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トレイルランナーは「10mルール」でハイカーとのあつれき解消を

山好きであれば、ハイカーの尊重も

 もちろん、大会がどうあるべきかの議論は必要です。環境省が管轄する国立公園などで大会を開催するには、自然を破壊しないための原状回復や、トレイル以外に足を踏み入れないマナー、大会の規模などさまざまな問題を解決しなければなりません。しかし、その土台となる、練習現場でのあつれきを解決するための統一的なルール作りや一般ランナーへの呼びかけが、二の次になっているような気がしてなりません。

 先日も、私とハイカーが山道を話しながら上っていると、その脇を3人のトレイルランナーが「ごめんなさーい!」と声を掛けながら走り抜けていきました。スピードこそ落としているものの、ハイカーたちは無言で見送っていました。

 正確に数えたわけではありませんが、行き交うランナーの7割方は、スピードは緩めるものの走ったまま行き過ぎていました。彼らは走ることに集中するあまり、ハイカーと自然を共有しているという謙虚さが欠けているように思えました。

 山が好きであるということは、その山を同じように愛するハイカーも尊重しなければ、山に入る資格はありません。このままでは、トレイルランナーは排除されてしまうという強い危機感を覚えました。いや、むしろその方がしかるべき姿のような気がしてしまうほど、自然を介した、人間が抱くあつれきは深刻さの度合いを深めています。

 私はタイムを競うトレイルランを否定するものではありません。しかし、大会と普段の練習では、心構えを分けて取り組んでほしいと思うのです。トレイルランナーの皆さん、まずは「10mルール」、試してみませんか。ハイカーとの関係はほんの少しずつですが、変わってくるはずです。

(ノンフィクション作家 辰濃哲郎)

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辰濃哲郎(たつの・てつろう)

ノンフィクション作家

1957年生まれ。慶応義塾大では野球部に投手として所属。卒業後は、朝日新聞社会部記者として事件や医療問題を取材した。2004年に退社。日本医師会の内幕を描いた「歪んだ権威」や、東日本大震災の被災地を取材した「海の見える病院 語れなかった『雄勝』の真実」「『脇役』たちがつないだ震災医療」を出版。趣味でランニングを20年近く続け、最近はトレイルを走っている。ランニング雑誌「クリール」で1年間、連載を手がけた。

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