コロナ禍で体重急増? 子どもの「肥満」、無理なく改善するには 管理栄養士に聞く
コロナ禍で体重が急激に増えた子どももいるようです。子どもが肥満になった場合、どのように改善すればよいのでしょうか。

コロナ禍で在宅時間が増えたことで、子どもを持つ親の中には「学校(あるいは保育園、幼稚園)の体重測定で、子どもの体重が急激に増えた」「最近、子どもの体形が丸くなった」といったケースに遭遇した人も多いのではないでしょうか。肥満を改善するために食事量を減らそうとつい考えがちですが、無理な減量は子どもの健康面に悪影響を及ぼす可能性もあります。
コロナ禍で子どもが肥満になった場合、どのような方法で改善するのが望ましいのでしょうか。また、予防するためには、日頃からどのような対策が求められるのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。
過食、偏食など食習慣の問題も…
Q.そもそも、子どもが肥満になる原因について教えてください。また、コロナ禍で肥満の子どもはどの程度増えているのでしょうか。
岸さん「新型コロナウイルスの流行による外出自粛のほか、ネットやゲームの普及、塾通いなどによって体を動かす機会が減ったことに加え、過食、孤食、偏食といった食習慣の結果、摂取エネルギーが消費エネルギーを大きく上回ったことが肥満の原因として挙げられます。
コロナ禍で子どもの肥満がどの程度増えているのかについては、統計で具体的な数値が出ていないため分かりませんが、多くの家庭や教育機関が『子どもの肥満が増えている』『子どもが運動不足』と感じているようです」
Q.実際に、子どもが肥満かどうかを判断するための基準について教えてください。
岸さん「子どもの肥満を医学的に判断するためには『ローレル指数』(学童期)や『肥満度』を使用することが多いです。
【ローレル指数】
計算式:体重(キログラム)÷身長(センチメートル)の3乗×1000万
この数値が115~145未満に収まっていれば『標準』です(標準体形は130程度)。また、145を超えると『太り気味』、160以上は『太り過ぎ』、100未満で『痩せ過ぎ』です。
【肥満度】
計算式:肥満度(%)=(実測体重-標準体重)÷標準体重×100(%)
肥満度の判定基準(学童期)は『-30%:高度痩せ』『-20%:痩せ』『-15%:痩せ前段階』『20%から30%:軽度肥満』『30%から50%:中等度肥満』『50%以上:高度肥満』とされています。計算するときは、事前に子どもの『年齢・性別・身長』を基に標準体重を調べておきましょう」
Q.肥満を放置すると、子どもの成長にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
岸さん「学童期の肥満を放置した人の4割、思春期の肥満を放置した人の7割が成人後も肥満状態が続くといわれているほか、学童肥満→思春期肥満→成人肥満と移行する人の多くは、3歳から5歳のときにすでに肥満だったといわれています。
つまり、子どものときに肥満になると、大人になったときに肥満になりやすくなるのです。肥満になると、高血圧や糖尿病、動脈硬化など、生活習慣病のリスクを高めます。生活習慣病は大人だけでなく、子どもでも発症することがあるので注意が必要です。
また、高度の肥満は子どもの成長を妨げます。軽度の肥満であれば、成長とともに標準体形となっていくことが多いですが、中等度、高度の肥満になると、成長するための成長ホルモンの分泌量が低下してしまいます。さらに、肥満になると成長期の終わりが早まり、本来よりも身長の伸び率が小さくなってしまう可能性があるのです」
Q.子どもがダイエットを始めてもよいのは、何歳ごろからなのでしょうか。ダイエット時の注意点も含めて教えてください。
岸さん「『何歳から』という明確な基準はありません。『他の子と比べて太っているから』と親の主観で判断せずに、まずは医師や管理栄養士にダイエットが必要かどうかを相談してください。また、ダイエットを始める場合も、必ず、彼らの指示に従って行ってください。
特に小学校高学年ぐらいはダイエットに興味を持つ年頃で、体重を減らそうとするあまり、安易に食事を制限してしまいがちです。極端に食事量を少なくしたダイエットでは、骨や筋肉の成長が妨げられたり、脳に悪影響が出たりします。特に女子が無理なダイエットをすると、ホルモンバランスを崩してしまい、不妊症や生理不順の原因にもなるので十分に注意してください」
Q.ダイエットを始める場合、身長に応じた標準体重を目標にすればよいのでしょうか。
岸さん「体重と病気のリスクとの間には一定の相関関係があるため、標準体重がある程度の指標になることは間違いありませんが、絶対的な目標ではありません。標準体重はあくまでも目安と思ってください。なぜなら、子どもの体形は意外と変わりやすく、多少肥満気味だとしても心配がないケースが多いからです。
成長期なので不要なカロリーを控えつつ、体の成長分を見越して、必要な栄養をしっかりと摂取することが大切です。単純に体重を落とすことを考えるよりも、まずは食習慣や生活習慣を見直しましょう。そのためには、早寝・早起き・バランスのよい食事と適度な運動が一番の近道かもしれません。
先述のように、無理なダイエットは子どもの体の成長を妨げるので、くれぐれも『標準体重を目標に、マイナス5キロ!』などとは考えないようにしましょう」
Q.コロナ渦での子どもの肥満を防ぐために、親はどのような食習慣や生活習慣を意識すべきなのでしょうか。
岸さん「大切なことは食べる時間を規則的にすることと、食べ物をバランスよく摂取することです。食事の時間は朝食が午前7~8時、昼食が正午~午後1時、夕食が午後7~8時が標準といわれており、その時間帯から大きくずれてしまうと『朝食を抜く』『寝る前に食べてしまう』といった、肥満につながりやすい食習慣に陥ります。食事の時間はできるだけ固定してください。
食事のバランスについては、カロリーや栄養価計算は大変なのでそこまで難しく考えずに『主食(ごはんやパン)』+『主菜(肉、魚、卵料理など)』+『副菜(野菜や海藻類など)』をそろえることに気を付けましょう。基本的に、主食、主菜のほか、副菜として、野菜やキノコ、海藻類を使用した小鉢を2品用意すると、大体の食事バランスは整います。
あるいは『2品の副菜のうち、1品を具だくさんの汁物にする』『主菜を八宝菜など野菜もたっぷり使用した料理にする』といった形で調理すると、品数を減らしても効率的に栄養素を摂取できるのでおすすめです。料理を出すときは大皿ではなく、1人分ずつ取り分けると食事量を管理しやすくなります。学校で食べる給食の量を目安にすると適量が分かりやすいです。
デザートやおやつには、ビタミンミネラルが多く含まれる果物がおすすめです。一方、子どもが好きなお菓子や清涼飲料水は成長するための栄養素が少なく、エネルギーの過剰摂取につながってしまうことが多いので、できるだけ摂取を控えましょう。
また、日々の運動量を増やしていくことも重要です。新型コロナの感染予防対策をきちんと行った上で、家族や友人と一緒に運動することをおすすめします。運動することで消費カロリーが増えるだけでなく、友人や家族とのコミュニケーションも増えるので、体の健康はもちろん、心の健康にもよい影響を与えます」
(オトナンサー編集部)
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