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人気番組で問題にもなった… 海岸の「石」「砂」を持ち帰ると“罰金&逮捕”も 理由を弁護士が解説

海岸にある石や砂などを持ち帰った場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。弁護士に聞きました。

海岸の石や砂を持ち帰った場合の法的責任は?
海岸の石や砂を持ち帰った場合の法的責任は?

 海に行ったときに、きれいな石や砂などを見つけて持ち帰りたくなることがあります。ただ、石や砂などを持ち帰ると、法的責任を問われるケースがあるようです。海岸にある石や砂などを持ち帰った場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。芝綜合法律事務所の弁護士・牧野和夫さんに聞きました。

1年以下の懲役または50万円以下の罰金の可能性

Q.そもそも、海岸の石や砂、貝殻、流木などを持ち帰った場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。

牧野さん「そもそも他人の財物を窃取した場合、窃盗罪(刑法235条)に該当し、10年以下の懲役または50万円以下の罰金を科される可能性があります。海岸の流木や貝殻など、所有権が分からない物体は、『他人の財物』に当たらないため、窃盗罪に該当しないでしょう。

一方、海岸の砂については、国が管理している財物と考えられるため、営利目的で大量に持ち出した場合は、窃盗罪に該当する可能性があるでしょう。

海岸は国のもので、『海岸法』に基づき、国土交通省や都道府県の土木課などが管理しています。また、『国立公園』『国定公園』『都道府県立自然公園』と指定されている場所の海岸は『自然公園法』という法律が適用され、国や都道府県の管理下にあります。これらの法律により、石や土砂などの採取が原則として禁止されています。例えば、海岸法(8条)違反に該当した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

このように、海岸の砂浜はほとんどが国有地であり、砂を含む土石類については、海岸管理者である都道府県知事の許可を得なければ、採取することができません。このように、砂を海岸から持ち出す行為は基本的に禁止されていますが、海岸の管理者の許可があれば持ち出せる場合もあります。具体的には、当該の海岸がある市区町村に問い合わせて確認するとよいでしょう。

ただ、実際には子どもが自由研究に使用する目的で海岸の小石を数個拾うなど、環境保護に影響がない程度の量である場合や、拾った石や土砂を転売しない場合であれば、持ち帰っても問題はないと思います」

Q.なぜ海岸の石や砂を持ち帰る行為が禁止されているのでしょうか。

牧野さん「海岸や河川、山などの自然公園内の保全、環境保護が目的です。海岸の砂浜を構成する砂などの堆積物は、津波や高潮などの海水のほか、地盤変動による被害から海岸を防護する役割を果たしています」

Q.海岸の砂などを持ち帰ったことで問題となったケースについて、教えてください。

牧野さん「自然公園法により、砂の持ち帰りが禁止されている鳥取砂丘で、人気俳優が砂を持ち帰り、問題となったケースがあります。

以前、男性俳優が、人気テレビ番組のロケで鳥取砂丘を訪れた際に、視聴者プレゼント用に砂丘の砂を袋に詰めて持ち帰ったそうです。その後、番組の再放送時に視聴者からの指摘で違法行為と分かり、番組を制作したテレビ局が謝罪しました」

(オトナンサー編集部)

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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