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台風や大雨時、どのタイミングで避難する? 2000人調査 命を守る心得、専門家が解説

災害には備えが大切ですが、台風や大雨への備えをしている人はどれくらいいるのでしょうか。台風の襲来や大雨が予想されるとき、「いつ避難するか」についてどう判断するのか、アンケートで聞きました。

台風19号による大雨で千曲川の堤防が決壊、大きな被害が出た長野市内(2019年10月、時事)
台風19号による大雨で千曲川の堤防が決壊、大きな被害が出た長野市内(2019年10月、時事)

 秋は台風シーズンでもあり、災害が多発する時季です。災害には備えが大切ですが、なかなか実践できない人もいるようです。台風や大雨への備えをしている人はどれくらいいるのでしょうか。避難指示が出るような台風の襲来や大雨が予想されるとき、「いつ避難するか」について、どう判断しようとしているのでしょうか。2000人に聞いたアンケートの結果と専門家のアドバイスを紹介します。

水や非常食の備蓄は6割

「災害への備え、具体的にしていること」への回答
「災害への備え、具体的にしていること」への回答

 アンケートは10月2日、全国のYahoo! JAPANユーザーを対象に行い、2000人から有効回答を得ました。

「台風や大雨への備えをしていますか」という質問には「している」が14.8%、「少しはしている」が59.2%で最も多く、「していない」は26.1%でした。「している」「少しはしている」人に、具体的にどんなことをしているかを複数回答で聞くと「避難所の場所の確認」が64.8%と最多で、飲料水の備蓄63.4%、非常食の備蓄59.8%などと続きました。

 備えの有無の理由を複数回答で聞いたところ、「している」「少しはしている」人のうち、84.7%は「家族や自分の命を守りたいから」を、17.0%は「自分の地域が災害の危険性が高いと知っているから」を挙げました。一方、「していない」理由としては「台風や大雨での災害を経験したことがないから」が39.5%、「自分の地域では大きな災害は起きないと思うから」35.6%と続きました。

 では、台風が接近したり、大雨の予報が出たりしているとき、「どういうタイミングで避難するか」を決めているのでしょうか。行政から「避難指示」が出た時点など、8つの選択肢から1つだけ選んでもらいました。

 その結果、「『避難指示』が発令されたら」と答えた人が31.5%で最も多く、避難のタイミングとして次に多かったのは「『緊急安全確保』が発令されたら」11.8%でした。ただし、緊急安全確保は「命の危険が迫り、直ちに安全を確保すべき状況」なので、屋外への避難がかえって危険な場合もあります。

 次に多かった「地域の雨量や川の水位が一定の水準になったら」(11.5%)という人は、自分なりの基準を持っているといえそうです。避難をすすめる行政からの情報では比較的早い段階である「高齢者等避難」が発令されたらという回答は3.7%、「暴風警報や大雨警報が発令されたら」という回答は3.3%にとどまりました。

 一方で「タイミングを決めていない」人が30.7%、「避難するつもりはない」という人も6.1%いました。また、「コロナ禍での避難所への避難」への抵抗感を全員に聞いたところ、「ある」が58.6%と半数を超え、「その時の地域の感染状況次第」が26.4%、「ない」は15.1%にとどまりました。

「全体的に遅い」印象

「避難のタイミング」への回答
「避難のタイミング」への回答

 アンケート結果について、防災心理に詳しい、名古屋大学未来社会創造機構特任准教授の島崎敢さんに聞きました。

Q.「どのタイミングで避難すると決めているか」への回答を見ての感想は。

島崎さん「全体的に遅いです。『避難指示が発令されたら』という回答が31.5%と最多ですが、避難指示は『もう本当に、危険な状況』になって出るものなので、避難自体にも危険が伴います。それに雨や風が強くなっている状況なので、避難中に間違いなくずぶぬれになります。基本的には、行政からの情報発信と関係なく、雨が降り始める前(あるいは、まだ小雨のうち)の明るい時間に避難することを推奨します。

『タイミングを決めていない』というのも、よくないと思います。ずるずると様子見をしているうちに避難できなくなるかもしれません。また、様子見をしていると、次第に風雨が強くなるわけですから、家から出る心理的な抵抗もどんどん強くなっていきます。避難時の移動手段について、内閣府は車での避難は推奨していませんが、これは冠水した道路を走行すると、路面状況が分からず、危険だからです。雨が降り始める前なら、必要なものを車に載せて、ゆうゆうと避難してもよいわけです。

警報や注意報の可能性がある場合、気象庁がホームページで出す『時系列予報』というものが役立ちます。それを見ると、何時ごろに自宅付近が危険になるかが分かりますので、そのはるか前から逃げておくことをおすすめします。自治体からの情報発信は本当に危険な状況になってからなので、それを待つのはやめましょう」

Q.避難するなら早い方がよいということですね。

島崎さん「あくまで、『避難するなら』早い方がよいということです。国土交通省の資料によると、洪水や土砂災害の危険区域に住んでいる人は日本人の3割強です。つまり、国民の7割弱は避難が必要ない場所に住んでおり、『在宅避難』が安全という人も多いわけです。私自身も自宅は浸水域でも土砂災害警戒区域でもないので、避難するつもりはありません。

自宅が安全な人はわざわざ、避難所に行かないというのも、コロナ禍ではますます重要だと思います。これを見極めるためにも、まずはハザードマップの確認が大切です。アンケートで『地域のハザードマップの確認』をしている人が43.4%いましたが、どこまで深く読み込んでいるかが気になります。私がこの防災アンケートの設計段階から携わっていたとしたら、ハザードマップの読み込み具合も詳しく聞きたかったところです。

ハザードマップを見る際、多くの人が『自宅が浸水域や土砂災害警戒区域に入っているか』はチェックすると思いますが、浸水域の場合、『浸水の深さはどのくらいになるのか』『自分が考えている避難ルート上に、より危険な箇所(より深く浸水しそうな場所や土砂崩れしそうな場所など)はないか』『水が引くまでに何日かかるのか』などを確認して初めて、『確認した』といえるでしょう。そこまで確認している人は43.4%のうちのほんの一握りかもしれません。

なお、水や食料を備蓄している人はいずれも約6割とそこそこいるようですが、ハザードマップを読み込んで初めて、何日分の備蓄が必要か分かるはずです。例えば、東京の東側が大規模な洪水に見舞われると、場所によっては2週間ほどは水が引かないそうなので、2週間の在宅避難に備えた、水や食料の備蓄が必要ということになります」

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島崎敢(しまざき・かん)

近畿大学生物理工学部准教授

1976年、東京都練馬区生まれ。静岡県立大学卒業後、大型トラックのドライバーなどで学費をため、早稲田大学大学院に進学し学位を取得。同大助手、助教、国立研究開発法人防災科学技術研究所特別研究員、名古屋大学未来社会創造機構特任准教授を経て、2022年4月から、近畿大学生物理工学部人間環境デザイン学科で准教授を務める。日本交通心理学会が認定する主幹総合交通心理士の他、全ての一種免許と大型二種免許、クレーンや重機など多くの資格を持つ。心理学による事故防止や災害リスク軽減を目指す研究者で、3人の娘の父親。趣味は料理と娘のヘアアレンジ。著書に「心配学〜本当の確率となぜずれる〜」(光文社)などがあり、「アベマプライム」「首都圏情報ネタドリ!」「TVタックル」などメディア出演も多数。博士(人間科学)。

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