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「大豆田」でも存在感、石橋静河がヒロイン像を令和型にアップデートさせる!

2世芸能人に対する変化

 そもそも、この10年くらいで、2世芸能人に対する世間の認識はかなり変わりました。大々的に売り出され、ちやほやされることが減り、ある程度のキャリアを積んでから、2世だと知られるケースも増えています。

 成功する人もいれば、うまくいかない人もいて、中には不祥事で消えてしまう人も。と、さまざまなパターンが繰り返されるうち、結局のところ、2世芸能人も実力次第なのだというイメージになってきたように思われます。つまり、2世の在り方や取り巻く状況がアップデートされたのです。

 そんな変化を象徴する一人が石橋さんです。親を知っているからというノスタルジックな懐かしさより、本人の芝居の新鮮さで世間の目に留まった、そんな印象を受けるからです。

 その新鮮さを大いに感じさせたのが、昨年の10月期に放送された連ドラ「この恋あたためますか」(TBS系)です。物語の軸となるのは、森七菜さん扮(ふん)するコンビニスイーツ開発の新米スタッフと、中村倫也さんが演じたコンビニの社長との少女漫画チックな恋。ギクシャクしながら、年の差も超えて、2人は心を通わせていきました。これはこの火曜ドラマ枠が得意とするパターンでもあります。

 が、この作品ではちょっと意外な反応も起きました。石橋さん扮するライバル役を応援する人がかなり出現したのです。恋愛でもスイーツ開発でも先輩にあたるライバル役とくっついた方が「自然だ」とか、にもかかわらず、身を引こうとしたりするのが「切ない」といった声がSNSなどで多く見られました。

 これは森さんが演じた少女っぽい不器用さに対し、石橋さんが大人の不器用さをうまく表現した結果でもあります。そのリアリティーが、少女漫画的なファンタジーを上回ったとも言えます。

 さらに、彼女は昨年、配信ドラマの「東京ラブストーリー」(FODなど)にも出演しました。1991年に大ヒットした連ドラの「令和版」です。彼女が演じたのは、かつて、鈴木保奈美さんが演じた赤名リカ。恋に前向きで自分に正直なその生き方が平成のヒロイン像、そして、世の女性たちに大きな影響をもたらしました。

 そんな伝説的ヒロインの令和版に彼女が選ばれたのは、おそらく、偶然ではありません。約30年ぶりにリメークする以上、そのヒロイン像もアップデートさせる必要があり、それができると思わせたからでしょう。

 彼女自身、インタビュー(朝日新聞デジタル)で「当時と今の若者が感じることは違うと思う。新しいものを作るという感じ。トレースする(なぞる)わけではないんです」と語っていました。実際、彼女は赤名リカを令和型にアップデートできていたと思います。

「芝居」「音楽」「ダンス」の3要素

 そのカギとなったのは、彼女が打ち込んだコンテンポラリーダンスかもしれません。両親から天分を受け継いだと考えられる芝居と音楽に加え、自分で選んだこのモダンなジャンルの素養が、彼女の表現に現代的なテイストを添えているのではと想像します。

 なお、芝居と音楽とダンスという3つの要素から思い出されるものがあります。5年前に、星野源さんが巻き起こした「恋ダンス」のブームです。彼は先日、新垣結衣さんとの結婚を発表して、またまた時の人になりました。彼もまた、芸能というエンタメをアップデートさせている一人です。

 トレンドとも言うべき3つの要素を併せ持つ石橋さんもまた、そんな能力を秘めているのではないでしょうか。彼女が今後、どのようなヒロイン像を作っていくのか、その活躍が楽しみです。

(作家・芸能評論家 宝泉薫)

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宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

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