表参道クリニック院長。京都大学農学部卒業。九州大学医学部卒業。岡山大学医学部、杏林大学医学部、都立大塚病院形成外科にて研鑽(けんさん)を積み、現在に至る。日本形成外科学会認定専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医。日本形成外科学会、日本皮膚科学会、日本美容外科学会、日本レーザー医学会、日本手外科学会、日本創傷外科学会所属。アヴェニュー表参道クリニック(https://www.a6-clinic.com)。

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