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高層マンションも人ごとでない! 東京にとって九州が“対岸の水害”ではない理由

マンション高層階も油断は禁物

 山手線の東側半分、田端から品川の区間は、おおむね「武蔵野台地」の東の端に沿って走っています。これより東側は荒川や利根川などがつくった氾濫原、つまり、自然の状態なら、大雨のときに浸水する低地です。

 荒川放水路は都心を洪水から守る事実上の「最後のとりで」ですから、破られてしまうと、東京の低地一帯は水没します。このエリアには、東京都だけで約300万人の住民登録があります。また、洪水のエリアは埼玉県にもまたがるかもしれませんし、日中の都心には外からたくさんの人が出勤しているので、時間帯によっては、被災者はこれよりずっと多くなるかもしれません。

「うちはマンションの10階だから関係ないわ」と思っているあなた、そんなことはありません。このエリアは海抜が低いので、一度洪水になると、簡単には水が引きません。長い所では2週間も水が引かずに、電気・ガス・水道などのライフラインが止まった家の中に「缶詰め」になるかもしれないのです。しかも、周りには自分と同じような人が何百万人もいるので、救助や食料の配布などが思うように進まないと考えた方がよさそうです。

 これから、台風シーズンが始まります。今年は九州などで既に大水害が起きていますが、利根川の歴史を考えれば、これらは決して「対岸の水害」ではありません。また、東京の人口密度や交通事情を考えると、危機が迫ってからでは逃げられなくなる可能性が高そうです。

 ハザードマップを見て、自宅が浸水エリアに入っているあなた、行き先は安全でさえあれば、3密が心配な避難所でなくて結構です。どうぞお早めに、できれば、まだ天気のよい、前の日の明るいうちに浸水エリアから出るようにしてください。

(名古屋大学未来社会創造機構特任准教授 島崎敢)

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島崎敢(しまざき・かん)

名古屋大学未来社会創造機構特任准教授

1976年、東京都練馬区生まれ。静岡県立大学卒業後、大型トラックのドライバーなどで学費をため、早稲田大学大学院に進学し学位を取得。同大助手、助教、国立研究開発法人防災科学技術研究所特別研究員を経て、2019年より、名古屋大学未来社会創造機構特任准教授。日本交通心理学会が認定する主幹総合交通心理士の他、全ての一種免許と大型二種免許、クレーンや重機など多くの資格を持つ。心理学による事故防止や災害リスク軽減を目指す研究者で、3人の娘の父親。趣味は料理と娘のヘアアレンジ。著書に「心配学〜本当の確率となぜずれる〜」(光文社)などがあり、「アベマプライム」「首都圏情報ネタドリ!」などメディア出演も多数。博士(人間科学)。

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