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藤井聡太棋聖の「昼食」 出前でなく、もっと栄養気にすべきでは? 管理栄養士の見方

将棋の高校生プロ棋士、藤井聡太棋聖の対局時の昼食が注目されていますが、「勝負メシ」でもあるので、栄養などにもっと気を使わなくてもよいのでしょうか。

対局中の藤井聡太七段(現・棋聖)(2020年1月、時事)
対局中の藤井聡太七段(現・棋聖)(2020年1月、時事)

 将棋の高校生プロ棋士、藤井聡太棋聖は対局時の昼食に何を食べるのかも注目されています。対局場のホテル併設の飲食店や周辺の飲食店からの出前が多いようですが、基本的には、そのとき食べたい料理を選んで注文するようです。

 しかし、スポーツの大会では、アスリートが最大限の力を発揮するため栄養管理に熱心に取り組むなど、スポーツと食事は密接に関連しています。将棋の対局も長時間集中し、頭をフル稼働させる意味では、スポーツと似た部分があると思われますが、棋士は「勝負メシ」である対局中の昼食にもっと気を使わなくてもよいのでしょうか。

 料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。

脳のエネルギーは「ブドウ糖」「ケトン体」

Q.棋士は基本的に、対局中の昼食でメニューの中から好きな料理を選んで食べているようです。最大限の力を発揮するために、昼食のメニューにもっと気を使った方がよいのではないでしょうか。

関口さん「棋士に限らず、最大限のパフォーマンスを発揮するために食事は重要な要素です。昼食でどのような栄養を補給できるのかなど、食事管理に力を入れた方が確実によいといえるでしょう。脳は体重に対してたった2%の割合でありながら、体が消費するエネルギーの20%を使う臓器です。頭をフル稼働させる将棋の対局において、脳のエネルギー不足や集中力の低下は致命傷になりかねません」

Q.対局中の昼休みの食事では、棋士にはどのような栄養素が必要なのでしょうか。

関口さん「棋士の食事で必要なのは、継続的な脳のエネルギー源と神経伝達をサポートする栄養素、代謝を高め血流を促進する食品などです。

脳のエネルギーは『ブドウ糖』、あるいは、脂肪が分解されてエネルギー源として利用される際にできる『ケトン体』ですが、ブドウ糖のもととなる糖質食品に偏ると高血糖になり、その後、インスリンの作用によって血糖値が急降下します。血糖値の乱高下によって眠気や倦怠(けんたい)感、精神的に不安定な状態を招き、集中力を欠く場合があります。

それを防ぐには、食物繊維の多い野菜や海藻もしっかり取るなど栄養バランスよく食べ、血糖をコントロールすることが大切です。アスリートは長時間集中力を保つために、ケトン体を作り出す『MCTオイル』を取ることもあるようです。脳の働きを助けるDHA(ドコサヘキサエン酸)などのオメガ3脂肪酸やレシチン、代謝に関わるビタミンB群も重要です」

Q.藤井聡太さんが対局中の昼食に何を食べたかが、ネット上でまとめられています。最大限の力を発揮するための「勝負メシ」として、ふさわしいメニューを選んでいるでしょうか。

関口さん「栄養学的観点から選んでいるとは考えにくく、力が付きそうだと感じるメニューをその日の気分で選んでいるのではないでしょうか。ボリュームがあり、肉類や炭水化物が多く、パワーが出そうな食事を選んでいるとみられます。野菜や海藻類などの副菜も付いていれば、『勝負メシ』としてはよいと思います。

例えば、7月24日に行われた竜王戦決勝トーナメント3回戦の昼食で食べた、食堂『鳩やぐら』の肉豆腐は全体の3分の1が炭水化物のご飯、おかずはタンパク質の豚肉、豆腐をメインに、副菜はキノコ、野菜、イモ類など品数もあり、お昼に取りたい栄養素としては問題ないと思います。栄養学的には『PFCバランス』といって、P(プロテイン=タンパク質)、F(ファット=脂質)、C(カーボン=炭水化物)もバランスのよいお弁当です」

Q.プロ棋士のように長時間集中し、頭をフル稼働させる必要がある人はどのような栄養素や食品を取れば、疲労を回復させ、最高のパフォーマンスができるのでしょうか。食事の量はどの程度が望ましいのですか。

関口さん「脳のエネルギーとなるブドウ糖、体を構成するタンパクを基本に、糖質・タンパク質・脂質の代謝に必要なビタミンB群、生理機能を助ける各種ビタミン、ミネラルをバランスよく、そして、疲労の原因となる活性酸素を除去する抗酸化物質を含む食品、脳の働きを助けるオメガ3脂肪酸を含む食品を取るとよいでしょう。

具体的には、ご飯やイモ類などの炭水化物、肉類、魚介類、大豆製品、緑黄色野菜、海藻類、青魚やえごま油(亜麻仁油)などオメガ3脂肪酸を含む食品を使った食事が理想的です。食べる量は、消化器に負担がかかり過ぎない腹八分目が望ましいです」

Q.逆に、対局中の昼食であまり食べない方がよい食品はありますか。

関口さん「例えば、カルビ肉を使った焼き肉などです。こうした食品は脂っこく、消化器に負担がかかります。食べると元気が出るように思われがちですが、消化活動に多くのエネルギーを費やすため、控えた方がよさそうです」

Q.私たちも受注がかかった取引先でのプレゼンテーションなど、仕事上で勝負をする機会があります。そうした勝負の前の「勝負メシ」は、どのような食べものがよいのでしょうか。

関口さん「焼き魚定食のような、オメガ3の多い脂の乗った青魚と、野菜料理や豆腐などの付け合せがバランスよくセットになった定食はおすすめです。また、生姜焼き定食であれば、疲労回復のビタミンB1が多く含まれ、元気が出ます。うな丼のうなぎには、オメガ3やビタミン、ミネラルがバランスよく含まれ、ここぞというときのパワーチャージに向いています」

(オトナンサー編集部)

関口絢子(せきぐち・あやこ)

料理研究家・管理栄養士・インナービューティースペシャリスト

米国栄養カウンセラー、ヘルスケアプランナー。企業やウェブサイトなどの各種メディアで、レシピやコラム、企画提案などを行う。斬新なアイデアやニーズを捉えた企画が人気を博し、CM用のフードコーディネートやフードスタイリング、商業施設のフードプロデュースなど多岐にわたり活動。「毎日続けられること」をモットーに簡単・おいしい・おしゃれ、かつ美容と健康に直結したレシピを発信。自らの体調不良を食で克服した経験から執筆した著書「キレイになる!フェロモンレシピ」で「食から始めるアンチエイジング」をテーマに、女性が一生輝き続けるための食事法を紹介。セミナーや女性誌の特集で人気を集めている。

■オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/ayako-sekiguchi/
■YouTubeチャンネル「管理栄養士:関口絢子のウェルネスキッチン」(https://www.youtube.com/channel/UC6cZRYwUPyvoeOOb0dqrAug

コメント

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2件のコメント

  1. 余計なお世話

  2. 管理栄養士の作る飯は総じて不味い