古文書に「付箋」を貼ってはいけない理由が話題に…図書館の本もダメ!
戊辰戦争に関する新史料発見をきっかけに、「古文書に付箋を貼ってはいけない」という趣旨の投稿がSNS上で話題になっています。一体どんな理由によるものなのか、文化財のプロに聞きました。

戊辰戦争(1868~69年)で会津藩が新政府軍に降伏した直後、これまで埋葬が許されなかったと伝わってきた藩士の遺体が埋葬されていたことを示す史料が福島県会津若松市で発見され、先日、大きなニュースとなりました。埋葬場所や経費などが記されているといいます。一方、SNS上では、史料に「付箋」が貼られていたためか「会津藩士を埋葬したということで、本当に興味深い発見で、今後の分析が楽しみだけれど、頼むから古文書に付箋を貼るのはやめてくれ」との投稿が話題になっています。オトナンサー編集部では、「貼ってはがせる付箋紙(ポストイット)を古文書や図書館の本に貼ってはいけないことは、もっと周知しなければ」とツイートした、株式会社文化財マネージメントの宮本晶朗代表に、古文書に付箋を貼ってはいけない理由を聞きました。
そもそも古文書には「付箋」がある?
Q.そもそも「付箋紙」「付箋」とは何でしょうか。
宮本さん「一般的に、貼ってはがせる付箋紙を『付箋紙』や『付箋』、代表的な商品名で『ポスト・イット』と呼びますが、本来、付箋とは古文書に糊(のり)で貼った注などを書いた紙のことです。つまり、古文書には本来の意味での付箋がすでに貼られていることがあります。現在では、貼ってはがせる付箋紙が一般的になったため、『付箋紙=貼ってはがせる付箋紙』となりましたが、古文書の話をする時には区別が必要です。もちろん、今回のテーマは貼ってはがせる付箋紙のことです」
Q.古文書に付箋紙を貼ってはいけない理由は何ですか。
宮本さん「付箋紙は紙に長期間貼ったままにすると、粘着剤の経年劣化などにより、本来はスムーズにはがれるものが、しっかりとくっついてしまうことがあります。この状態で付箋紙をはがすと、紙の表面ごとはがれてしまうことがあるのです。粘着剤の経年劣化はメーカーや生産時期、保管環境(温度、湿度、紫外線など)によって状況が大きく異なるため、一概に『~週間貼りっぱなしにすると危険』とは言えません。また、付箋紙が貼られていた紙の状態によっても損傷度合いは大きく異なると考えられます。いずれにせよ、古文書のような唯一無二のものにとってこうした損傷は大きな問題です。また、図書館の本の中には、近現代のものであっても貴重な本もあるので、付箋紙による損傷を避けなければなりません。そもそも、図書館の本は市民の共有の財産です。国会図書館をはじめ、付箋紙を使用しないようにアナウンスしている図書館もあります」
Q.付箋紙をすぐにはがせば問題ないのでしょうか。
宮本さん「付箋紙を貼りっぱなしにせず、すぐにはがせば問題がないかというと、そうではありません。付箋紙には粘着剤が付いているので、すぐにはがしても本に多少の粘着剤が残ってしまうことがあります。粘着剤は最初は透明なので、肉眼では見えないかもしれませんが、経年劣化などによってだんだん、茶色いシミになったり、ベタベタしたりする可能性があります。また、粘着剤はカビの原因にもなりえます。従って、古文書や図書館の本に付箋紙は使用すべきではないと思います」
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