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親がワクチン拒否、帰省できず…親を説得すべきか、尊重すべきか 37歳男性の例

アラフォー世代の親は65歳以上の人も多いですが、親が新型コロナウイルスのワクチン接種を拒否したら、あなたはどうしますか?

ワクチン接種を受ける菅義偉首相(2021年3月、時事、代表撮影)
ワクチン接種を受ける菅義偉首相(2021年3月、時事、代表撮影)

 医療従事者を対象に、新型コロナウイルスのワクチン接種が行われていますが、4月12日からは、65歳以上の高齢者を対象に始まる予定です。親の年齢が65歳以上であることも多いアラフォー世代の中には、万が一にも親に感染させないよう、年末年始やお盆の帰省を控えてきた人も多いでしょう。一刻も早く親にワクチンを接種してもらい、安心して帰省したいところです。

 しかし、ワクチンそのものへの疑問や「医者嫌い、病院嫌い」などの感情から、ワクチン接種を拒否する高齢者もいるようです。こうした場合、アラフォー世代は、ワクチンを接種するよう親を説得した方がよいのでしょうか。あるいは親の意向を尊重した方がよいのでしょうか。父親がワクチン接種を希望していないという、アラフォー男性の葛藤を紹介します。

ワクチンの安全性に疑問

 Aさん(37歳、男性)は妻と子ども2人の4人家族で、都内に住んでいます。両親(ともに68歳)が住む実家は中部地方にあり、Aさんは年に1~2度、家族全員で帰省していました。

 しかし、両親は「新型コロナ感染に神経質」で、コロナ禍の中、Aさん一家が帰省することを嫌がっているそうです。Aさんも両親の意向を尊重し、両親と直接会うことなく丸1年がたちました。母親からは小まめに連絡をもらっていて、両親の近況はよく聞いており、2人とも変わらず元気なようです。

 そして、国内でワクチン接種が始まるとの発表がありました。「ワクチンを接種してくれたら、両親もようやく孫に会えるからうれしいだろう」とAさんは思い、今年の夏休みに帰省する計画を立てました。そのタイミングであれば、両親のワクチン接種は済んでいるはずです。しかし、帰省のことを母親に伝えると歯切れが悪く、要領を得ない返事だったそうです。

「実は、父がワクチンを接種する気がないようなのです。元々、病院が好きではない方でしたが、新型コロナのワクチンについて父なりに調べたらしく、安全性に疑いを持っているようでした。

父はワクチン接種に消極的どころか『断固拒否』という姿勢で、『世界規模の人体実験に参加する気はない』とまで言っていると聞き、気持ちが暗くなりました。母も父から、ワクチンの危険性をいろいろと聞かされているようで、ワクチンに懐疑的になっていました。

母にだけでもワクチン接種を決意してもらいたかったので、『ワクチンに関する情報はデマも多いから、全部うのみにしてはいけない』と伝えたのですが、あまり効果がないようでした」(Aさん)

 Aさんは、都内に住む妹と話し合いました。お父さんの意向を尊重して、ワクチンを接種しないことを黙認するか、何とか説得して、接種してもらうべきかについてです。

「父を説得するのは骨が折れますし、諦めて、放っておきたい気持ちもあります。しかし、妹は『今まで散々、わがままを聞いてきたのだから、今回ばかりは許さない。何としてでもワクチンを接種させる』と憤慨していて、僕もそれに共感して、『努力しよう』と思い直しました。

酷な言い方になりますが、父がワクチンを接種せず、新型コロナに感染しても、それは父の自己責任です。そのことは父も理解しているようですが、自分の命を自分だけのものと思っている節があり、僕と妹は『それは違うんじゃないか』と考えています。

万一、新型コロナが原因で父が亡くなれば、僕たち家族は悲しみます。僕や妹の子どもたち(父にとっての孫たち)もそうです。回避できたかもしれない悲劇に対して、父のわがままで回避する努力をしないのは、父を大切に思っている人たちに失礼ではないかと思います」

 ワクチンを懐疑的に見ているお父さんからすると、ワクチン接種自体が危険と思っているので、Aさんとはそもそもの考え方のスタート地点が違い、難しいところです。ともあれ、自分の意志を妹と確認し合ったAさんは今後、お父さんに対してどのようなアプローチをしていくのか決めました。

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武藤弘樹(むとう・こうき)

フリーライター

早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。1児の父で、溺愛しすぎている飼い猫とは、ほぼ共依存の関係にあるが本来は犬派。趣味はゲームと人間観察。

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