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キノコ類、調理前に「洗う」? 「洗わない」? 管理栄養士に“正解”を聞いてみた

ネット上で「洗う派」「洗わない派」に分かれている「キノコ」。あなたはどうしていますか。“正解”はどちらなのか、管理栄養士に聞いてみました。

あなたは洗う? 洗わない?
あなたは洗う? 洗わない?

 さまざまな家庭料理で活躍するキノコ類。通年、価格がお手頃な上、難しい下処理が必要ない手軽さが魅力です。ところで、皆さんはキノコを買ってきて使うとき、洗いますか。それとも、洗わずにそのまま使いますか。ネット上では「さっと水洗いする」「汚れがついていたら嫌なので、一応洗ってます」という人と、「洗わない」「味が水っぽくなりそう」という人に分かれるようです。

 キノコは洗った方がいいのか、それとも洗わなくていいのか、どちらなのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

ビタミンB群、カリウムは「水溶性」

Q.まず、キノコ類に含まれる基本的な栄養類について教えてください。

岸さん「キノコ類には、ビタミンB群やビタミンDなどのビタミン類、カリウムやリンなどのミネラル類、食物繊維が多く含まれています。また、うまみ成分として『グアニル酸』を含むことも特徴です。

ブナシメジには、アミノ酸の一つ『オルニチン』が多く含まれています。シジミで有名な成分ですが、特に白色のブナシメジには、シジミの約5倍のオルニチンが含まれていることが明らかになっています。オルニチンは肝機能を改善する栄養素として知られていますが、それ以外にも免疫力の向上、コラーゲンの合成促進といった働きがあることが分かってきている、注目の栄養素です。

エリンギは食物繊維が豊富で整腸作用があることはもちろんですが、注目成分は『βグルカン』と呼ばれる不溶性食物繊維の一種です。βグルカンは鉄の吸収を促進し、免疫細胞を活性化します。また、糖の吸収も穏やかにし、花粉症などのアレルギーにも効果があるといわれています。

シイタケの特徴は、紫外線に当たるとビタミンDに変化する成分『エルゴステロール』が含まれていることです。ビタミンDはカルシウムの吸収をサポートするので、カルシウムが多く含まれる食材と一緒に食べると、カルシウムを効率よく吸収できます。エルゴステロールは生シイタケに含まれるので、かさのひだを上にして、30分ほど天日干しするだけでビタミンDが大幅に増加します。また、『エリタデニン』もシイタケ特有の成分で、悪玉コレステロール値(LDL)や血圧を低下させる効果があり、動脈硬化や高血圧の予防効果が期待できます」

Q.キノコを料理に使う際、「洗う」人と「洗わない」人がいるようですが、どちらが正しいといえますか。

岸さん「基本的に、キノコ類は水洗いをしないようにしましょう。これは、キノコ類に含まれるビタミンB群やカリウムなどの栄養素が水溶性のため、水で洗うと栄養成分が失われてしまい、さらに香りや風味も逃げてしまうためです。汚れが気になる場合には、水で湿らせたキッチンペーパーなどで拭き取るようにしましょう。

ただし『なめこ』だけは、表面を覆う粘液の中に混じった汚れが取り除きにくいため、水で洗う必要があります」

Q.その他、キノコを料理に使う際に注意するとよいこととは。

岸さん「キノコ類の約9割は水分なので、長時間加熱するとせっかくの栄養が損なわれ、食感も水っぽくなってしまいます。加熱の際、キノコ類は火の通りにくい食材の後に入れて、短時間の加熱で済むようにできるとよいでしょう。

また、油と一緒に調理すると、脂溶性のビタミンであるビタミンDは吸収しやすくなるので、油を使った調理法で摂取することもお勧めですが、一方でキノコ類は非常に油を吸収しやすいので、カロリーを気にする場合は油の使い過ぎや調理法に注意が必要です」

(オトナンサー編集部)

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岸百合恵(きし・ゆりえ)

プロボクサー、管理栄養士、日本糖尿病療養指導士

病院食の管理・調理業務や企業での特定保健指導を経て、生活習慣病診療を専門とするクリニックにおいて5年間、栄養指導を実施。アスリートとしても夢を追い掛け、2017年に日本ボクシングコミッション(JBC)のプロテストに挑戦し、一発合格。「闘う管理栄養士」として、チャンピオンを目指して日々トレーニングに励みながら、ボディーメークや健康管理の指導を行う。現在は、スポーツ・睡眠歯科分野の診療を行う歯科医院で、アスリートへの食事指導や、一般患者へのダイエット、フレイル・サルコペニア予防の指導を行う他、内科クリニックで生活習慣病患者に対する食事指導を行っている。

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