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表情を描いちゃダメ? 晴天を願う「てるてる坊主」にも正しい作法があった!

子どもたちが、翌日晴れることを願って軒先につるす「てるてる坊主」には、正式な作法があるそうです。どのような作法なのでしょうか。

てるてる坊主の正しい作法とは?
てるてる坊主の正しい作法とは?

 大ヒット映画「天気の子」でも話題になった「てるてる坊主」。多くの人が子どもの頃、遠足や運動会などのイベント前に、ティッシュペーパーなどを使って作ったことがあるのではないでしょうか。子どもたちが思い思いに作っている印象もあるてるてる坊主ですが、実は「顔の表情を書いてつるすのは正しくない」「雨が降ったら、てるてる坊主の首をチョン切る」など、作法があるそうです。てるてる坊主の作法について、和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。

中国から伝来した「掃晴娘」

Q.日本では、「てるてる坊主」がいつごろから普及したのですか。

齊木さん「『てるてる坊主』は、翌日の晴天を願い、白い布や紙で作った人形を軒先につるすものです。平安時代に中国から伝来した『掃晴娘(さおちんにゃん)』という、伝説上の女の子がもとになっているとされています。日本では江戸時代、庶民の家の軒先にてるてる坊主が広く飾られていました」

Q.もともとは僧侶ではなく、女の子だったのですね。

齊木さん「掃晴娘は、箒(ほうき)を持った女の子を模した紙人形です。雨雲を箒で払って晴天をもたらしてくれると信じられていました。その一方、日本では古来、天気をコントロールしようと、雨を降らせるための『雨乞い』や晴れ間をつくる『日乞い』の儀式が行われていました。

この儀式に僧侶が関わることが多かったため、いつからか天気の回復を願うのは僧侶の役目となり、人形の頭を丸刈り(坊主頭)にして、てるてる坊主になったと言われています」

Q.てるてる坊主をつるすときには、目や鼻など顔を書き入れないことが基本だそうですね。

齊木さん「江戸時代の書物に『のっぺらぼうのてるてる坊主つるして』という記述があるように、目や鼻などの表情を書き入れずにつるします。これは、先に顔を書いてしまうと、つるした日に雨が降った場合、墨がにじみ、『泣いたような表情になって雨を降らす』といういわれがあるからです」

Q.どのようなときに顔を書き入れるのですか。

齊木さん「瞳など顔を書かずにつるし、無事に晴れた場合だけ顔を書き入れます。そして、神様に供えるお酒を添えて川に流すことが一連の作法になります。しかし、現代では川に流すと不法投棄になりかねません。そのため、てるてる坊主を処分するときは、感謝の気持ちを込めてごみ箱に捨てるか、お守りと同じように寺社でお炊き上げをしてもらいましょう」

Q.もし、てるてる坊主をつるしても雨が降ってきた場合は、てるてる坊主はどのような運命をたどるのでしょうか。

齊木さん「雨が降った場合、顔は描かずに処分されてしまいます。場合によっては『首をチョン切る』という残酷な運命もあります。童謡『てるてる坊主』の中では、3番に『そなたの首をチョン切るぞ』という歌詞が出てきます」

Q.なぜ、そのような残酷な結末になったのですか。

齊木さん「『お経を唱えれば降り続く雨をあがらせる』と評判だったお坊さんがある時、殿様の命令で翌日晴れるよう祈願して失敗し、その罰として首をはねられてしまいました。そのお坊さんの首を白い布でくるみ、つるすと、次の日はうそのように晴れ渡ったという民話が元になっていると言われます」

Q.てるてる坊主をつるす家庭は、以前よりも減っている気がします。昔からの風習が時代とともになくなる、あるいは、変化することをどのように思われますか。

齊木さん「てるてる坊主をつるす風習は、願掛けのような意味合いがあります。かつて農業が主体だった日本において、植物の生育に深く関係する雨は、人々にとって重大な関心事だったといえます。

しかし、現代では文明の力により、気象レーダーで正確な天気情報が出てきます。子どもたちまで『てるてる坊主を作っても降水確率が減るわけではない』という現実主義者となってしまった昨今では、この日は絶対に晴れてほしいという気持ちすらも薄らいでいるように思います。

こうして、人間の五感や昔からの風習が衰退していくのは非常に残念に思います。しかし、由来や本来の作り方を知らないことで、青いてるてる坊主やメッセージだらけのてるてる坊主など、バラエティー豊かなてるてる坊主が誕生していることも事実です。こうして作る機会をご家庭や教育機関で与えて、最後にきちんと、親や教育者が本来の姿を伝えていってもらえたらと思います。

先祖なくして私たちは存在しませんので、先人が生きてきた知恵に思いをはせて作ってみてはいかがでしょうか」

(オトナンサー編集部)

齊木由香(さいき・ゆか)

日本礼法教授、和文化研究家、着付師

旧酒蔵家出身で、幼少期から「新年のあいさつ」などの年間行事で和装を着用し、着物に親しむ。大妻女子大学で着物を生地から製作するなど、日本文化における衣食住について研究。2002年に芸能プロダクションによる約4000人のオーディションを勝ち抜き、テレビドラマやCM、映画などに多数出演。ドラマで和装を着用した経験を生かし“魅せる着物”を提案する。保有資格は「民族衣装文化普及協会認定着物着付師範」「日本礼法教授」「食生活アドバイザー」「秘書検定1級」「英語検定2級」など。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yukasaiki)。

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