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リードなしで散歩中の犬が通行人にけがをさせたら…飼い主の法的責任は?

被害者が犬を殴ってけがをさせたら

Q.もし、犬にかまれた通行人が犬を殴ってけがをさせる、あるいは死なせてしまった場合、法的責任を問われるのでしょうか。それとも、「正当防衛」と見なされ、責任を免れるのでしょうか。

佐藤さん「他人の犬を殴ってけがをさせたり、死なせてしまったりした場合、民事上は不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)を負い、刑事上は器物損壊罪(刑法261条)に問われます。しかし、他人の飼い犬に襲われたため反撃せざるを得ず、結果として犬を殴った場合、民事上・刑事上の反撃行為の違法性が否定され、免責となる可能性があります(民法720条、刑法36、37条)

ただし、犬は法律上は『物』なので、正当防衛は認められず、『緊急避難』(自己または他人の生命、身体、自由または財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない)という別の制度で解釈すべきだという意見もあります。

正当防衛、または緊急避難が認められるかどうかは、具体的な状況を踏まえて判断されます。『自分の身を守るための反撃だったのか』『犬を殴る必要性はあったのか』『犬を殴ることが必要最低限の方法だったのか』などが検討され、やり過ぎと判断されれば、一部、法的責任を負う可能性があります」

Q.犬のリードの件に限らず、ペットの散歩に関するトラブルで法的問題が生じるケースはありますか。また、ペットを散歩させる際の注意点は。

佐藤さん「ペットの散歩中のトラブルとしては、リードのほか、ふん尿の始末に関するものが起こりやすいです。例えば、『ふんの後始末をしない』『他人の家の壁や車などで用を足させてしまう』などが原因で争いになることがあります。

こうしたトラブルがきっかけで双方が感情的になり、著しく関係がこじれてしまうことも考えられるので、問題が起きたときはまず、落ち着いて冷静に話し合うようにしましょう。場合によっては弁護士や行政に相談し、第三者を交えて交渉することが必要です。

ペットを散歩させる際は、リードの長さに気をつけ、常に周囲に気を配り、動物を完全にコントロールできるようにしてください。また、排せつ場所や立ち入り禁止区域などに気をつけ、マナーを守るようにしましょう」

Q.リードでつながずに犬を散歩させたことにより発生した事故・事件の事例・判例はありますか。

佐藤さん「リードでつながずに犬を散歩させ、裁判になった事例は存在します。例えば、リードをつけていないトイプードルが路上に飛び出し、親子が乗っていた自転車と衝突した事例があります。親子は転倒して骨折などの大けがを負い、その後、飼い主に対し損害賠償請求をしました。裁判所が『飼い主の賠償責任が認められる可能性は相当高いように思われる』と促したことにより、飼い主が300万円を支払うという和解が成立しています」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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