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【パリ五輪】中国はなぜ「卓球」が強いのか…専門家が現地で見た“卓球人口1億人”の日常 背景に“特殊事情”も

確立されている人材育成システム

 では、競技人口1億人の中から、数人のオリンピック選手というピラミッドの頂点にはどうやって上っていくのでしょうか。そこには、他国ではなかなか見ることができない挙国一致体制のもとでの手厚い人材育成メカニズムが存在します。

 まず、小学校に、卓球選手を目指す子どもたちのグループをつくります。その時点でいわゆる“金の卵”を発掘し、高度な卓球専門課程へと導きます。系統立った訓練と育成を通じて、頭角を現してくる子どもを次々と抜擢し、中国卓球チームに組み込んでいくわけです。

 人間ですから、才能がいつ開花するかには個人差があります。小学校時代には目立った才能がなくても、後にめきめきと伸びていく場合もあるものです。そのために、青少年向けの育成システムも構築されていて、各レベルに応じた専門の学校、プロのチーム、究極は国家のチームへと通じる道が示されています。細かく張られた網の目から、どんな才能も逃さないといった“国家の意志”が垣間見られます。

 こうしたシステムの中で、卓球選手を目指す若者たちは、技術力、体力、精神力などを育み、選手としての能力が総合的に育成されていくのです。

科学的アプローチを重視

 近年、日本の卓球選手も、中国のプロチームで技術を磨くケースが増えてきました。中国各地のチームに入り、中国人コーチのもと、中国人選手に交じって中国語しか通じない世界で経験を積んでいくのです。すると、選手としての能力が飛躍的に伸びていくのですから、中国のシステムはやはりすごいと思わざるを得ません。

 そんな日本人選手の代表例が福原愛さんですが、以前、福原さんが日本のスポーツ専門誌で、大変興味深いコメントを出されていました。

「中国語は、卓球についての言葉が豊富なんです。例えば、スマッシュについていえば、日本では『強い』、『弱い』それに『普通』の3種類くらいしかないと思いますが、中国では私の感覚として、30から10段階刻みで、120くらいまで表現する言葉がある感じなんです」※「Number」795号(2012年1月号)生島淳さんのインタビューより

 中国卓球の精密さがよく表れているエピソードです。

 また、科学的アプローチも重要な要素です。コーチングチームは、選手一人ひとりの特性に合わせてトレーニング計画を練るわけですが、先進的な技術分析、肉体訓練方法を基盤にして、選手が技術、肉体、メンタル、全てにおいて最高の状態を保てるように考えます。科学的アプローチがあってこそ、選手たちの競技能力が常に向上し、選手寿命も長くなり、中国卓球チームの安定的な発展にもつながっていくとの考えです。

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青樹明子(あおき・あきこ)

ノンフィクション作家・中国社会情勢専門家

早稲田大学第一文学部卒、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程修了。大学卒業後、テレビ構成作家や舞台脚本家などを経て企画編集事務所を設立し、業務の傍らノンフィクションライターとして世界数十カ国を取材する。テーマは「海外・日本企業ビジネス最前線」など。1995年から2年間、北京師範大学、北京語言文化大学に留学し、1998年から中国国際放送局で北京向け日本語放送のキャスターを務める。2016年6月から公益財団法人日中友好会館理事。著書に「中国人の頭の中」「『小皇帝』世代の中国」「日中ビジネス摩擦」「中国人の『財布の中身』」など。近著に「家計簿から見る中国 今ほんとうの姿」(日経プレミアシリーズ)がある。

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