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【SNS】推しのアイドルやキャラクターのアイコン 実は“犯罪”の可能性 弁理士が解説

インスタやXなどで自身のアイコンにアイドルの画像や漫画&アニメキャラの画像を使用している人も多いでしょう。実は“犯罪”の可能性があるのを知っていますか? 弁理士の永沼よう子さんに違法性がないのか、解説してもらいました。

SNSアイコンにどんな画像を使ってる?
SNSアイコンにどんな画像を使ってる?

 「X」をはじめ、インスタグラム、フェイスブックといったSNSなどに自身が好きなアイドルの顔画像、漫画やアニメキャラの画像を使用している人は少なくないと思います。そこで、知的財産権に関する業務を行う弁理士の永沼よう子さんに違法性がないのか、聞きました。

著作権、肖像権、パブリシティー権などを侵害

Q,ずばり、SNSの自身のアイコンに、好きなアイドルのほか、漫画、アニメのキャラクターの画像を使用するのは、いいのでしょうか?

永沼さん「実は、法的な問題が山積みです。SNSのアイコンに使われがちな『他人の作品』と、使った場合に違反し得る法律について紹介します。

(1)芸能人など『人物の写真』のアイコン
芸能人や著名人、他人の写真を無断でアイコンに使用するのは著作権侵害になり得ます。写っている人物ではなく、カメラマンや所属事務所といった『写真の権利者』に対する『著作権侵害』となります。写真に写っている実在の人物に対しては、『肖像権やパブリシティー権』を侵害する可能性があります。

(2)漫画やアニメなどキャラクターのイラストのアイコン
作者の許諾なくキャラクターのイラストをアイコンにすることも著作権の侵害になり得ます。キャラクターの絵には著作権が発生していることが多く、インターネット上のイラストデータをそのまま使用する場合だけではなく、イラストを自分で撮影・スキャンした画像を使っても著作権の侵害になります。そもそも著作権には他者に作品 を勝手にコピーさせない権利(複製権)が含まれるためです。

また、元画像を加工してアイコンに使用する場合も著作権の侵害にあたる場合があります。加工のポイントは元画像の大事な特徴が残っているかどうかです。元の著作物の特徴を保ったまま使用した場合、元の著作物との『類似性』や『依拠性』が認められて、やはり著作権侵害となることがあります。元ネタが分かる状態での使用は、著作権侵害を免れないケースが多く、加工すれば安心というわけではないことにも注意が必要です。

(3)他人が撮影した写真全般
写真を撮影した人は写真の著作権を持つため、ネット上に転がっている風景や動植物などの画像などにも注意が必要です。自然風景そのものに著作権はありませんし、動植物には肖像権もありません。
しかし、それらを写した『写真』には『写真を撮影した人の著作権』が発生しているケースがあります。

人間が撮影した写真や映像に関しては、『撮影者の権利』と『被写体の権利』の二つを意識しておくことが大切です。例え、写真に写っている人物が写真の使用にOKを出していても、別途、撮影者の許可が必要な場合があります。芸能人が自分の出演するテレビ番組の映像・画像を切り取って SNSに投稿しないのは、その映像の著作権が放送局やその他関係者にあるため他者の権利を守っているということもあります。

自分で撮影した写真をアイコンに使う分にはもちろん問題ありませんが、他人が撮影した写真には『写真の著作権』があり、無断で使用すると著作権侵害になり得ますし、人物が写っている場合には『肖像権・パブリシティー権』の侵害の可能性があります。

最近は左右反転をしたり、色を変えるなどしても、インターネット上のサーチで元画像データを見つけ出す技術もあります。実際にそうした技術から画像が発見されて使用料の請求につながるパターンもあります。要するに、ネット上にある著作権侵害画像は、権利者がその気になれば見つけられるということです。

現在、多くの方が行うアイコンでの作品の無断使用ですが、すべての権利者がOKを出している場合を除き安全とはいえません。とはいえ権利者が暗黙の了解をしていたり、どんどん使ってほしい、という意思表示をしているケースもあります(この場合も、本当に他のすべての権利者の承諾も取れているか確認は必要です)。判断が難しいと感じたら、ぜひ、専門家に相談してください。

Q.法的な観点についても具体的に教えてください。

永沼さん「著作権について説明いたします。
著作権を侵害すると、民事上の請求と刑事上の罰則があります。

(1)民事上の請求
著作権侵害が認められた場合の民事責任として、以下のようなペナルティーがあります。

『損害賠償請求』著作者が受けた損害の回復を求められます。ライセンス料や売上減少による損害、著作者人格権の侵害による精神的な苦痛に対する請求などもここに含まれます。
『侵害行為の差止請求』これ以上の侵害が起こらないよう、画像掲載の中止や画像の破棄などが要求されます。
『名誉回復措置請求』著作者人格権の侵害があれば、名誉回復措置が請求される可能性があります。例えば謝罪広告を掲載することなどを請求されます。

その他、不当に利益を得ていた場合には返還請求などがあります。

(2)刑事上の罰則
著作権侵害には『刑事罰』が科されることがあります。SNSのアイコンとして他人の著作物を無断で使用する場合は『親告罪』に該当し、被害者である権利者が告訴することにより侵害者を処罰してもらうことができます。著作者自身が告訴しない限り刑事責任を問われないことになっていますが、違反の内容によっては権利者が告訴しなくても罪を問われることがありますし、権利者自身がいつまで見て見ぬふりをしてくれるか、保証はありません。

著作権侵害の刑事罰として、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金、著作者人格権、実演家人格権の侵害などは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金などが定められています。そして『懲役刑』と『罰金刑』は、同時に科される場合があります。

また、企業など法人による著作権侵害の場合は、法人に対し3億円以下の罰金が定められています」

他人の著作物を私的に楽しむ分には問題がありません。「私的使用」というのは、個人的な利用や家庭内といったごくごく限られた狭い範囲での使用を意味します。ソーシャルメディアで作品をアイコンとして使用する場合、これは「私的使用」には含まれませんので、注意が必要です。

(3)肖像権

肖像権とは、自分の肖像(顔や姿)を写真や絵画に使われたり、勝手に公表されたりしない権利のことですが、法律でこの権利は定められていません。そのため侵害しても刑事上の罰則はありませんが、民事上の請求をされる可能性があります。肖像権の侵害は民事上の不法行為(民法709条)として、損害賠償請求や投稿に対して差止請求がなされることがあります。

パブリシティー権は主に著名人が持つものです。著名人の顔や名前には、それ自体に人々を引き付ける力があり、商売に使えばその存在によって顧客が引きつけられ、売れ行きもアップします。そういった影響力を無断で使用されないための権利です。

パブリシティー権の侵害が認められた場合も、加害者は損害賠償請求(民法709条)や差止請求などをなされることが考えられます。

芸能人や著名人ではない一般人でも肖像権がありますし、その方の写真には著作権が発生していることがあります。有名人か否かを問わず、他人の写真や画像を無断でアイコンにするのはやめたほうが安全です。

本来、大好きなキャラクターや有名人の方を応援する気持ちからアイコンに使用している方々も多くいます。好意的な応援での使用は見逃している事務所もあるのが現実です。しかし、法律上の問題を知っていると知らないとでは何かあった場合の対処方法が違ってきます。皆さんも、ぜひ参考にしてみてくださいね」

(オトナンサー編集部)

永沼よう子(ながぬま・ようこ)

弁理士

2012年、AIPE認定知的財産アナリストを取得。2015年、弁理士に登録。2019年から国際特許事務所で代表弁理士を務める。「国際女性デー HAPPY WOMEN」知的財産担当・実行委員弁理士、「渋谷芸術祭」知的財産担当、「経済産業省」地域団体商標活用プロジェクト・講師なども経験。専門分野は商標・著作権・デザイン・特許・肖像権・不正競争防止法・キャラクター、オリンピック関連問題・知財教育。

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