子どもの「孤食」増加、栄養上の影響は? 休校や学年・学級閉鎖が増えた今、考える
新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大のため、学校の休校や学年・学級閉鎖が相次いでいますが、共働きの家庭では児童が1人で昼食を食べる「孤食」が増えています。何らかの悪影響があるのでしょうか。

新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大のため、全国各地で休校や学年・学級閉鎖が相次いでいます。共働きの家庭の中には、児童1人で留守番をし、昼食も1人で食べるケースが増えていますが、「孤食」の頻度が多いと、さまざまな影響を及ぼすとして問題視されています。休校や学年・学級閉鎖の措置で、昼食を1人で取らざるを得ない児童にも、孤食の悪影響が及ぶのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。
1980年代から注目
Q.そもそも「孤食」とは、具体的にどのような状況のことを指すのでしょうか。子どもにどのような影響を与えますか。
岸さん「孤食とは、『一人きりの食事』『1人ずつ食べるものが違う』『バラバラの時間に食事を取る』というような意味がありますが、孤独を感じながら取る寂しい食事という意味合いで捉えられています。具体的には、子どもが孤食をすると、好きな物ばかり食べる▽栄養の偏りが生じる▽食欲低下や肥満の原因になるなど、健康や体の成長に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、家族のコミュニケーションが欠如することで社会性や協調性の育成に影響が出る他、寂しさからイライラしたり、情緒不安定になったりして心の病気や問題行動を誘発する傾向があるとされています」
Q.どれくらい前から、子どもの孤食が注目され始めたのですか。
岸さん「子どもの孤食が注目され始めたのは1980年代からで、今の親世代が子どもだった頃から、すでに関心事として存在していたわけです。家族が一緒に食事をしていた回数は、30年ほど前は年間で700~800回といわれていましたが、今ではその半分以下の300回ほどまで減少している家庭もあります。
現代の家庭に増えている『こしょく』には、『孤食』を含め、『小食』『個食』『濃食』『固食』『粉食』の6種類あります。人と接する機会が少なくなると、先述した『孤食』をすることでの影響の他にも、その他の『こしょく』を加速させる原因にもなってしまうため、特に『孤食』が問題視されています」
Q.休校や学年・学級閉鎖が長期化したり、今後も頻繁に休校や学年・学級閉鎖が行われたりする可能性もあります。共働き家庭の児童が、昼食を1人で食べる状況が続くと、何らかの影響が出るでしょうか。
岸さん「影響があるかどうかについては、子どもたち個々の資質や家庭環境の違いがあるのでどちらともいえません。しかし、長期化すると子どもも親も生活に疲弊する可能性はあるだろうと思います。孤食の影響もなきにしもあらずです。
そのしわ寄せを解消する工夫として、夕食時間をコミュニケーションの場として、いつも以上に子どもの話に耳を傾けたり、偏りがちな栄養の帳尻合わせをしたりしましょう。朝食の方が家族みんなで食事をとりやすい場合は、短時間でも子どもと一緒に食卓に座るために、少しだけ早く起きたり、身支度の順番を変えたりするなど、できる範囲で対策を見つけるとよいのではと思います」
Q.「子どもが火を使うと危ない」と、チャーハンなど電子レンジで調理できる冷凍食品を昼食としている家庭もありますが、冷凍食品に頼りすぎると栄養バランスもよくないと思います。どのように対応したらよいですか。
岸さん「休校や学年・学級閉鎖は、思いがけず起きる非常時なので、手軽においしく食べられる冷凍食品やレトルト食品などを大いに活用したらよいと思います。親が『1食ぐらいはあまり手を加えない食事でもよい』との気持ちの余裕を確保することが、大切なのではないでしょうか。
出来合いの物ばかりで心苦しいと感じるときは、栄養の補助として、100%野菜果汁の飲み物やヨーグルト、ゆで卵、チーズ、ナッツ類、果物、小魚などを用意しておくと便利です」
Q.1人で昼食を食べざるを得ない児童がいる家庭では、どのような工夫をした方がよいのでしょうか。
岸さん「孤食となってしまう場合、『その日の孤独はその日のうちに』『栄養バランスの帳尻合わせは3日のスパン』という気持ちで工夫するとよいでしょう。つまり、昼間の寂しさは可能な限り、その日の夕食を子どもと囲み、子どもの心に寄り添うことで理解を深め合うことが大切だと思います。
そして、栄養については親の負担にならない範囲で、『今日の食事の栄養バランスがあまりよくなかったら明日の食事で補おう、それが無理なら、あさってまで』くらいの余裕で考えればよいということです。
例えば、お昼が冷凍食品のチャーハン、焼きおにぎり、唐揚げ、レトルトカレーなどが中心の場合、不足しがちな栄養素はカルシウムやベータカロテン、ビタミンC、ミネラル、食物繊維などです。食品では、緑黄色野菜や海藻、きのこ、乳製品、大豆製品、魚介類などに多く含まれます。毎日全てではなくとも、3日間のうちに取ればよしとしてメニューを考えていきましょう。
冷凍野菜や下処理のいらない乾燥ワカメ、カット野菜、ミールキット(食材セット)などを活用し、洗ったり切ったりする下ごしらえの手間を省き、時短で栄養バランスのよいおかずを作ることができます。多めに作れば、次の日の子どものお昼に副菜としてプラスすることもできますね」
(オトナンサー編集部)
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