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よそで買った物を持ち込んで「フードコート」で飲食する行為、法的問題はない?

ショッピングモールなどの商業施設にある「フードコート」に、別の場所で購入した飲食物を持ち込んで食べた場合、何らかの法的な責任を問われるのでしょうか。

フードコートへの持ち込み、法的問題は?
フードコートへの持ち込み、法的問題は?

 ショッピングモールなどの商業施設の中には「フードコート」が併設されているところも多くあります。そのフードコートに別の場所で購入した飲食物を持ち込んで食べる人もいるようで、ある調査によると、22.4%の人が「(外から)持ち込んだ飲食物を食べたことがある」と回答しました。フードコートで、外から持ち込んだ飲食物を食べることに法的な問題はないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

容認の明示あれば問題なし

Q.例えば、ファミリーレストランでドリンクバーを頼み、外から持ち込んだお菓子と一緒に飲食したとします。マナー違反ですが、法的な問題も発生するのでしょうか。

牧野さん「法的な問題もあります。通常、飲食店では、店で注文した飲食物を食べるために客席の利用を認める“黙示の合意”があると考えられます。今回の場合、ファミリーレストラン側も店内の光熱費や人件費など、費用をかけて飲食の場を提供しているので、注文していない飲食物を店内で食べることは通常、認めないでしょう。

つまり、外から持ち込んだお菓子と一緒に飲食した場合、“黙示の合意”を守らない契約違反となり、店から顧客に対して損害賠償請求が可能です。あるいは、客席を不法占拠したとして、他人の権利侵害(不法行為責任)によって発生する損害賠償請求も可能でしょう」

Q.では、フードコートで、外から持ち込んだ飲食物を食べることに法的な問題はないのでしょうか。

牧野さん「フードコートの場合は、飲食店のときとは事情が異なります。外からの持ち込みを認めている場合、法的な問題はないでしょう。具体的には、掲示板などで『持ち込みを認める』ことを明示している場合です。外からの持ち込みを認めることで、客がフードコートにある飲食店で別の飲食物を購入する可能性が生まれるため、持ち込みを認めている場合があります。

一方、掲示板などで『外からの持ち込みを認めない』と明示している場合は、持ち込みに法的な問題があり、飲食店に持ち込む場合と同じく、損害賠償請求を求められる可能性があります」

Q.まったくの外部ではなく、フードコートと同じ商業施設内にあるスーパーや飲食店で購入した飲食物を持ち込んで飲食した場合、法的な問題はどうでしょうか。

牧野さん「フードコートと同じ商業施設内にあるスーパーや飲食店で購入した飲食物を持ち込んだのであれば、客が全くの無料でフードコートを利用しているわけではないといえます。そうした観点から、『店側が持ち込みを認める黙示の合意の範囲』が広く解釈され、認められる場合が多いので、店側から特に禁止の注意をされない限りは許容される場合が多いでしょう」

Q.外出時に自宅近くで購入したペットボトル飲料などの飲み物をフードコートの中で、食事とともに飲むことの法的な問題はどうでしょうか。

牧野さん「店で飲み物を購入せず、外部から持参している飲み物を飲むことは、店側から特に禁止の注意をされない限りは許容される場合が多いでしょう」

Q.フードコートに「持ち込みはご遠慮ください」など、禁止する掲示がされていなければ、持ち込みが可能と解釈する人もいるそうです。この解釈は間違いなのでしょうか。

牧野さん「この解釈は間違いです。『持ち込みはご遠慮ください』との掲示がされていない場合、店側が持ち込み飲食を許可しているかどうかは不明確です。そのため、念のため、店側に確認したり、許可を求め承諾を得た上で持ち込み飲食をしたりするのが、違法行為を避けるために肝要と思います」

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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