「偶然と想像」濱口竜介監督、オムニバスにした理由は? 各話のこだわり、着想のきっかけも聞いた
映画「偶然と想像」でメガホンを取る濱口竜介監督に、オムニバス形式にした理由や各話のこだわりなどについて聞きました。

映画「偶然と想像」でメガホンを取る濱口竜介監督。同作は、モデルの芽衣子(古川琴音さん)は撮影帰りのタクシーで、仲の良いヘアメークのつぐみ(玄理さん)から、最近会った気になる男性の話を聞かされ…3編の物語から構成されるオムニバス作品です。
オトナンサー編集部では、濱口監督に単独インタビューを実施。オムニバス形式にした理由や各話のこだわりなどについて聞きました。
短編は演出のスキルを磨ける
Q.オムニバス形式の映画にしようと思ったきっかけはありますか。
濱口監督(以下敬称略)「気軽に始められますし、短編は演出のスキルを磨けるからです。でも、短編映画は映画館で上映しにくいのでどうしようかと考えました。3本くらい集めれば、長編サイズになるので興行にも出せるし、キャストさんにも説明しやすいので、やってみようと思いました」
Q.各話でこだわったことはありますか。
濱口「1話目はガールズトークをちゃんと描けるかですね(笑)2話は書き言葉的しゃべりで、どれだけ、話が展開できるかと考えていました。この話に出てくる教授は基本的に感情を伴わない話し方をします。書き言葉で話す人が持っている熱い部分まで描けたらいいなと思いました。3話は2人の会話だけで、どれだけ時間を持続させるか考えていました」
Q.演出面はいかがでしたか。
濱口「リハーサルの時間を普段より長く確保しました。この規模の映画にしては長い期間をリハーサルに使っています。本読みをしていると役者さんの声がセリフになじんできます。そういう声になったら撮影するということを徹底できました。やりすぎると声が疲れてしまい、それを怖がって、妥協した声で始めてしまうとシーンやキャラが発展しません。その感覚は映画『ドライブ・マイ・カー』に生かせた気がします」
Q.各話から怖さを感じたのですが、濱口監督の意図したものでしょうか。
濱口「これを言ったらどうなるんだろうと思うことが実生活で多々あると思います。それを言ってみる場として、1話目を作りました。2話目のように、たった1文字間違うだけで、こんなにも大きく歯車が狂ってしまうことは現実でもあると思います。
不確定性は常に描こうとしています。ほんのささいなことでこんなにも変わってしまう、この世界はそんなに安定していないという感覚はどの映画にもあると思います。それが怖いと感じられたのかもしれません」
Q.話を思い付いたきっかけはありますか。
濱口「1話目は喫茶店に行ったとき、隣でこのような会話が繰り広げられていました。熱心に友達の話を聞いている女性がもし、話している女性の彼氏の元カノだったらどうなるだろうと想像し、話を膨らませました。
2話目は大学の教授をしている知人がいて、最近はハラスメントを防止するため、研究室のドアを開けておかなければいけないという話を聞いて、そこから作りました。3話目はエスカレーターで知人とすれ違うシーンを映画で撮りたいと思って、話を作りました」
Q.お気に入りの話があれば教えてください。
濱口「この話がというより、各話に役割があり、それを果たしてくれています」
Q.今後、撮ってみたい映画はありますか。
濱口「サスペンスですね。撮りたいなと思っていますが、そういう機会がなかなかありません。刑事物のような作品を作ってみたいです」
映画「偶然と想像」は全国公開中。
(オトナンサー編集部)
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