オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「オリンピック応援企画を放送できない」スポーツバラエティーの苦境

東京五輪開催中止の声が高まる中、民放局のスポーツバラエティー番組にも大きな影響が出ています。

記者会見する東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の武藤敏郎事務総長(左)と橋本聖子会長(2021年5月、時事)
記者会見する東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の武藤敏郎事務総長(左)と橋本聖子会長(2021年5月、時事)

 コロナ禍による緊急事態宣言で、さまざまな業種に時短営業や休業の要請がなされる中、何かとやり玉に挙げられているのが東京五輪。ネット上には開催中止を求める人の声があふれ、アスリートたちにも発言しづらいムードが生まれています。

 そんな逆風の中、影響を受けているのが民放局のスポーツバラエティー。東京五輪開幕まで2カ月を切った今、本来なら、日本代表アスリートたちの応援企画で盛り上がる時期なのですが、まったく関係のないものが放送され続けているのです。

 現在、レギュラー放送されている主なスポーツバラエティーは、土曜午後7時台の「炎の体育会TV」(TBS系)と、日曜午後7時台の「ジャンクSPORTS」(フジテレビ系)の2つ。

「日本代表選手が出ない」寂しさ

「炎の体育会TV」は、前回放送の5月15日では「山田裕貴TV初本気投球vsホームラン王2回マスクマン」「新井恵理那セントフォース弓道部vsイケメン学生王者」「張本智和に勝った日本No.1男初参戦…100秒卓球」。次回放送の29日では「新企画 レジェンドアスリートからの挑戦状 内田篤人考案的当てに歴代得点王が挑む」「俳優・山田裕貴VS元メジャーマスクマン」「早田ひな人生初サプライズ」「春日&フワちゃんエアロビ新展開」の放送が予定されています。

 一方、「ジャンクSPORTS」は、前々回の16日が「主婦アスリートのコストコ爆買い!」、前回の23日が「究極プレッシャーゲーム イレロ」を放送。また、3時間特番の30日では「新庄剛志コストコ爆買い」「超過酷 アドベンチャー鬼ごっこ」「超イレロ」の放送が予定されています。

 どちらもアスリートが芸能人とゲーム対決するような企画が多く、さらに、その大半を占めているのは“元選手”。現役選手も何人か出演していますが、東京五輪の日本代表選手はほとんど含まれていません。特に「ジャンクSPORTS」は、東京五輪の応援企画どころか、「アスリートも出る通常のバラエティー」というイメージの番組になっていることに驚かされます。

 やはり、これまで、五輪直前の時期に放送されていた、日本代表選手たちを明るく送り出す壮行会のようなムードはありません。なぜ、これほど極端な番組内容になっているのでしょうか。

情報番組の応援コーナーすらない状態

 もちろん、東京五輪開催に対する批判の高まりがスポーツバラエティーに影を落としているのは間違いないでしょう。大病を経て、奇跡の復活を遂げた競泳の池江璃花子選手に出場辞退を求める声が上がっているくらいですから、制作サイドも番組スポンサーも、東京五輪絡みの企画に慎重になるのは当然です。

 また、東京五輪に限らず、スポーツ界全般が逆境にあることもスポーツバラエティーにとってはつらいところ。プロスポーツの開催や感染対策が疑問視され、学生の部活動すら休止を余儀なくされるなど難しい状況下にあるだけに、企画の幅が狭くなり、キャスティングが難航しているようなのです。

 日本代表選手たち本人も、東京五輪への意欲を語ることも許されないようなムードがあるなど、バッシングを受けやすい状況の中、バラエティーに出演したがる人はほとんどいません。さらに、スタジオなど不特定多数の人々が出入りする場所での収録はコロナ感染予防の観点からも避けたいはずです。

 現状、東京五輪日本代表選手たちの応援企画は「スッキリ」(日本テレビ系)など一部の情報番組が行っているに過ぎず、「この競技の日本代表は誰なのか」すら分からない状態。もし、情報の少ない状態のまま東京五輪が開催されたら、どんな中継をすれば理解を得られるのか。開催中の情報番組は通常のような応援コーナーを放送するのか。テレビ局にとっては難しい決断を迫られるでしょう。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)

木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間30本前後のコラムを寄稿するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアー、人間関係のコンサルタントとしても活動中。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

コメント