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コロナショック! 「就活」に殺されかける若者たち

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、7都府県に緊急事態宣言が発令されましたが、筆者は以前から、学生の「就活」における感染拡大を懸念していたといいます。

パソコンを使って就活学生と座談会を行う企業担当者(2020年3月、時事)
パソコンを使って就活学生と座談会を行う企業担当者(2020年3月、時事)

 新型コロナウイルスの感染者急増を受けて、安倍晋三首相は4月7日、緊急事態宣言を発令しました。実施期間は1カ月程度で、東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象となります。実は、筆者は特定領域における感染拡大を懸念していました。それは「就活」です。

 若者が感染拡大の媒介になる可能性は指摘されていました。本来は、その危険性を徹底的に封じ込めなくてはなりませんでした。しかし、就活を通じた学生の感染リスクを高める行為は直前まで行われていました。

テストセンターを運営する不可解

 それは、テストセンターで実施されていた適性検査です。適性検査には、テスト会社が用意したテストセンターで受験するタイプと、自宅で受験するタイプの2種類があります。問題なのは、テストセンターで受験するタイプの適性検査です。

 テストセンターでは、数十名~100名程度が一斉に受験を行います。受験者同士の席の間隔は数十センチ程度です。受験者が多ければ、間隔を詰めて座らなければいけません。さらに、狭い会場では受験者同士が向かい合って座ることもあります。

 会場は、換気が行きわたっていないため総じて空気が悪いこと、本人認識のためマスクを外されることが問題点として挙げられていました。コロナ報道以降は、テストセンターのPCを受験後に消毒するようになったと聞きますが、マウスやキーボードまで徹底していたのでしょうか。筆者の調査では、かなり大ざっぱだったことが明らかになっています。

 今回、コロナの影響で、会社説明会を中止(延期)にした会社があります。ところが、会社説明会を中止にしたにもかかわらず、テストセンターで適性検査を受験させる企業が多く存在しました。自社の採用担当者に感染防止策をとり、学生は感染しても構わないということでしょうか。これは本末転倒で、まったく理解できません。

 就活生が交通機関を使って企業に出向いたり、テストセンターという密室で受験したりする際の、感染のリスクは高いはずです。テストセンターは「密室」「密集」「密接」の危険地帯ではないのでしょうか。さらに、学生たちは、就活に影響を及ぼすため声を上げることができません。大きな不安を感じながら就活を強いる企業や就職代行会社の姿勢を疑わざるを得ません。

 今は、私たち一人一人が感染拡大を防止するための行動を取らなくてはいけません。私たちは、自分自身が感染することはもちろん、防がなければなりませんが、無症状でも、すでに感染しているという可能性もあります。そのときに、外出したり、他人と接触したりすると、自覚がないまま周囲にウイルスを拡散させてしまう恐れもあるのです。

 筆者が確認したところ、テストセンターで感染予防のマスクを常備し配布している企業はありませんでした。これまで、テストセンターでの受験で大きなリスクを与えていた、企業、採用代行会社は学生に対して補償を明文化すべきではないでしょうか。将来有望な若者を不安に陥れてはいけません。

適性検査は不要である

 優れた適性検査にも限界があります。適性検査は属人性を測定したり、人格を規定したりするものではありません。また、適性検査の測定範囲は職務能力に過ぎません。受験者の体調によっても影響を受けやすく、その結果、採用される水準に達している人が不採用になったりすることもあります。もちろん、その逆もあり得ます。

 企業は、何のために適性検査を利用しているのでしょうか。採用活動は企業にとって、人員確保以外にも大きな効果が期待できます。将来を担う社員候補を獲得する場であると同時に、ファンを作る場でもあるのです。就活では試験に落ちたとしても、ネガティブな印象を持つことなく、フェードアウトしてもらう必要があります。そのためにも、企業は「厳選採用」を“演出”します。

 そこで、適性検査が「厳選採用」のカムフラージュに使われることが増えているのです。採用に漏れた学生に、エントリーシートや適性検査などの結果を総合的に判断する厳選採用の末に「惜しくも採用に漏れた」と見せるためです。こうした利用の仕方をしている企業であれば、コロナのリスクが高い方法をやめてしまっても影響は少ないはずです。

 今後、テストセンターの運営方法は変更せざるを得ないでしょう。適性検査の限界を十分に理解した上で、補助的利用に徹するなどの正しい使い方が重要になってきます。

(コラムニスト、著述家、明治大学サービス創新研究所研究員 尾藤克之)

尾藤克之(びとう・かつゆき)

コラムニスト、著述家、明治大学サービス創新研究所研究員

東京都出身。代議士秘書、大手コンサルティングファームにて、経営・事業開発支援、組織人事問題に関する業務に従事、IT系上場企業などの役員を経て現職。現在は障害者支援団体のアスカ王国(橋本久美子会長/橋本龍太郎首相夫人)をライフワークとしている。NHKや民放各社のテレビ出演や、経済誌などからの取材・掲載多数。著書も多く、近著に「頭がいい人の読書術」(すばる舎)がある。埼玉大学大学院経済学研究博士課程前期(経済学修士、経営学修士)。

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