「カピバラ」「ゴリラ」「ペンギン」…賃貸住宅の変わった名前、反社対策って本当? “真偽”を不動産鑑定士に聞く
反社会的勢力に関係する人の入居を防ぐ目的で、賃貸住宅に変わった名前が付けられるのは、本当なのでしょうか。真偽について、不動産鑑定士に聞きました。

賃貸住宅の中には、「カピバラ○○」「△△ゴリラ」「ペンギン□□」など、動物の名前を採用した物件があります。このように、賃貸物件に変わった名前が付けられる理由について、SNS上では「ダサい名前にすることで、反社の入居を未然に防いでいると聞いたことがある」といった内容の意見があります。
反社会的勢力に関係する人の入居を防ぐ目的で、賃貸住宅に変わった名前が付けられるのは、本当なのでしょうか。この真偽について、不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の竹内英二さんに聞きました。
建物名は「覚えやすさ」で決められる
Q.そもそも、賃貸住宅の名前は誰が決めているのでしょうか。
竹内さん「賃貸住宅の名前は、建物の持ち主が決めるのが一般的です。賃貸住宅に限らず、オフィスビルや商業ビルでも、建物の所有者が名前を決めることはよくあります。
建物名は必ずしも決めなければならないものではありませんが、建物名があると住宅地図に名前が掲載されるため、郵便物や宅配サービスなどの誤配を防ぐ効果はあります。宛先を『○○ハイツ201号室』のように建物名を併記すれば、届け先が明確になります」
Q.では、賃貸住宅に名前を付ける際のルールはあるのでしょうか。それとも、自由に名付けることができるのでしょうか。
竹内さん「建物名は、自由に付けることができるため、賃貸住宅の名前の付け方には、特にルールはありません。賃貸住宅の名前には、『○○ハイツ』『○○コーポ』『メゾン○○』といった、住宅を想起させるような単語が使われることが多いです。
ただし、建物名は役務や商品ではないことから、基本的に商標登録することはできません。つまり、国内のほとんどの建物名は商標登録されていないため、他の建物と名前が重複しても問題ないことになります」
Q.「カピバラ○○」「△△ゴリラ」「ペンギン□□」など、賃貸住宅に変わった名前が付けられるのは、「反社会的勢力に関係する人の入居を防ぐため」という情報がありますが、事実でしょうか。
竹内さん「そのような事実はありません。そもそも変わった名前の物件は、それほど多くありません。『カピバラ』『ゴリラ』『ペンギン』など、動物の名前を使った物件も少ないです。
『コーポ』『ハイツ』『メゾン』といった名前が変わった名前と感じないのは、そのように名付けられた建物が多いからです。こうしたメジャーな名前には、反社会的な勢力に関係する人の入居を防止する目的は一切ありません。同様に、変わった名前の物件にもそういった目的はないと思われます。
建物の名称は、呼びやすさや覚えやすさ、音の響き、由来、地名のほか、所有者の思いや願いなどを加味して決められるのが一般的です」
Q.変わった名前の賃貸住宅と、一般的な名前の賃貸住宅を比べた場合、入居率に違いはあるのでしょうか。
竹内さん「入居率は、主に物件の利便性や家賃、建物の仕様などによって決まります。名前によって入居率に違いが生じることは、ほとんどありません。
例えば、ペットの飼育が可能なマンションを『わんわんマンション』と名付けることで、ペットを飼育中で引っ越しを検討している人に分かりやすく訴求できれば、入居率が上がる可能性はあります。ただ、この場合、入居率を上げる主な要因は『ペット可』という建物の仕様であり、名前ではありません。
逆に『幽霊マンション』のような変わった名前を付けてしまった場合、入居率が下がることが考えられます。賃貸住宅は長期にわたり収益を生む大切な資産であるため、極端に変わった名前を付けにくく、無難な名前に落ち着くことが多いです」
(オトナンサー編集部)
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