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受験に“勝つ!”で前夜に「とんかつ」、消化悪そうだけど大丈夫?

大切な試験の直前は“験担ぎ”をしたくなるものです。人気はとんかつやカツ丼ですが、消化の負担が大きい食べ物でも大丈夫なのでしょうか。

受験前日に「とんかつ」大丈夫?
受験前日に「とんかつ」大丈夫?

 大学や高校受験のシーズンが始まりました。ある調査では、受験生の親が受験前日に子どもに作ってあげたい勝負メシを聞いたところ、「とんかつ」「カツ丼」が合計73%となるなど、“験担ぎ”として両者は人気のようです。しかし、験担ぎとはいえ、とんかつやカツ丼は消化の負担が大きく、万全の体調で試験に臨むには逆効果のようにも思います。大切な試験の前に、験担ぎでとんかつやカツ丼を食べても問題ないのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

自己暗示としては有効だが…

Q.試験前に、験担ぎでとんかつやカツ丼を食べても問題ないのでしょうか。

岸さん「体調管理を万全にして出陣する上で、おすすめできる食べ物ではありません。“勝負に勝つ”という意気込みで『カツ』を食べるのは、自己暗示をかけてメンタル面をサポートする意味では有効な手段だと思います。しかし、栄養学的には全く根拠はなく、むしろ、おなかを壊す可能性がある食べ物になり得ます。

なぜなら、試験前日の緊張状態では、交感神経が優位になり、副交感神経に支配される消化器系の働きが悪くなるからです。とんかつは豚の脂に衣の油と脂質が多く、消化に時間がかかる食べ物です。胃腸の働きが弱まっているときに負担のかかる食べ物を取ることで、睡眠に影響が出たり、翌朝、胃もたれを起こしたりすることも考えられます。

ストレスによる過剰な腸の収縮運動でおなかが痛くなったり、下したりすることもあります。小学校や中学校受験を控えた子どもは、特に、精神的に影響を受けやすいので、食事の内容に気を付けましょう」

Q.では、試験前日や当日に食べるとよい食べ物を教えてください。

岸さん「前日からは心を落ち着かせ、緊張を和らげ、質の良い睡眠を取って当日を迎えたいものです。当日は脳の活力や集中力を高め、クリアな気持ちと頭の回転をアップさせるコンディションが作れるよう、食べ物の力を活用して試験に臨んでほしいと思います。そこで、受験生におすすめの栄養素と食品の一部をご紹介します。次の(1)~(12)です。

これらは単独で働くというよりは、バランスの良い食事のプラスアルファとして考えるのが賢明です。一例としては、▽サケのチャンチャン焼き▽豚汁▽サバの塩焼き▽イワシのトマト煮▽大豆とひじきの煮物▽納豆ご飯▽イチゴ&ヨーグルト▽抹茶ミルク▽ホットチョコレート―など、さまざまな取り方はありますが、普段食べ慣れている食事に合わせて素材を入れ替えたり、追加したりしながら取り入れるとよいでしょう」

(1)パンやご飯など脳のエネルギー源となるブドウ糖
(2)糖の代謝を促すビタミンB1の豊富な豚肉
(3)頭の働きを良くするDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれる青魚やブリ、サーモンなど脂の多い魚
(4)脳の抗酸化物質として脳細胞を守るアスタキサンチンが豊富なサケ、イクラ、エビ
(5)脳疲労の改善や神経伝達物質として働くタウリンが豊富なイカ、タコ、ホタテなどの魚介類
(6)記憶力や学習、睡眠に深い関わりのあるレシチンが多い大豆や卵黄
(7)心を落ち着かせ、鎮静作用のあるカルシウムが取れる小魚や乳製品
(8)カルシウムの吸収を助け、全ての代謝に関わるマグネシウムが多い海藻や納豆
(9)リラックス効果や集中力を高めるテオブロミンを含むカカオが原料のココアやチョコレート
(10)脳の興奮を静め、睡眠の質を向上させるギャバが含まれるトマトや発酵食品
(11)リラックス効果を高めるテアニンが含まれる緑茶
(12)風邪予防やストレスで消耗するビタミンCが豊富なかんきつ類やイチゴ

Q.逆に、試験前日や当日に食べない方がよい食べ物はありますか。

岸さん「刺し身のような生ものなど食あたりを起こす心配があるものや、普段食べ慣れないものは控えましょう。胃腸の働きが弱っていたり、緊張していたりするときに、刺激になるような辛い食べ物、香辛料がきついもの、消化に負担のかかる脂っこい食べ物、興奮性のあるカフェインが含まれる食品などは避け、できれば前日は寝る3時間前に食事を終え、消化を済ませて眠りにつきましょう。睡眠の質が向上します。

そして、当日の朝食も、試験の3時間前には食事を済ませておくようにしましょう。直前だと消化するのにエネルギーを使ってしまうためです」

Q.ちなみに、食べるとよい食べ物の中に、験担ぎと関連したものはありますか。

岸さん「語呂合わせですが、験担ぎで人気の食べ物はいくつもあります。当日のお弁当にも験を担いで勝利のエールを送りたいですね。

ただ、気を付けてほしいのは、試験前だからといって気張る必要はないということです。普段食べ慣れていないものを食べると、逆に負担がかかってしまいます。前日当日だけ食事に気を付けるのではなく、普段からバランスの良い食事を取ることが大切です。慣れている生活習慣の範囲内で少し置き換える程度がよいでしょう」

【納豆や山芋などのねばねば食品】→粘り強く頑張る
【ちくわやレンコン】→試験に通る
【こんぶ】→喜ぶ
【オクラ】→五角形で合格・粘り強く
【イヨカン】→いい予感
【おむすび】→良い結果に結びつく
【タコ】→多幸
【西京焼き】→最強
【ブリ(煮物や焼き物)】→出世魚で縁起良く

(オトナンサー編集部)

岸百合恵(きし・ゆりえ)

プロボクサー、管理栄養士、日本糖尿病療養指導士

病院食の管理・調理業務や企業での特定保健指導を経て、生活習慣病診療を専門とするクリニックにおいて5年間、栄養指導を実施。アスリートとしても夢を追い掛け、2017年に日本ボクシングコミッション(JBC)のプロテストに挑戦し、一発合格。「闘う管理栄養士」として、チャンピオンを目指して日々トレーニングに励みながら、ボディーメークや健康管理の指導を行う。現在は、スポーツ・睡眠歯科分野の診療を行う歯科医院で、アスリートへの食事指導や、一般患者へのダイエット、フレイル・サルコペニア予防の指導を行う他、内科クリニックで生活習慣病患者に対する食事指導を行っている。

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