大掃除の味方「掃除用洗剤」、酸性・アルカリ性・中性はどう使い分ける?
今年も大掃除の時季。掃除用洗剤の液性には「酸性」「アルカリ性」「中性」の3タイプがあります。上手な使い分け方を掃除のプロに聞きました。

今年も大掃除の時季が来ました。家中を掃除する上で欠かせないのが「掃除用洗剤」です。掃除用洗剤には「トイレ用」「キッチン用」など用途別に種類がありますが、それらの製品表示を見ると、用途にかかわらず、「酸性」「アルカリ性」「中性」と異なる液性のものがあります。上手に使い分けたいところですが「同じトイレ用洗剤でも酸性とアルカリ性があって、どっちがいいか迷う」「それぞれの洗剤の特徴が知りたい」といった声も少なくありません。
酸性、アルカリ性、中性の掃除用洗剤を効果的に使い分けるポイントについて、ハウスクリーニングアドバイザーの有賀照枝さんに聞きました。
「得意な汚れ」に応じて使い分け
Q.掃除用洗剤における「酸性」「アルカリ性」「中性」という液性はそれぞれ、どのようなものですか。
有賀さん「酸性、アルカリ性、中性は物質を水に溶かしたときの水溶液の性質のことで、水素イオン濃度を示す指標のpH(ピーエイチ、またはペーハー)という単位で0〜14段階で示されます。酸性はpH3.0未満、弱酸性はpH6.0未満3.0以上、中性はpH8.0以下6.0以上、弱アルカリ性はpH11.0以下8.0を超えるもの、アルカリ性はpH11.0を超えるものです。
洗剤の種類は石油や油脂を原料とする合成界面活性剤が主成分の『合成洗剤』、汚れを漂白する塩素系や酸素系の『漂白剤』、クレンザーで知られる『研磨剤』などがあり、合成洗剤一つとっても、商品によって、液性は酸性、アルカリ性、中性とさまざまです。洗剤の液性が異なると、落とせる汚れも違ってきます」
Q.酸性、アルカリ性、中性の掃除用洗剤について、それぞれの液性が適している掃除場所について教えてください。
有賀さん「3つの液性はそれぞれ、得意な汚れや使ってはいけない素材、使用時の注意点が異なります。液性別の特徴やポイントは次の通りです」
【酸性】
酸性の掃除用洗剤といえば、塩酸が配合された洗剤や、ナチュラルクリーニングでもよく登場するクエン酸がよく知られています。酸性洗剤は蓄積されてできる炭酸カルシウムが主成分のトイレの尿石や、風呂場などの蛇口や鏡、加湿器などによくみられる、水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどが固まった白い水あかを落とすのが得意です。一方、金属製品や大理石に使うと素材を傷める可能性が高いので、使わないようにしましょう。
【アルカリ性】
アルカリ性の掃除用洗剤といえば、ナチュラルクリーニングではセスキ炭酸ソーダ、弱アルカリ性のものでは重曹がよく知られています。風呂場の皮脂などが混じったせっけんカスや、キッチンの油汚れに効果的です。また、塩素系アルカリ性洗剤は風呂場などに発生するカビに有効です。使用する際は、手肌が荒れないようにゴム手袋をつけ、直接、肌に触れないように注意しましょう。
また、アルカリ性洗剤はステンレス以外の金属製品には使わないようにする他、ステンレスの場合でもサビの原因となり得るので、長時間、接触しないようにしてください。
【中性】
中性の掃除用洗剤といえば、キッチンで使う食器洗い用洗剤を思い浮かべる人も多いと思います。素材が傷みにくく、酸性やアルカリ性洗剤に比べて洗浄力がマイルドですが、その分、手肌も荒れにくいので、普段使う機会の多い洗剤です。界面活性剤が入っているので、軽い油汚れも落とせます。
ひどい汚れでなければ、だいたいの汚れは中性洗剤で落とせると考えてよいと思います。そのため、広い場所に使えますが、無垢(むく)材でできた家具や床に使うとシミになることもあるので、薄めたり、目立たない部分で試したりしてから使うようにしましょう。
Q.「トイレ用」「キッチン用」などの用途別洗剤の中には、同じ用途であるにもかかわらず、液性を見ると酸性、アルカリ性、中性と、異なる種類のものに分かれていることがあります。なぜでしょうか。
有賀さん「同じ用途なのに液性が違うのは、落とせる汚れが違うからです。例えば、トイレ用洗剤の場合、普段の掃除は中性洗剤で十分かもしれませんが、アンモニア臭がしたり、尿石が付いたりした場合は中性洗剤だと汚れを落とせないので、酸性洗剤を使います。また、便器の縁や水たまりにできる黒い輪状の汚れは細菌によるものなので、こちらも中性洗剤ではなく、塩素系アルカリ性洗剤を使って落とします。
キッチン周りでは、食器や鍋を洗う場合は中性洗剤である食器洗い用洗剤を使いますが、鍋に焦げ付きができたときは弱アルカリ性クレンザーで研磨します。他にも、まな板などのキッチン用品を除菌する場合は塩素系アルカリ性洗剤を、電気ポット内部にできる白い水あかはクエン酸などの酸性洗剤を使って汚れを落とすなど、液性によって使い分けることで、さまざまな汚れに対応できます」
Q.ハウスクリーニングアドバイザーとして特におすすめなのは、3つの液性のうち、どれでしょうか。
有賀さん「家庭の大掃除では、汚れに応じた酸性やアルカリ性洗剤があると特に役立つかと思います。普段の掃除ではできない箇所や、なかなか掃除が行き届かない細かい部分となると、汚れがたまって、頑固な汚れになり、中性洗剤では落とし切れない場合が考えられるからです。
ただ、家庭に常備しておく洗剤としては中性洗剤がいいと思います。掃除の頻度やどんな汚れが出やすいのかは各家庭によって変わってくるので断定はできませんが、中性洗剤があると、一般的な汚れに広く対応できるからです。汚れをそうためずに掃除ができるのであれば、中性洗剤があれば事足りるかもしれません。
例えば、ガスレンジ周りの油汚れも調理終了後すぐに、熱めの湯で絞ったクロスで拭き取れば、アルカリ性洗剤を使わなくとも汚れを取り除くことができます」
Q.これら3つの液性について、掃除に使う際に注意が必要なこととは。
有賀さん「掃除用洗剤には、家庭用品品質表示法に基づいた内容の記載がラベルに書かれているので、必ず、目を通してから使うようにしましょう。対応している汚れ、使ってはいけない場所や素材、使用上の注意などが細かく書かれています。また、『まぜるな危険』と記載のある洗剤を使うときは必ず、単独の種類で、換気をしっかり行いながら使いましょう。
塩素系アルカリ性洗剤と酸性洗剤を混ぜて使うと、有害な塩素ガスが発生する危険があるためです。仮に塩素系アルカリ性洗剤を使った後に酸性洗剤を使う場合、水でしっかりと成分を洗い流してから使いましょう。空になった洗剤ボトルに表示とは異なる洗剤を入れることも危険です。間違った使い方をしてしまうリスクがあります。
希釈して使う洗剤の場合は規定通りに希釈して使いましょう。汚れを効果的に落とせます。また、掃除用洗剤を保管する際は直射日光を避け、高温になる場所には置かないようにしましょう」
(オトナンサー編集部)
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