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新鮮だけど懐かしい女優、松本穂香が受け継ぐ角川映画と竹内結子の記憶

故・竹内結子さんとの共通点

 そしてもう一つ、彼女は最近、ある芸能人に似ていることで話題になりました。9月に亡くなった竹内結子さんです。2人はもともと顔立ちが似ているのですが、松本さんが髪を切り、若い頃の竹内さんの髪型に近づいたことで、激似レベルがさらに上がりました。

 10月7日放送の「TOKIOカケル」(フジテレビ系)に出演した際には、ネット上で視聴者から、「ますます竹内結子にしか見えなくなった」「まるでドッペルゲンガー」といった声が。しかも、この番組のもう一人のゲストは、竹内さんの最初の夫である中村獅童さんでした。そのため、「ドキドキ」「複雑」といった声も飛び出していたものです。

 ちなみに、獅童さんは「みをつくし料理帖」で重要な役を演じています。以前から、竹内さんと松本さんが似ていると感じていて、両者のファンでもある筆者はあるシーンに驚かされました。ヒロインが失意のどん底から立ち直り、大泣きするシーンです。

 そのきっかけを作り、その現場に居合わせる役を獅童さんが演じていること、そして、竹内さんが泣きの演技に定評があったことを思い出し、ハッとさせられました。

 また、竹内さんがNHKの連続テレビ小説「あすか」や月9ドラマ「ランチの女王」(フジテレビ系)といった料理モノで評価を高めたように、松本さんも料理モノとの相性がいいのだと改めて気付かされたものです。

 それは、両者が女性性の体現の仕方でも似ているからでしょう。ショートカットが似合ったり、声が低めだったり、どこかボーイッシュでありながら、女性的魅力もしっかりと感じさせるバランス。こういうタイプの女優は同性にも支持されます。例えば、松本さんが生理用品のCMに起用されたりするのも、その表れでしょう。

 もちろん、松本さんは松本さんであり、竹内さんとも、角川三人娘とも違う個性の持ち主です。ただ、若手女優が伝統を受け継いだり、偉大な先人を連想させたりすることは大きなプラスにもなります。新鮮さに懐かしさが重なることで、見る側にとってイメージの幅が広がるからです。

「みをつくし料理帖」のクライマックスは、奈緒さんが演じる幼なじみとの切ないシーン。角川さんはパンフレットで、こんな感想を語っています。「2人の別れのシーンを見ているとき、私は未来の大女優が対決をしていると感じました」。

 ちなみに、松本さんは同業者の友人がなかなかできず、ここで共演した奈緒さんがやっと「唯一のお友達」になったそうです。一緒に大仕事を成し遂げた戦友のような感覚なのかもしれません。

 また、角川さんは松本さんの「素の表情」を生かすため、「江戸時代にタイムスリップしたつもりでやるように」と指導したとか。彼女は期待通り、現在から過去へ飛び、未来をも感じさせたわけです。

 新鮮さと懐かしさを併せ持つ女優だからこそ、つないでいける過去と未来。松本さんのこれからがますます楽しみです。

(作家・芸能評論家 宝泉薫)

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宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

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