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マスク着用で「肌が荒れる」のはなぜ? 素材で違いは? 皮膚科医に聞く

コロナ禍以降の「マスク生活」で、「肌が荒れるようになった」人もいると思います。マスクの素材によって、肌への影響も変わるのでしょうか。皮膚科医に聞きました。

マスクで肌荒れが起きる人も…
マスクで肌荒れが起きる人も…

 コロナ禍以降、生活必需品となったマスク。連日、長時間つけていることで「肌荒れ」が気になる人もいるようです。中には、「素材によっては触れたところから肌荒れする…」「マスクの素材を変えたら肌荒れがおさまった」「不織布だと湿疹が出てしまう」など、マスクの素材によって肌への影響が変わることを実感している声も聞かれます。

 マスクの素材によって、「肌への影響」に何らかの違いはあるのでしょうか。逗子メディスタイルクリニック(神奈川県逗子市)の徳永理恵さん(皮膚科、美容皮膚科)に聞きました。

患者の多くは「不織布マスク」を使っている人

Q.「マスクによる肌荒れ」で来院する患者さんは増えていますか。実際、マスクをつけることで、肌がどんなふうに荒れることがあるのでしょうか。

徳永さん「はい、増えていると思います。コロナ禍以降、きれいにマスクの形に一致して肌が赤くなる人をよく見掛けるようになりました。

症状としては、頬のマスクがよく当たる部分が赤くなったり、カサカサして少し腫れたり、かゆみが出たりしている人が多いです。唇がマスクと触れやすい人は、『マスクをしていなかったときは何ともなかったのに、唇が荒れやすくなった』とおっしゃいます。

また、摩擦による荒れ以外に、マスクの下に隠れた部分の皮膚にいる『常在菌』のバランスの崩れが原因となるケースもあります。その結果、普段はさほど悪さをしない、カンジダやマラセチアなどのカビ(真菌)が優勢になって、ブツブツとした発疹ができることがあります」

Q.マスクの着用によって肌が荒れやすい人の特徴はありますか。

徳永さん「もともと乾燥肌の人、また反対に脂性肌の人が荒れやすい印象です。スキンケアの仕方が間違っていたり、アトピーやニキビなどで敏感になり、肌のバリアー機能が弱くなったりしている人も荒れやすくなります。

年齢や性別にさほど差はありませんが、マスクをつける時間が長い人、汗をかきやすい環境にある人、マスクをつけたまま話をする機会が特に多い人などは注意が必要です」

Q.マスクの素材による、肌への負担や影響の違いはありますか。

徳永さん「マスクの素材は、マスク内の『蒸れ』に関わります。蒸れることによって角質がふやけてふくらみ、肌のバリアー機能が弱まってしまうと、肌の内側からの水分蒸発が多くなり、乾燥しやすくなります。さらに、そこへ摩擦が加わると、蒸れによって弱ったバリアーが壊れていき、角質の層が薄くなるという悪循環に陥ります。つまり、蒸れることで、肌がどんどん摩擦に弱くなります。これが『ふやけ摩擦』です。

今は不織布のマスクをつけている人が多いこともありますが、マスクによる肌荒れでご相談にいらっしゃる患者さんの多くは、不織布マスクをお使いの人です。不織布マスクで『息苦しさ』『蒸れ』を感じる人もいると思いますが、基本的に『息のしやすさ』はウイルスを防ぐマスクの目的とは相反するものです。つまり、『ウイルス防御効果が高いマスク=通気性が悪い』ので、蒸れやすいといえます。

単純に蒸れにくい素材でいえば、綿などの自然素材がよいと考えられますが、素材や形状などの条件でも変わるため、一概にはいえません。不織布マスクにも、通気性のいいものもあれば、悪いものもあります。もし、不快なほどの蒸れを感じる場合は、マスクの素材や形状を替えてみてください。肌荒れしやすい人の場合、不織布マスクと顔の間に、綿や絹といった布製のマスクを挟むことで改善するケースもあります」

Q.もし、マスクを使っていて肌に違和感が出たら、どうすればよいですか。

徳永さん「マスクを使わない時間をできるだけ長くするか、違う素材のものに替えてみてください。また、肌に違和感があるときは、特に必要がなければなるべく肌を触らないようにして、洗顔の時間なども短く軽く済ませるようにしましょう。それでも改善されないときは、気軽に皮膚科を受診してください。なお、『明らかに発疹がある』『腫れている』といった際は早めの受診を推奨します」

Q.マスクの着用で肌トラブルが起こりにくいようにするために、日頃からできることは。

徳永さん「肌の大敵は、先述した『ふやけ摩擦』です。ぬれた状態で擦れることは肌にとって最もよくない、避けたい状態です。洗顔の時間は短く、軽く済ませ、保湿をする際もコットンなどでたたいたりせず、短時間で、手のひらで優しく押さえるだけにしましょう。

なお、脂性肌の人には、油分の強い保湿剤はあまり推奨しません。セラミドなど、肌バリアーを修復する成分の入った保湿剤を選ぶことをお勧めします」

(オトナンサー編集部)

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徳永理恵(とくなが・りえ)

医師(逗子メディスタイルクリニック院長 皮膚科、美容皮膚科、形成外科)

国立東京医科歯科大学医学部を卒業後、同大学形成外科所属。横須賀市立市民病院では美容レーザー外来の立ち上げを行う。都内美容皮膚科勤務を経て、2010年に「逗子メディスタイルクリニック」(神奈川県逗子市)を歯科医の夫と開院。自分自身の美しさを引き出す「美肌プログラム」を提案するなど、自然・健康・美容の街“逗子・葉山”で、生活の一部としての美容医療を啓発する活動をしている。3人の男子の育児にも奮闘中。日本形成外科学会、日本美容皮膚科学会、日本サポーティブケア学会所属。逗子メディスタイルクリニック(https://medi-style.jp/)。

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