【東日本大震災8年】火災やテロも想定、全国に広がる「避難訓練コンサート」とは?
最近、「避難訓練コンサート」というイベントが全国各地で開催されるようになりました。どのようなイベントなのでしょうか。

「避難訓練コンサート」というイベントをご存じでしょうか。「コンサートの最中に災害が起きた」という想定で行う「避難訓練込みのコンサート」です。東日本大震災をきっかけに実施する施設が増え、ここ2~3年は全国各地で行われるようになりました。現在では、火災やテロなど、さまざまな事態を想定したコンサートが行われています。どのようなイベントなのか取材しました。
避難訓練は突然に
まず、全国の国公立文化施設の運営者でつくる公益社団法人全国公立文化施設協会(東京都中央区)事務局事業課長の堀江和子さんに聞きました。
Q.「避難訓練コンサート」は、どのような流れで行うのですか。
堀江さん「まずは通常通りコンサートを始めます。そして、演奏途中で不意に『地震が発生しました』と告知し、避難訓練を開始します。観客には、施設内のホールや外に避難してもらい、訓練終了後は元の席に戻って、改めて演奏を聴いてもらいます。地元の警察や消防による災害に関する講義をセットで行うこともあります。各施設の地元にある学校の吹奏楽部や警察、消防、自衛隊などの楽団が演奏することが多いです」
Q.なぜ、通常の避難訓練ではなくコンサートの途中に訓練を盛り込むのですか。
堀江さん「そもそも『避難訓練コンサート』は、住民に避難への意識を向上させてもらうことに加え、自治体や文化施設で作成した災害対策のマニュアルやガイドラインの実地検証を行う目的があります。
机上では最善の策に見えても、実際に数百人かそれ以上の観客を避難誘導すると、避難用の誘導サインが分かりにくかったり、大人数では通り抜けしにくい経路があったりと、改善が必要な点が見えてきます。実地検証を繰り返し、ガイドラインやマニュアルのさらなる充実を図ることが大切です。そこで、多くの人に参加してもらえるように、実際にコンサートを行い、ほとんどが参加費無料です」
Q.どれくらいの文化施設で行われていますか。
堀江さん「2016年7月、協会加盟の全国の文化施設に対して行った調査によると、回答した261施設のうち『避難訓練コンサートを実施したことがある』と48施設が回答しました。『今後実施する予定』と回答した施設も多く、実施した施設はかなり増えました。2019年現在、実施したことがあるのは、加盟施設の約30%と推測しています」
Q.どのような人が参加し、どのような時期に開催されることが多いですか。
堀江さん「若者から高齢者まで幅広い世代が参加します。週末や平日夜間に開催されることが多く、各文化施設で平均して毎年1回程度行われます。時期は、東日本大震災が発生した3月11日など大きな災害の節目と思われがちですが、必ずしもそうではありません。基本的に、文化施設でイベントの開催がない時期を選んで行われます」
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