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トレイルランナーは「10mルール」でハイカーとのあつれき解消を

ここ数年人気のトレイルランニングですが最近は、同じく山を愛するハイカーからの反応が変わってきているようです。以前のように声を掛けられることは少なく、冷たい視線を浴びることも。その背景には何があるのでしょうか。

ここ数年人気のトレイルランニング

 恐れていたことが現実となっています――。

 山道を走るトレイルランニング(トレイルラン)を始めて、今年で5年目になります。相変わらずの鈍足でヘタレな私ですが、山に入ると心が解放されるのです。生きている実感を取り戻すための、私の大事なツールとなっています。一人で行くことが多いのですが、仕事に余裕があるときは月に2回ほど山を走ります。落ち葉が敷き詰められたフカフカの山道を走っていると、自分が自然の中に溶け込んで、獣になったような錯覚に陥ることさえあります。

 同じフォームで走り続けるロードとは違って、変化に富んでいるから飽きがきません。急な上りは基本的に歩く。上りはしんどいですが、「この先には、必ず下りがある」と自分に言い聞かせることで、めげずに頑張れます。頂に達すれば、あとは楽しい下りが待っているのです。足を置く位置を読みながら体を宙に預けていくと、全く息が上がらない。派手に転ぶこともありますが、力を抜いて体を放り出すと、意外と大きなけがはしないものです。

問題になり始めたのは3年前から

 ですが、トレイルランを始めた4年前と比べて大きく変わったことがあります。同じ山を愛するハイカーの反応です。以前は「元気だねえ」「頑張ってください」と声を掛けられることが多かったのですが、最近はむしろ冷たい視線を浴びることの方が増えてきました。特に、ハイキング歴の古い中高年のハイカーの中には、声を掛けても返事さえしてくれない人もいます。

 ハイカーの脇を走り抜けるトレイルランナーが問題になり始めたのは、3年ほど前からでしょうか。確かに、山道を走るのは危ないし、走りながらハイカーに触れでもしたら滑落してしまう可能性だってあります。それだけではありません。せっかく自然をゆっくり満喫しようとやってきた山の中で、汗だくで走り抜けていくランナーに出会うだけで興ざめですよね。

 私にトレイルランの楽しさを教えてくれた仙台市のランナーは、ハイカーと出会ったとき必ず道を譲っていました。一言二言、言葉を掛けてから、また走り始めるのです。私も見習って、自分で実践していることがあります。それは「10mルール」です。

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辰濃哲郎(たつの・てつろう)

ノンフィクション作家

1957年生まれ。慶応義塾大では野球部に投手として所属。卒業後は、朝日新聞社会部記者として事件や医療問題を取材した。2004年に退社。日本医師会の内幕を描いた「歪んだ権威」や、東日本大震災の被災地を取材した「海の見える病院 語れなかった『雄勝』の真実」「『脇役』たちがつないだ震災医療」を出版。趣味でランニングを20年近く続け、最近はトレイルを走っている。ランニング雑誌「クリール」で1年間、連載を手がけた。