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塚地武雅、俳優と芸人の“切り替え”しない「現場に行って、そこに見合うことをするだけ」

映画「梅切らぬバカ」に出演する塚地武雅さんに、自閉症のリサーチや芸人と俳優の切り替えなどについて聞きました。

塚地武雅さん(撮影:Saori Saito)
塚地武雅さん(撮影:Saori Saito)

 映画「梅切らぬバカ」に出演する、俳優でお笑いコンビ・ドランクドラゴンの塚地武雅さん。同作は、山田珠子(加賀まりこさん)は古民家で占い業を営みながら、自閉症の息子の忠男(塚地さん)と暮らしています。珠子は自分がいなくなった後のことを考え、グループホームに息子を入れることにしますが…老いた母と自閉症の息子が地域コミュニティーとの交流を通して自立の道を模索する姿を描いた人間ドラマです。

 オトナンサー編集部では、塚地さんに単独インタビューを実施。自閉症のリサーチや芸人と俳優の切り替えなどについて聞きました。

グループホームで交流し、役作りに

Q.台本を読まれていかがでしたか。

塚地さん(以下敬称略)「リアルな日常を切り取ったような作品でした。作品をドラマチックにするために、例えば、忠男が気持ちを入れ替えて何かを頑張ってみせる方が涙を誘えると思います。でも、あえてそういうことをせず、ちょっと変わったかどうかとにおわせるだけでした。少しでも前に進めるような作品のような気がして、そこに好感を持ちました」

Q.忠男は自閉症という設定ですが、役をどう捉えましたか。

塚地「身近にいなかったので、和島香太郎監督から、ドキュメンタリー映画を見せていただいたり、グループホームに行きました。そこで自閉症の方としゃべってみたり、親御さんやスタッフの方のお話を聞かせてもらって、僕が描いた忠男の人物像に当てはまるような癖や動きを作りました。とにかく難しいテーマですし、僕に演じられるのかと悩みました。

バラエティーに出ているので、僕を知っている方は塚地として見てしまい、そのせいで忠男に見えないのではないか、お笑いをしていることがマイナスにならないかと不安になりました。和島監督のこの作品にかける思いを聞かせていただき、僕に演じてほしいと言ってくださったので覚悟を決めました。演じさせていただくことになった以上、真っすぐに演じました。等身大に近い役とは違う取り組み方をしました」

Q.リサーチして印象に残ったことはありますか。

塚地「職員の方に説明を受けて、言動や行動を聞きました。自閉症の方ともお話ししたんですが、しっかりした会話はできませんでした。グループホームにいて、ストレスは感じていないようですが、楽しいという感じでもありません。解釈として間違っているかもしれませんが、喜怒哀楽に忠実で、2、3歳の心を持ったまま大人になってしまったのかなと思いました。

体が大きい分、暴れたり、叫んだりするから、他の人は怖いと感じるのかもしれません。小さい子が叫んでいるんだったら、怖がらないじゃないですか。心は子どものまま大人になってしまった、そういう部分を役作りにいれました」

Q.変わった役と普通の役はどちらが演じやすいですか。

塚地「もちろん、自分に近い、コメディーレリーフの方が演じやすいです。でも、こういう難しいテーマの役と全力で向き合って、見ていただいた方によかったと言ってもらえれば、演じたかいがあります。まだ公開されていないので不安です」

Q.芸人と俳優の切り替えはすぐできますか。

塚地「全くしていません。間違っているのかもしれませんが準備する内容が違います。俳優のときはセリフを覚えて、どんなキャラにすべきだろうかと考えます。バラエティーだと、テーマに沿った、どんな面白い話があったかなと準備していきます。準備は違えど現場では全く同じです。現場に行って、そこに見合うことをするだけです」

Q.コントでも演技をされていますが、俳優で演じるときと同じ感覚でしょうか。

塚地「ドラマや映画は会社員や刑事役の場合、その役を自分が演じたならどうなるか、自分っぽさを出すので自分に近づけている気がします。コントは子どもを演じたり、おじいちゃんだったり、女性だったり、別の生き物だったりするので僕じゃないんですよ。僕から遠ざける作業で、完全に僕を消しています。

その違いがあるのかもしれません。僕に近づけるか遠ざけるかです。受けるか受けないかというのは大きいので、受けるために別人になるのがコントなのかもしれないです」

 映画「梅切らぬバカ」は11月12日から全国公開。

(オトナンサー編集部)

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