うっかり乾燥機に…縮んでしまった「ニット」、復活させる方法は?
寒い冬に重宝するニット類。デリケートな衣類ですが、うっかり乾燥機にかけて「縮んでしまった」経験のある人も多いのではないでしょうか。

冬に欠かせない「ニット」。デリケートな衣類なので洗濯には気を使いますが、うっかり乾燥機にかけてしまい、「全体的に縮んでしまった」「袖が短くなって着られない」と悲しい思いをしたことのある人も多いのではないでしょうか。ネット上では、縮んだニットを復活させる方法として「髪用トリートメント剤を使う」「酢や柔軟剤を使う」などのアイデアが上がっていますが、「本当に復活するのかな?」「酢を使うのは少し勇気が要る」といった声もあります。
縮んだニットを、家庭で復活させることはできるのでしょうか。東京・旗の台にある三共クリーニングの田村嘉浩社長に聞きました。
柔軟剤やトリートメント剤は有効
Q.そもそもなぜ、ニットの衣類はデリケートで洗濯を丁寧に行う必要があるのでしょうか。
田村さん「ニットの生地は、ウールなどを編んだ編み物です。伸縮性があり、着用して動いても窮屈な思いはしないでしょう。それだけ変形(伸び縮み)するのですが、乾燥状態で変形した場合は元通りに復元するものの、汗や洗濯によって水分を含んだ状態で、もまれたり、引っ張られたりすると、伸びたり縮んだりしたまま戻らないという問題があります。
ニット製品に使用されている素材はウールのほかに、アクリル、シルク、綿などの種類があり、素材によって起こり得る問題はさまざまですが、今回の『縮んでしまう』問題はウール製品が該当します。ちなみに、伸びやすいのは綿です」
Q.ウール素材の衣類を乾燥機にかけると、縮んでしまうメカニズムとは。
田村さん「乾燥機で縮むのは、ウールのニット生地の特性によるものです。最大の原因は『フェルト収縮』です。羊から採れるウールの繊維の表面には『スケール』と呼ばれる、うろこ状のギザギザが無数にあり、しっかりぬれると繊維が膨れます。すると、スケールが開き、表面積を大きくして水分を発散し、乾きやすくする性質があるのです。人間の髪の毛にも『キューティクル』がありますが、この性質によって、毛の生えた生き物が少しでも快適に過ごせるよう毛が進化しているわけです。
一方で、水にぬれてスケールが開くことで、引っ掛かり(摩擦力)ができてしまいます。羊から刈ったウール繊維をさまざまな方向に紡いで作った糸を編んで生地にしているので、洗濯時や乾燥時のように湿った状態でもまれると、引っ掛かり同士がしっかり絡み合い、縮んでいくのです。一度絡むと一定方向にしか進まないので、簡単には抜けません。それを長時間繰り返されると、どんどん縮んでしまいます。
そこで、家庭では、洗濯用ネットに入れて弱い水流で洗ったり、洗面器で押し洗いしたりしましょう。もみ洗いしないと汚れ落ちは悪くなりますが、ウールニットの場合は、ぬらしたらできるだけもまないのがコツです」
Q.ネット上でよく見かける、「ニットを復活させる方法」は本当に効果があるのでしょうか。
田村さん「ネット上でよく話題になる、次の3つの方法について解説します」
【髪用のトリートメント剤(またはヘアコンディショナー)を使う】
ウールは毛なので、特性は人間の髪の毛と似ています。トリートメント剤には、髪を滑らかにし、毛が絡むのを防ぐ効果があるので、ヘアコンディショナーをよく水に溶き、もまずにニットに染み込ませて、絡んだ毛を適度に引っ張ることで元に戻す効果はあります。
トリートメント剤の滑らかさを利用する方法ですが、完全に戻るとはいえません。また、引っ張り過ぎると変形しやすいので伸び過ぎる恐れもあります。理想の長さを考えて引っ張ることが重要です。
【酢を使う】
一般的に、家庭でのウールニットの洗濯には中性洗剤を使用します。Tシャツやブラウスなどは、汚れ落ちを重視した弱アルカリ性の洗剤が一般的ですが、ウールはタンパク質で弱酸性なのでアルカリ性洗剤には比較的弱く、アルカリ性洗剤を使うと、ごわつきや収縮など悪い影響を与える恐れがあります。
酢を水に溶くと弱酸性になるため、その水に浸すことで、アルカリ性洗剤で洗ったウールニットを中和する効果はあると思います。繊維に優しい洗い方といえますが、絡んだスケールを抜けやすくすることに直接効果があるとは思えません。
【柔軟剤を使う】
トリートメント剤と同じ原理です。トリートメント剤は人間の髪の毛用、柔軟剤は衣類用ということです。
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