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「医療脱毛」と「エステ脱毛」の違いと比較ポイント、皮膚科医に聞いた

半袖の季節になると、気になるのは「ムダ毛」の存在。「医療脱毛」や「エステ脱毛」を検討中の人も多いと思いますが、選び方のポイントはあるのでしょうか。皮膚科医に聞きました。

医療脱毛とエステ脱毛、自分に向いているのは?
医療脱毛とエステ脱毛、自分に向いているのは?

 今年も半袖の季節になりました。夏本番に向けて、脱毛を検討する人も多いと思います。自己処理以外の選択肢としては「医療脱毛」と「エステ脱毛(美容脱毛)」がありますが、この両者について「どう違うの?」「なるべく少ない回数で脱毛したいけど…」「痛みが強いのはどっち?」「自分に合う方を判断するポイントが知りたい」など、どちらがいいのか迷う声もあるようです。

「医療脱毛」と「エステ脱毛」の違いや、それぞれどんな人が向いているのかについて、逗子メディスタイルクリニック(神奈川県逗子市)の徳永理恵さん(皮膚科、美容皮膚科)に聞きました。

効果が得られるまでの回数・期間に差

Q.そもそも、「ムダ毛」は何のために生えているのですか。

徳永さん「もともと、動物の体に生えている毛には、外的刺激から肌を保護したり、有害な紫外線が肌に当たるのを防いだりする役割があります。さらに、発汗をスムーズに促したり、“断熱材”として機能したりするなど、体温調節を行う役目もあります。いわゆる『ムダ毛』はその名残で、外的刺激を受けやすい部分、擦れたりしやすい部分、汗をかきやすい部分は『多く』『濃く』なりやすい傾向があるのです」

Q.まず、「医療脱毛」の特徴や、メリット/デメリットを教えてください。

徳永さん「医療脱毛では、医療用レーザーを使って毛包(もうほう)の細胞を破壊することにより、『永久脱毛』をすることができます。といっても日本では、永久脱毛の定義が明確にされておらず、アメリカでの定義を元にしています。

米国電気脱毛協会(American Electrology Association)は永久脱毛について、『最終脱毛から1カ月後の毛の再生率が20%以下である脱毛』、米国食品医薬品局(FDA)は『3回の脱毛施術によって6カ月後、3分の2(67%)以上減毛していること』としているので、永遠に1本の産毛も生えなくなるというわけではありません。しかし、それだけの効果が得られるほどのパワーで毛包の細胞を破壊するのは、医療行為である『医療脱毛』(医療用レーザーを使った脱毛)にしか認められていません。

脱毛にかかる期間や回数としては、部位によってヘアサイクルが違う上に個人差もありますが、基本的には2~3カ月おきに、5回ほどの施術で満足されるケースが多いです。『医療脱毛は痛い』と思っている人もいるかもしれませんが、近年かなり改善され、毛包に与える熱の温度を徐々に上げていく『蓄熱式』タイプの脱毛器では、あまり痛くありません。

費用はクリニックによってまちまちで、大手のクリニックほど安く(全身5回10万円程度から)、個人のクリニックでは高い(全身5回100万円程度まで)傾向にあります。いずれにしてもクリニックでの処置になるので、万が一、皮膚にトラブルが起きても治療してもらえます」

Q.次に、「エステ脱毛」の特徴や、メリット/デメリットとは。

徳永さん「エステ脱毛は、メラニン色素に反応する光を照射して毛根を弱くするなどして、毛を“一時的に生えにくくする”施術です。医療脱毛のように高いパワーの機器を使えないため、痛みはその分少ないものの、毛の濃い部位は無痛ではありません。また、通い続ける必要があり、結果的に毛が減ってくる部位もあると思いますが、通うのをやめれば変わらず生えてくる人も多いです。そのため、満足のいく脱毛結果が得られるまで15回以上の施術、2~3年の期間を要するとされています。

一方、エステ脱毛は医療従事者が行う必要がなく、機器も安いため、施術費用は医療脱毛よりも安く、全身で月額数千円などの定額制を取り入れているサロンもあります。なお、低いパワーの機器を使っているとはいえ、やけどなどのトラブルはゼロではありません」

Q.つまり、医療脱毛とエステ脱毛の「違い」とは

徳永さん「一番の違いは、使用する脱毛機器です。毛包に、永久的に変化を与えるのは医療行為とされているので、それだけのパワーのある機器を使っているのが『医療脱毛』なのです。痛みについては差がなくなってきていますが、クリニックでは麻酔を使うこともできます。また、万が一トラブルがあった場合のアフターフォローにも差が出ます。クリニックには必ず医師がいるので、トラブルがあったときには薬などを処方してもらえます」

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徳永理恵(とくなが・りえ)

医師(逗子メディスタイルクリニック院長 皮膚科、美容皮膚科、形成外科)

国立東京医科歯科大学医学部を卒業後、同大学形成外科所属。横須賀市立市民病院では美容レーザー外来の立ち上げを行う。都内美容皮膚科勤務を経て、2010年に「逗子メディスタイルクリニック」(神奈川県逗子市)を歯科医の夫と開院。自分自身の美しさを引き出す「美肌プログラム」を提案するなど、自然・健康・美容の街“逗子・葉山”で、生活の一部としての美容医療を啓発する活動をしている。3人の男子の育児にも奮闘中。日本形成外科学会、日本美容皮膚科学会、日本サポーティブケア学会所属。逗子メディスタイルクリニック(https://medi-style.jp/)。

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