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不倫、悪ふざけ…不祥事を起こした人を“誹謗中傷”したくなる心理は? 原因と対処法、心理カウンセラーが解説

不祥事を起こした人をネット上で誹謗(ひぼう)中傷する人がいますが、どのような心理が働いているのでしょうか。心理カウンセラーに聞きました。

不祥事を起こした人をネット上で誹謗中傷する人の心理は?
不祥事を起こした人をネット上で誹謗中傷する人の心理は?

 不倫や悪ふざけなど、不祥事を起こした人のニュースが大々的に報じられることがありますが、その際、不祥事を起こした人をネット上で誹謗(ひぼう)中傷する人がいます。相手を誹謗中傷すると、法的責任を問われる可能性があるほか、相手の生命を脅かす可能性もあり、やめるべき行為です。

 不祥事を起こした人を誹謗中傷する人は、どのような心理状態なのでしょうか。誹謗中傷したくなった場合、やめることはできるのでしょうか。心理カウンセラーの芙和せらさんに聞きました。

ストレスが原因

Q.そもそも、不祥事を起こした人に対して、誹謗中傷する人はどのような心理状態なのでしょうか。

芙和さん「相手が不祥事を起こしていると分かった際は、ネット上で激しく炎上する傾向にあります。それには、いくつかの背景があると考えます。

不祥事に関するニュースを見聞きした際に、不祥事を起こした個人や団体を『悪者』と見なし、彼らに対して何をしてもいいという錯覚が生じます。そうすることで、相手を『悪者』、懲らしめている自分を『正義の味方』だと思い込むようになります。勧善懲悪ものの映画の主人公に自分を重ねて、セルフイメージが肥大化していき、万能感を抱くのです。

また、自分と同意見の人とネットでつながることで、多数派としての安心感が生まれます。それは『私は間違っていない』という確信につながります。加えて、誹謗中傷に加わっている人との一体感もあり、気分が高揚します。

不祥事を起こした人の個人情報を特定する能力がある人は、ネット上で一定の敬意を示される傾向にあります。もし、個人を特定できれば、他者から称賛されるだろうと考え、自己顕示欲のために誹謗中傷や個人情報の特定に参加する人が登場します。

このほか、匿名性による誤った安心感もあるでしょう。相手を誹謗中傷しようとやっきになっている割には、自分はずっと匿名のままでいられるので、攻撃されないという安心感があり、行動がエスカレートします」

Q.誹謗中傷した場合、自分や相手にどのような心理的影響を与えるのでしょうか。

芙和さん「まず、他人を誹謗中傷する側の人は、『快感』『高揚感』『達成感』を感じます。すると脳内でドーパミンなどの快感ホルモンが分泌され、さらに同じような『快感』を得たくなるため、新たな誹謗中傷のターゲットを探すことになります。これが誹謗中傷を繰り返す人が陥る仕組みです。

次に相手への影響を考えてみましょう。誹謗中傷のターゲットにされた人は、『抑うつ』『無気力』『イライラ』『無力感』『恐怖心』などを抱えることになります。しかし、同時に『怒り』『復讐心』『攻撃性』などが高まることもあります。

その場合、誹謗中傷した人を法的に裁くという方法を取ることもあるでしょうし、誹謗中傷した人の個人情報が特定された場合、その人に対して仕返しをしたり、より深刻な犯罪行為が発生したりすることもあり得ます」

Q.他人の不祥事を知ったときに、人によっては、ネット上でその相手を誹謗中傷したくなることがあるかもしれません。この行為を防ぐには、どうしたらよいのでしょうか。

芙和さん「現実生活を充実させておくことが予防策となります。そのためには、以下の対策が有効です」

(1)ストレスや怒りをためこまない
現実生活でストレスや怒りをためこまないようにしましょう。我慢のし過ぎは、間違った方法でのストレス発散につながります。

(2)対人関係におけるコミュニケーション能力の向上
現実生活でのコミュニケーション能力を向上させていきましょう。現実生活で、自己表現ができている人は、SNSでの称賛などを求めません。匿名でなく、顔も名前もよく分かった人間同士のコミュニケーションでは理性を取り戻すことができます。

(3)趣味やスポーツなどで快楽を得る
親密な人間関係や趣味、スポーツなどで「快感」習慣をつけることで、誹謗中傷による「快感」が不要になります。

Q.ネット上で誹謗中傷している人がその行為をやめたい場合、どのように対処したらよいのでしょうか。

芙和さん「他人への誹謗中傷に走りたくなったら、自分がどんなストレスにさらされているかを振り返りましょう。同じようなパターンがあるはずです。例えば、家族と言い合いをした後や仕事で失敗が続いたときに誹謗中傷したくなるなどです。

そのようなストレスフルな状況が起きないことに越したことはありませんが、ストレスがまったくなくなることはありません。先述の通り、ストレスを感じたときにスポーツや趣味など、誹謗中傷以外で気持ちを晴らす方法を探しておくのです。スポーツが好きな人なら『ストレスを感じたときにジョギングをする』、インドア派の人なら『絵を描く』などの趣味で日頃の憂さを晴らすのです。

また、一定期間、インターネットとの世界から遠ざかることもお勧めです。そして、余裕ができた時間を使って、自分が興味のあることに没頭できるようにしていきましょう。

これまでに紹介した方法でも誹謗中傷がやめられない人は、依存症のような状態となっています。この場合、1人で問題解決をすることは難しいので、精神科や心療内科での治療や心理カウンセリングを受け、自分自身を見つめ直す必要があります」

(オトナンサー編集部)

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芙和せら(ふわ・せら)

心理カウンセラー

心理カウンセラー歴38年(公認心理師、シニア産業カウンセラー、芸術療法士)。誰もが気軽にカウンセリングを受けられる社会にしたいと考え、花、色彩心理、ハーブなど親しみやすい切り口の心理療法を開発。学術的なエビデンスを得ている。一般社団法人<芙和せら>心理研究所 所長。花と心の学校/ハートステップ・カレッジ 代表。一般社団法人<芙和せら>心理研究所(https://www.thera-labo.org/)。花と心の学校/ハートステップ・カレッジ(https://heart-c.co.jp/)。

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