日本の朝といえば…「焼きザケ」が朝食の定番メニューになった背景は?
日本の朝食の定番メニューといえば、「焼きザケ」を思い浮かべる人も多いはずです。なぜ、焼きザケが定番メニューになったのでしょうか。

昨今は食の欧米化が進み、朝食はパンにベーコンエッグ、ソーセージという人も増えましたが、ご飯にみそ汁、焼き魚、卵焼きといった、日本の朝食の定番メニューが献立の家庭もまだまだ多いです。
ところで、朝食の焼き魚といって思い浮かべるのは、ほとんどの人が「サケ」ではないでしょうか。大手牛丼チェーンなどでも、朝食の魚定食といえば焼きザケです。なぜ、焼きザケが朝食の定番メニューとなったのでしょうか。
料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。
塩漬けにした「新巻きザケ」も影響
Q.なぜ、焼きザケが朝食の定番メニューになったのでしょうか。
関口さん「焼きザケが朝食の定番メニューになったのは(1)サケを塩漬けにした『新巻きザケ』が全国に広まったこと(2)朝食に脂っぽいものを食べることを嫌う日本人の気質(3)江戸時代まで、朝夕2回の食事が一般的であったこと――が関係しています。
約500年前の室町時代後期、日本でも塩が多く生産されるようになったのですがその頃、新潟の商人が、サケが大量に取れる北海道に塩を持ち込み、内臓を抜いたサケを塩漬けにしました。新巻きザケの誕生です。塩漬けなので保存性に優れ、全国で売られるようになり、いつでも食べられるようになったのです。
新巻きザケに使われるのは『白ザケ』で、身が少し白っぽいのが特徴です。『紅ザケ』など他のサケよりも脂が少なく、朝食にあっさりとした食べ物を好む日本人の食卓にマッチしました。
また、江戸時代までは食事が朝夕の2回だったため、朝食は多めに食べるものでした。その際、ご飯に合う塩気のおかずが必要だったため、塩分がきいたサケが朝の定番になっていったと思われます」
Q.栄養の面でも、サケを朝に食べた方がよいのでしょうか。
関口さん「栄養学的にも、サケは朝食に向いている魚です。サケには『アスタキサンチン』という赤い色素が含まれていますが、これはビタミンCの6000倍ともいわれる高い抗酸化作用があり、免疫力を下げる原因である活性酸素を除去する働きがあります。
また、サケにはタンパク質が多く、ビタミンB群、ビタミンE、D、そして、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)など、自己免疫力を高め、エネルギー産生を活発にする栄養素が含まれています。
朝にサケを食べることで免疫力をサポートし、ご飯の代謝も高めてくれるので、朝、ご飯と一緒に食べることは理にかなっています」
Q.「好きなすしネタランキング」で「サーモン(アトランティックサーモンなど)」が1位になることが多いです。なぜ、白ザケやサーモンといったサケの仲間は人気があるのでしょうか。
関口さん「すしネタでサーモンが人気がある理由は、価格が手頃で質が安定しているという評価が高いこと、炙(あぶ)ったりマヨネーズをかけたりできて、調理やアレンジが若者の味覚に合うこと、仕入れが容易で、大規模チェーン店でも扱いやすいことが挙げられます。
また、白ザケを焼きザケにした場合、骨が少なくて食べやすく、癖がなく、ご飯に合います。そうしたことから、万人受けする魚なのではないかと思われます」
Q.朝食の魚料理は、焼きザケ以外の場合でも「焼いた魚」が出るイメージがあります。なぜ、焼いた魚なのでしょうか。
関口さん「サケ以外に朝食でよく食べられるのは、アジなどの干物ではないかと思います。忙しい朝の時間、下処理や味付けなどの手間がなく、焼くだけでシンプルにおいしく食べられること、そして、とにかくご飯に合うことが大きな理由ではないでしょうか。
また、旅館の朝食のイメージとリンクして、豊かな気持ちになる、焼くと余分な魚の脂が落ちるので、さっぱりと食べられることが関係していると思います」
Q.焼きザケ以外で、朝食に魚を食べるとすると、どのような魚がふさわしいですか。
関口さん「先述の内容を踏まえた上でお話しすると、アジやサンマ、ホッケなどの干物、西京漬け、みそ漬け、かす漬けなどの漬け魚が、ご飯に合う、調理が楽という点で忙しい朝に向いていると思います。これらの魚の缶詰も手軽でいいでしょう」
(オトナンサー編集部)
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