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台風や大雨時、どのタイミングで避難する? 2000人調査 命を守る心得、専門家が解説

情報収集と「自分で判断」意識

Q.自分や家族の命を守るために必要な心構えや、普段しておくべきことを教えてください。

島崎さん「自治体や政府の情報発信を否定するわけではありませんが、個人に最適化した防災情報を個別に出すことはほぼ不可能です。やはり、自分で考え、臨機応変に判断する力が求められます。判断のためには情報が必要です。普段、しておくべきことは情報収集です。『避難所の場所を知っている』レベルではなく、その避難所が気象災害のときにも安全が確保できる場所なのかを調べておく必要があります。

自宅が浸水域の場合、自宅より高台になっていない避難所は自宅同様に浸水域内にあり、地震のときにしか使ってはいけない避難所かもしれません。このような点を今一度調べ、第2、第3の選択肢を検討しておくことも必要です。意識的にハザードマップなどを見て、情報を集めることも大切ですが、町を歩いているときや近所のお年寄りと話しているときなど、何げないことからも防災と関連する情報を集められるようになるとよいと思います。

また、命を守ることも大切ですが、日本の災害対策は進んでいるので実際に命を落とすことはまれです。それよりも生き延びた後、日常に戻るまでにいかに不便なく、快適に過ごすかも考えておく必要があります。自宅付近一帯が甚大な被害を受けたような場合、支援が必要な人はなるべく少ない方がよいので、被災地からひとまず出るというのも選択肢として、『あり』だと思います。安全な場所に住む親戚や友達の家、職場などに行った方がよい場合もあるかもしれません。

そうした非常時のために、普段から関係づくりや約束しておくことも含めて、準備しておくとよいでしょう。避難所に持っていくものもよく聞かれるのですが、地域や家庭によってさまざまです。例えば、寒冷地では暖を取れるものが必要かもしれません。小さい子やお年寄りなど、家族にどんな人がいるかによっても必要なものは違います。自分たちにとって何が必要なのかを臨機応変に考えることが大切です。

心理学者の立場から付け加えると『心』のことも考えておきたいです。避難所生活はストレスがたまるので、ストレスを解消してくれるものや暇つぶしができるもの、人と仲良くなるきっかけになるものも、避難時に持っていくとよいかもしれません。例えば、私の娘は絵が好きで、毎日時間さえあれば、絵を描いていますが、避難所に行って絵が描けないとなったら、すごくストレスがたまるはずです。絵を描く最低限の道具は(もし避難するなら)持っていった方がいいなと思っています」

※この記事はオトナンサーとYahoo!ニュースによる共同企画で、Yahoo!ニュースが実施したアンケートの結果を活用しています。アンケートは10月2日、全国のYahoo! JAPANユーザーを対象に行い、2000人から有効回答を得ました。年代は30代17%、40代35%、50代26%が多く、男女比はほぼ6対4。職業は会社員45%が最多で、専業主婦(主夫)13%、自営業・フリーランス11%、アルバイト10%などでした。

※アンケートのパーセンテージは小数点第2位を四捨五入しており、合計が100%にならない場合があります。

(オトナンサー編集部)

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島崎敢(しまざき・かん)

近畿大学生物理工学部准教授

1976年、東京都練馬区生まれ。静岡県立大学卒業後、大型トラックのドライバーなどで学費をため、早稲田大学大学院に進学し学位を取得。同大助手、助教、国立研究開発法人防災科学技術研究所特別研究員、名古屋大学未来社会創造機構特任准教授を経て、2022年4月から、近畿大学生物理工学部人間環境デザイン学科で准教授を務める。日本交通心理学会が認定する主幹総合交通心理士の他、全ての一種免許と大型二種免許、クレーンや重機など多くの資格を持つ。心理学による事故防止や災害リスク軽減を目指す研究者で、3人の娘の父親。趣味は料理と娘のヘアアレンジ。著書に「心配学〜本当の確率となぜずれる〜」(光文社)などがあり、「アベマプライム」「首都圏情報ネタドリ!」「TVタックル」などメディア出演も多数。博士(人間科学)。

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