身近な悪質犯罪「寸借詐欺」 被害額“数百円”だから泣き寝入りしてしまいがち 手口を弁護士に聞く
少額のお金を“借りるふり”をしてだまし取る「寸借詐欺」という犯罪があります。どのような刑罰に問われ得るのか、被害に遭ったらどうすればいいのか、弁護士に聞きました。
「財布を落としてしまったので、帰りの電車に乗れない」。手持ちのお金がなくて困っているように装い、少額のお金を“借りるふり”をしてだまし取る「寸借詐欺」という犯罪があります。数百円から数千円という少額ではあるものの、人の善意につけ込んでいる点からも悪質さが際立ちますが、被害者側が泣き寝入りしやすい側面もあるようです。
実は身近な犯罪ともいえる「寸借詐欺」。もし被害に遭ったらどうすればいいのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
少額の被害でも、詐欺罪が成立する可能性あり
Q.「寸借詐欺」とは、どのような犯罪ですか。
牧野さん「『寸借詐欺』とは、『財布を落としてしまった。あとで返すから少し貸して』とお金を借りるふりをして、他人から金品をだまし取る詐欺行為のことをいいます。通りがかりに声を掛けるなど、身近な場所で行われることが多いです。
寸借詐欺は、人の親切心を利用し、『帰りの電車賃、タクシー代だけを貸してほしい』と数千円から数万円程度の少額を要求するので、断りづらく、だまされる場合が多いのです」
Q.寸借詐欺は、どのような刑罰に問われる可能性があるのでしょうか。被害額が少額であっても罪に問われるのですか。
牧野さん「たとえ少額の被害の場合でも、詐欺罪(10年以下の懲役)が成立する可能性があります。ただ、例えば被害額が『1円』など非常に少額の場合には、不起訴処分とされることが多いでしょう。
寸借詐欺は、他の詐欺と比べて、被害金額が数千円〜せいぜい数万円と少ないため、軽い罪と見られがちですが、詐欺罪が成立する可能性がある犯罪にはかわりありません」
Q.寸借詐欺は「被害者側が泣き寝入りしてしまいやすい」など、事件化されにくい傾向があるというのは事実でしょうか。
牧野さん「はい。というのも寸借詐欺は、犯人が相手の善意につけ込み、『借りた金は必ず返す』と言ってお金を借りるため、だまされたことが判明するまでに時間がかかる場合が多い事情があります。しかも、被害金額が数千円から数万円と少額であることから、警察に被害届を出しても、捜査がなかなか行われないケースが多いからです」
Q.「これ、もしかしたら寸借詐欺かも…」と思われる場面に遭遇した際、どうすればいいですか。
牧野さん「『お金を貸してほしい』と言ってきた人の運転免許証や健康保険証など、本人確認書類を写真に撮っておくことは必須です。加害者が誰かが分からなければ、警察へ告訴したり、裁判で返金請求したりすることがそもそもできないからです。本人と確認できるものを手元に用意した上で、警察に相談することが必要です」
(オトナンサー編集部)
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