伊勢谷友介容疑者、衝撃の逮捕 “芸能人だから”量刑は一般人より軽くなる?
俳優の伊勢谷友介容疑者が大麻取締法違反の疑いで逮捕されましたが、一般人と芸能人では、同じ犯罪をした場合であっても、社会的制裁を考慮し、量刑に違いが出ることはあるのでしょうか。

俳優の伊勢谷友介容疑者が大麻取締法違反の疑いで逮捕されました。逮捕に伴い、出演したドラマDVDの回収・販売中止、出演映画の撮り直し、放映中止などによる巨額の損害賠償金が請求される可能性があり、請求されれば、これまでに逮捕された芸能人同様、社会的制裁が科されることになります。一方で、一般人が同様の罪を犯した場合、芸能人ほど大きな社会的制裁は科されないのが一般的です。
同じ犯罪をした場合であっても、社会的制裁を考慮し、芸能人と一般人で量刑に違いが出ることはあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
「情状酌量」の要素として考慮
Q.伊勢谷友介容疑者が逮捕されましたが、もし、報道にあるような容疑で起訴され、有罪判決が出た場合、過去の判例からどのような量刑(芸能人であることを考慮しない場合)になると考えられますか。
牧野さん「大麻取締法違反の量刑の平均的な“相場”については、大麻保持の初犯の場合、懲役6カ月~1年で、3年前後の執行猶予が付くことが多いです」
Q.芸能人は逮捕され、容疑を認めた段階で、自らの芸能活動で社会的制裁を科されることが多いように思います。そうした社会的制裁を考慮し、同じ犯罪をした場合であっても、芸能人と一般人で量刑に違いが出る場合があるのでしょうか。
牧野さん「裁判員裁判の導入をきっかけに、最高裁判所が刑事裁判における量刑の基本的な考え方を示しています。第一に『犯行の動機や態様、結果など犯罪事実の事情が重要であり、被告人の社会的地位に応じて量刑は変化してはならない』ことが原則とされています。
つまり、芸能人であることは原則として量刑に影響しません。裁判官は被告が芸能人であり、社会的影響力が大きい点は『情状酌量』の要素として副次的に考慮できるにすぎないのです。
確かに、一般人と同じ重さの罪を犯しても、芸能人は自らの犯罪について詳しく報道され、多くの人から批判されます。出演番組などの損害補償が必要となったり、新しい仕事も来なくなったりして、一般人よりも重い社会的制裁を受けますので、刑事処罰を受けなくても、すでに十分な制裁を受けたという考え方もあります。
その考えによれば、芸能人と一般人で量刑に違いが出る可能性もありそうですが、具体的な事例として、芸能人だからといって、刑が明らかに通常より重かった例(執行猶予が付かない等)や、逆に、明らかに通常より軽かった例(執行猶予が付く等)は私が知る限りありません」
Q.社会的制裁が情状酌量の要素として考慮される場合、どれくらいの社会的制裁で、どれくらい刑を軽くするといった、何らかの基準はあるのでしょうか。
牧野さん「社会的制裁が『情状酌量』事情として副次的に量刑に考慮される場合は、事件担当の裁判官の裁量によるものであり、特に基準はありません。『被告は既に相応の社会的制裁を受けている』として、社会の処罰感情が低くなっている場合には、裁判官の裁量によって、相場より低い刑を言い渡す可能性があります。
相応の社会的制裁を受けていること以外に、『情状酌量』事情として副次的に量刑で考慮されるものとして、主に『更生の可能性がどの程度あるか』が挙げられます。(1)被告人の年齢・職業(2)初犯かどうか(3)最初から事実を認め、反省しているかどうか(4)家族が出廷し、更生への協力を約束しているかどうか――などの事情が考慮されます」
Q.一方で、世の中には「芸能人は社会的な影響力が大きいため、厳罰に処すべきだ」という声もあります。ただ、「芸能人だからこそ厳罰に」というのは、憲法14条の「法の下の平等」の原則に沿っていないようにも思います。社会的な影響力のある人への量刑は、どのように考えればよいのでしょうか。
牧野さん「確かに、芸能人の犯罪は一般人が同じことをするよりも大きく報道されるため、犯罪事実の拡散力があり、それにより、第二の犯罪を誘発する悪影響があるなどの事情から、厳罰に処すべきだという声もあります。
しかし、憲法14条の『法の下の平等』の原則に反することになりますし、先ほど紹介した『刑事裁判における量刑の基本的な考え方』における『被告人の社会的地位に応じて量刑は変化してはならない原則』にも反することになりますので、芸能人であることは原則として、量刑で特に考慮すべきではないでしょう」
(オトナンサー編集部)
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