オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

桜の味がする? 春によく見かける「さくら味」って、どんな味?

春になると、コンビニやカフェで見かけるようになる「さくら味」の商品。一体、どんな味なのでしょうか。

さくら味とは、どんな味?
さくら味とは、どんな味?

 春めくにつれ、コンビニやカフェなどで見かけるようになる「さくら味」の商品。桜の花は本来、食べるものではありませんが、「さくら味」と聞いて、あの独特の甘い味をイメージできる人も多いことでしょう。しかし、中には「『さくら味』とはつまり何味なのか?」と疑問を持つ人も少なくないようです。

 ネット上では「春になるとさくら味のスイーツ買っちゃう」「さくら味好きだけど、桜の味ではないよね?」「サクランボ味とは違うのかな」など、さまざまな声が上がっています。「さくら味」の“正体”について、日本味覚協会の水野考貴さんに聞きました。

「クマリン」が独特の風味生む

Q.そもそも「さくら味」とは、いつ、どのように誕生したものですか。

水野さん「さくら味の原型は、『桜餅』であると考えられます。桜餅は江戸時代に誕生したとされ、『長命寺(東京都墨田区)の門番だった山本新六が、樽(たる)で塩漬けにした桜の葉を使った“桜餅”を考案した』説が有力とされています」

Q.ずばり、さくら味とはどのような味のことを指すのでしょうか。

水野さん「さくら味とは、『桜の葉や花の風味』です。主に、桜の葉を塩漬けにしたときに生成される『クマリン』という成分が、一般的に『さくら味』と呼ばれる風味を生み出していると考えられています。桜餅の風味は、このクマリンによるものです。

クマリンは、生の葉や花の中では、他の物質と結合した状態で細胞の中にあるため、風味はしません。葉や花を塩漬けにしたり、破砕したりすることで、細胞外の酵素と反応してクマリンが生成され、独特の風味がするようになります。

桜の葉や花をペースト状にしたり、エキスを抽出したりするなど、食品会社や商品ごとにさくら味の作り方は異なりますが、基本的にはクマリンの風味を生かして作り出されていると思われます」

Q.さくら味とサクランボ味は同じでしょうか。それとも異なるものでしょうか。

水野さん「さくら味とサクランボ味は異なります。さくら味は、桜の『葉』『花』に関する風味であり、サクランボ味は桜の『果実(=サクランボ)』の風味です。ちなみに、サクランボは日本で一般的に鑑賞される桜(ソメイヨシノなど)の果実ではなく、別の品種(セイヨウミザクラなど)の果実です」

Q.多くの日本人が、さくら味を「おいしい」と感じるのはなぜでしょうか。

水野さん「『さくら味(桜の葉や花の風味)自体が好き』という場合もあると思いますが、さくら味のおいしさには『桜』の持つイメージが大きく影響していると考えられます。

人は味を感知するとき、味そのものだけではなく、目や耳などから入る情報に大きく影響を受けます。例えば、ラーメンであれば、行列のできる店をおいしく感じたり、市販品のおいしさの感じ方が会社やブランド名によって左右されたりします。日本人が持つ『桜』に対する良いイメージが、さくら味に好影響を与えている可能性は大きいと思います」

(オトナンサー編集部)

水野考貴(みずの・こうき)

一般社団法人日本味覚協会東京オフィス代表

1985年愛知県西尾市生まれ。愛知県立岡崎高等学校、名古屋大学理学部卒業。日本味覚協会では、自分の味覚の良い/悪いをチェックできる「味覚チェック」について各自治体や調理師専門学校、食品会社などで体験イベントやセミナーを数多く実施。また、食べ比べることで味覚をチェックできる「味覚検定チョコ」を開発・販売している。主なテレビ出演に、TBS「この差って何ですか?」「林先生が驚く初耳学」、フジテレビ「さまぁ~ずの神ギ問」。書籍監修に「辛さのちから」(辰巳出版)など。ウェブサイト「味覚ステーション〜世界一面白く食品・栄養・味覚を学べるサイト」(http://mikakukyokai.net/)。

コメント