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今年はコロナ終息も 「七夕」で願い事をするのはなぜ? ササや短冊の色の意味は?

「七夕」には、願い事を書いた短冊をササの葉につるしますが、日本の伝統的な季節の年中行事で、願い事をするものは多くありません。なぜ、七夕で願い事をするのでしょうか。

七夕で願い事をするのはなぜ?
七夕で願い事をするのはなぜ?

 7月7日は「七夕」です。願い事を書いた短冊や飾りをササの葉につるして楽しむ家庭も多いことでしょう。今年は、新型コロナウイルスの早期終息を祈る願い事を書く人もいるかもしれません。

 ところで、日本には伝統的な季節の年中行事が多くありますが、七夕のように願い事をするものは多くありません。なぜ、七夕で願い事をするのでしょうか。和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。

7月7日は「巡り合いの日」

Q.まず、七夕の由来を教えてください。

齊木さん「七夕は、星にちなんだ古くからの日本の年中行事です。7月7日の夜の行事で『七夕(しちせき)の節句』とされています。奈良時代に中国から伝来した『七夕伝説』と、中国の行事である『乞巧奠(きっこうでん)』、日本古来の『棚機女(たなばたつめ)』の伝説などが結びついて現在の形になりました。

『七夕伝説』は、日本でおなじみの織り姫とひこ星の伝説のことです。織り姫の星とされる織女(しょくじょ)星は裁縫の仕事を、ひこ星の星とされる牽牛(けんぎゅう)星は、農業の仕事をつかさどる星と考えられていました。2つの星はそれぞれ、『ベガ』『アルタイル』という1等星で、旧暦7月7日、天の川を挟んで最も光り輝いて見えることから、中国でこの日を年に1度の『巡り合いの日』と考え、それが日本に伝来しました。

『乞巧奠』とは、織女星にあやかり、機織りや裁縫が上達するようにと、7月7日にお祈りをする風習から生まれました。庭先の祭壇に針などを供えて、星に祈りをささげます。やがて、芸事や書道の上達も願うようになりました。

『棚機女』とは、日本古来のみそぎの行事で、乙女が着物を織って棚に供え、神様を迎えて秋の豊作を祈ったり、人々の穢(けが)れをはらったりするものでした。そのときに使われたのが『棚機(たなばた)』という織り機です。やがて仏教が伝わると、お盆前のお清めの行事として、7月7日の夜に行われるようになりました。現在、七夕という2文字で『たなばた』と当て字で読んでいるのも、これが起源とされます」

Q.七夕では、願い事を書いた短冊をササの葉につるして飾ります。なぜ、七夕では願い事をするのでしょうか。また、なぜササを使うのですか。

齊木さん「『七夕伝説』では7月7日の夜、織り姫とひこ星は『再会』という願いをかなえます。人々は『2人のように願いがかないますように』と願い事をするようになりました。また、『乞巧奠』に倣って手芸の上達を願うことが広まり、そこから、手習いや芸事がうまくなるようにお願いをするようになりました。

短冊をつるすササ(竹)は根強く、繁殖力も強く、風雪や寒暖にも強いため、その生命力と神秘性から不思議な力があるとされており、神事などに使われてきました。なお、ササに願い事を書いた短冊を飾ることは、江戸時代に寺子屋で学んでいた子どもたちが、『習字が上達するように』と短冊に書いたことが始まりとされます。ササ飾りの竹のように、勢いよく成長する様子を子どもに重ねるという意味で、健康を願うことも七夕にふさわしい願い事でしょう。

ただし、願い事をするのは自分自身です。つまり、願いがかなうために努力をするのも自分です。それを意識しておくと、より願いがかないやすくなるでしょう」

Q.七夕には、5色の短冊を飾ることが定番です。どのような色の短冊を飾ることがふさわしく、それぞれにどんな意味があるのでしょうか。

齊木さん「七夕の短冊の色は、中国の『陰陽五行』という思想に基づいています。陰陽五行は、この世のすべてが『木・火・土・金・水』の5つの元素からできているという考えで、この5つがあらゆる物や事象、例えば、色や人間の『徳』にも当てはまるとされます。

『木・火・土・金・水』は色ではそれぞれ、『青・赤・黄・白・黒』に相当し、人間の徳では『仁・礼・信・義・知』に当たります。人間の徳に沿った願い事をそれに合った色の短冊に書くことで、願いがかないやすくなるといわれます。

なお、昔は緑を青と呼んでいた名残から、青の代わりに緑、黒は縁起がよくないということで代わりに紫を使うこともあり、次のような関係になります」

【青(緑)の短冊は『仁』、人間力を高める願い事】
「○○できるようになりますように」「○○を直せますように」など、自分の苦手なこと、短所を直したいという願い事

【赤の短冊は『礼』、両親や先祖への感謝】
「いつもありがとう」「両親が健康でありますように」といった願い事

【黄色の短冊は『信』、人間関係に関すること】
「友達がたくさんできますように」「人見知りがなおりますように」など

【白の短冊は『義』、規則や義務を守ること】
「学校に遅刻しませんように」などルールを守る願い事

【紫(黒)の短冊は『知』、学業の向上】
「勉強ができますように」「受験がうまくいきますように」など

Q.最近では、七夕でも特に何もしない“七夕離れ”が見られるそうです。短冊や飾りを作り、ササに飾るのは手間がかかるからかもしれません。ササ飾りなどをせずに、七夕を楽しむ方法はありますか。

齊木さん「寺社や商店街などでもササ飾りがあって、参拝客や買い物客が短冊を飾ることができる場合があります。また、自宅で七夕にちなんだちょうちんや星飾り、折り鶴などを折り紙で作って、リビングに置くだけでも七夕を堪能できます。

七夕には旬のものを食べて邪気をはらい、無病息災を願う風習もあり、そうめんを食べるのもよいでしょう。白く長いそうめんは、無病息災や長寿を祈り、古くから縁起のよい食べ物とされています。形状から、天の川や織り姫の織り糸に思いをはせることもできます。年中行事は、季節感が大切です。自分でできる範囲で楽しんでみてはいかがでしょうか」

(オトナンサー編集部)

齊木由香(さいき・ゆか)

日本礼法教授、和文化研究家、着付師

旧酒蔵家出身で、幼少期から「新年のあいさつ」などの年間行事で和装を着用し、着物に親しむ。大妻女子大学で着物を生地から製作するなど、日本文化における衣食住について研究。2002年に芸能プロダクションによる約4000人のオーディションを勝ち抜き、テレビドラマやCM、映画などに多数出演。ドラマで和装を着用した経験を生かし“魅せる着物”を提案する。保有資格は「民族衣装文化普及協会認定着物着付師範」「日本礼法教授」「食生活アドバイザー」「秘書検定1級」「英語検定2級」など。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yukasaiki)。

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