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音を上げたりしない? 企業が新入社員研修に自衛隊「体験入隊」を取り入れる理由

音を上げさせることも目的?

 次に、企業が体験入隊を取り入れる背景について、企業研修に詳しいキャリアコンサルタントの小野勝弘さんに聞きました。

Q.なぜ、新入社員研修で自衛隊への体験入隊を行う企業があるのでしょうか。

小野さん「社会人になる第一歩として、団体意識を持つことを徹底することが、一つの大きな目的だと考えます。団体意識とは、上下関係の徹底や相手への配慮、社会人としての生活習慣などを指します。そのような団体意識の向上を、自衛隊体験入隊の中で徹底するために導入しているように思います。

企業を“軍隊化”したくて導入しているわけではありません。もしかしたら『イエスマンを育てたい』という企業ニーズも一部にあるかもしれませんが、ほとんどの企業は、体験入隊の中で何を体験し、そのとき、どう考える自分がいるのかを参加者一人一人が見つめ直すことで、これからの社会人生活へのエールとしたいと考えています」

Q.最近の新入社員は、厳しいことを嫌う傾向があると思います。ハードな自衛隊の体験入隊は逆効果では。

小野さん「最近の新入社員が厳しいことを嫌う傾向があり、体験入隊をさせることが逆効果であるという見方も、ある面では正しいと思います。ただ企業は、そうしたリスクも当然、検討した上で体験入隊させていることがほとんどではないでしょうか」

Q.体験入隊で音を上げる新入社員もいるのでは。

小野さん「もしかしたら、企業は、音を上げることを一つの目的にしているのかもしれません。現実の仕事においても、できないことを引き受けてしまってつぶれてしまったり、できることでも量が増えすぎて手に負えなかったり、理不尽な要求につぶれそうになったりして、音を上げることがあるかもしれません。それを体験学習させるために、あえて体験入隊を行うという可能性もあるのではないでしょうか」

Q.実際に体験入隊を取り入れた企業は、どのような効果があったのでしょうか。

小野さん「私がキャリアコンサルタントとして企業の担当者から聞いた話から考えると、2つの効果があったと思います。

1つ目は、団体行動を徹底させる効果です。学生時代は、個人が自由に自分の時間を使えましたが、社会人になると、時間を共有することが増えてきます。遅刻者が出ると全員が叱責されるような研修で、時間意識を徹底させることが『自分の時間はみんなのために』といった学びにつながると考えられます。

2つ目は、研修に参加した人の連帯感が高まり、離職が減るという効果です。厳しいといわれる研修を合宿形式で共有させることで、一人一人の間につながりが生まれたのではないかという話を聞いたことがあります」

Q.自衛隊研修は、これからも増えそうですか。減りそうですか。

小野さん「どちらの可能性もありますが、なくなることはないと思います。なぜなら、自衛隊研修は手段の一つに過ぎないからです。増えるということは、現場の成果に大きく寄与することにつながっているということに他なりません。逆に、きついだけで成果が出ない場合はもちろん減っていくのではないでしょうか。ただ、現在も企業に選ばれ、続いていることを考えると、体験入隊がとても厳しいものだとしてもなくなることはないと思います」

(オトナンサー編集部)

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小野勝弘(おの・かつひろ)

キャリアコンサルタント、一般社団法人セルフキャリアデザイン協会代表理事、株式会社ファサディエ EAP事業部 新規事業準備室

1969年東京都生まれ。桐蔭学園工業高等専門学校電気工学科卒業。2001〜2016年までIT系企業に所属。エリアマーケティングツールに携わり、営業・商品企画・事業企画・人材教育・労務管理などを経験。企業のホワイト化・健康経営・人事労務は、今後の会社経営に欠かせない重要な領域と考え、「労働者と企業のための人材定着、若者雇用促進による企業の生産性向上」をテーマとする。2016年〜現在は株式会社ファサディエ EAP事業部所属。2018年に一般社団法人セルフキャリアデザイン協会(https://self-cd.or.jp/)を設立し、キャリアコンサルタント、EAPコンサルタントとして活動中。

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