孫はかわいいが「3日以内に帰ってほしい」? 高齢者にとっての「孫」「ペット」「ロボット」の違いを考える
コミュニケーションロボットの動向
近年、高齢者の暮らしや健康に有用として、コミュニケーションロボットが注目されるようになりました。何度かデモンストレーションを見ましたが、ストレスなく会話をすることができ、相手のことを記憶する力もあります。顔を画像で認識した上で話の内容を記憶し、次回の会話にそれを使えるので、例えば、「◯◯さん、先日行かれたゴルフの結果はいかがでしたか?」といったことをしゃべってきます。メモリーされている歌を歌ったり、踊ったりといったパフォーマンスもできます。そしてAIによって、そのレベルは飛躍的に向上しています。
当たり前ですが、ロボットですから世話をしなくてもいいですし、死を心配する必要もありません。コンパクトなサイズなので場所も取りませんし、見た目もそれなりにかわいらしく出来ています。話し相手にはなるし、面倒も心配もいらないとなれば、もっと広まってもいいと思うのですが、そうはなっていません。一時話題となった「Pepper(ペッパー)」くんも、今は生産が中止されているようです。
現在のところ、高齢者市場におけるロボットは、入浴介助や移動・体位変換といった介護施設における職員の介護実務を助けるロボットが注目され、広がりを見せている一方、コミュニケーションや癒やしの提供といった人間の感情に関わる分野ではなかなか難しいというのが実態です。考えてみれば、高齢者にスマホの待ち受け画面を見せてもらうと、孫やペットの写真はよくありますが、ロボットにしている人は記憶にありません。
もちろん、孫もペットもロボットも、高齢期の不安を根本的に取り除けるようなものではありません。「遠くの親類より近くの他人」ということわざがありますが、高齢になると体調急変や事故などの危険性が高くなりますし、最近では災害や犯罪の不安も大きくなってきています。
そんなときに頼りになるのは、他人であってもやっぱり近隣にいる人たちです。地域コミュニティーが細り、“頼りになる他人”がとても少なくなった現代においては、余計にその重要性は高まっています。孫やペットやロボットがその代わりになることがないのは、当然のことなのかもしれません。
(NPO法人・老いの工学研究所 理事長 川口雅裕)



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