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王道ソング「サステナブル」と新センターで、AKB48人気は持続するのか

乃木坂の上品さでも、欅坂のメッセージ性でもない“らしさ”

 そんなキャラクター面だけでなく、大きくなり過ぎたAKB48の「物語」からも彼女は自由です。国民的グループになってしまうと、アイドルとしての分かりやすいかわいさ以外のものまで求められがちで、AKB48は近年、このテーマと格闘してきました。朝ドラの主題歌を歌ったり、指原さんがバラエティーに進出したり。総選挙でも、病気の告白や結婚宣言が注目されました。

 その点、彼女は「昔のAKB48の雰囲気を知らないから」「AKB48のことをもっと知りたい!」などと言えてしまう立場です。「物語」に縛られることなく、伸び伸びとやれることでしょう。

 また、AKB48ではここ数年、他の系列グループとの兼任メンバーによる活躍も目立っています。オールスターユニット的なこのシステムは、人気やカリスマ性の維持につながったものの、グループとしての輪郭が曖昧化した印象も否めません。そういう意味で、生え抜きの矢作さんなら、AKB48らしさを体現するにはふさわしいはずです。

 では、そのAKB48らしさとは何かといえば、まさにアイドルとしてのベタな、分かりやすいかわいさでしょう。乃木坂46の上品なブランド感でもなく、欅坂46のスタイリッシュなメッセージ性でもなく、もっと身近で、テレビにもガンガン出て、子どもたちがまねしたくなるような魅力を届けてくれるところです。それを伝えるためにも「サステナブル」はベストな選曲といえます。

 そして、若いセンターの出現は、グループのバランスを良くしたり、結束を高めたりします。かつて、モーニング娘。が停滞しかけたとき、13歳の後藤真希さんが加入したことで勢いを取り戻したことがありました。他のメンバーが脇を固めようとすることで、全体にも個人にも好影響がもたらされたりするのです。

「サステナブル」のパフォーマンスを見ると、矢作さんと小栗有以さんの同い年コンビがフレッシュさで目立つ中、ベテランの柏木由紀さんや前総監督の横山由依さん、バラドルのイメージが強い須田亜香里さんらとのコントラストが実にいい感じに思えます。

 矢作さんいわく「明るく元気な姿を見せるのがアイドル」とのこと。ちなみに「サステナブル」とは「持続可能」を意味します。明るく元気な王道アイドルとしてのAKB48は、これからも“持続”されていきそうです。

(作家・芸能評論家 宝泉薫)

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宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

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