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山口達也さん不起訴処分も“前歴”は残り…「転職難しい?」「生活に影響は?」、弁護士に聞く

強制わいせつ事件により、山口達也さんが所属事務所を契約解除となりました。起訴猶予処分となり罪には問われませんでしたが、事件を起こした事実は揺るぎません。こうした「前歴」は、その後の人生にどんな影響を及ぼすのでしょうか。

「前歴」は就職などに影響する?
「前歴」は就職などに影響する?

 女子高生への強制わいせつ容疑で書類送検され、不起訴(起訴猶予)となった山口達也さんが、ジャニーズ事務所の所属契約を解除されました。ジャニーズ事務所は、山口さんが社会に責任を果たすために必要な支援を行っていくとし、今後も、山口さんをサポートしていくとコメントしています。これについてSNS上では「有罪ではないし、復帰に向けて頑張ってほしい」「書類送検の事実は消えないし、転職は難しいのでは」「今後の生活への影響が気になる」など、さまざまな声が上がっています。

 不起訴処分となり、結果として罪には問われなかったとしても、書類送検をされた事実は消えません。こうした「前歴」は、その後の人生にどんな影響をもたらすのでしょうか。オトナンサー編集部では、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

「前歴」は「前科」を含む概念

Q.そもそも、書類送検とは何でしょうか。

牧野さん「刑事事件を警察から検察へ送致(送検)する場合、容疑者の身柄が逮捕により確保され、身柄付きで送検されるのが『通常送致』です。一方、山口さんのように身柄がなく書類だけで送検する場合があり、これが『書類送検』です。一般的に、被疑者に実刑が見込まれる場合や、逃亡・証拠隠滅の恐れがある場合は通常送致、被疑者が反省し執行猶予などの軽い判決が見込まれる場合や、被疑者に逃亡や証拠隠滅などの恐れがない場合などは、書類送検になるとされています」

Q.不起訴とはどのような処分でしょうか。

牧野さん「不起訴の処分とは、検察庁において捜査を行った結果、刑事事件として起訴しないことを決定した処分をいいます。刑事事件として起訴されませんので、罪に問われることはありません。

不起訴の処分には、以下の3つのケースがあります。(1)犯罪の疑いがない場合(2)犯罪の疑いがないとはいえないが、犯罪の立証が十分にできない場合(3)起訴猶予(犯罪の嫌疑があり立証も可能であるが、事件の軽重や被疑者の反省状況、示談の成立など一切の情状を考慮して起訴しない場合)です」

Q.不起訴になったとしても、書類送検されると「前歴」がつくのでしょうか。「前科」との違いや、前歴がつく条件について教えてください。

牧野さん「『前科』と『前歴』に法律上の定義はありませんが、一般的には、以下の理解がなされています。

法律的には、刑事事件として起訴され、有罪判決(執行猶予付き判決を含む)を受けて、それが確定すると前科になります。逮捕、書類送検、送検、起訴の事実は、警察や検察に前歴の記録として残ることはありますが、有罪判決を受けてそれが確定するまでは前科とは言いません。

他方、前歴とは、前科を含むより広い概念を指し、『捜査機関により捜査の対象となった事実』のことです。書類送検されたものの不起訴処分になった場合も含まれます。前歴は、警察や検察などの捜査機関により捜査(逮捕、家宅捜索、事情聴取、送検、不起訴処分など)が行われた時点からつきます。書類送検されると、その記録が警察と検察のデータベースに記録されてそれが前歴となります」

Q.ついてしまった前歴を取り消すことはできますか。

牧野さん「前歴は消すことができません。前歴は検察や警察のデータベースに保管されているので死ぬまで残ります。ただし、報道される以外は外に漏れることはありません」

Q.就職活動時、履歴書に前歴を書く必要はありますか。前歴があるにもかかわらず、明記しなかった場合、経歴詐称と判断されるのでしょうか。

牧野さん「報道された場合を除き、一般企業が就活者の前歴に関する情報を公的機関から入手することはできせん。前歴は、個人情報の中でも『要配慮情報』とされる高度なプライバシー情報で、履歴書の賞罰欄の『罰』にも該当しませんので、就活者は履歴書に記載する必要はありません。ただし、雇用主から前科・前歴を確認されて虚偽の説明を行い、後日発覚した場合には、経歴詐称で内定を取り消される可能性があります」

Q.「書類送検され、起訴猶予処分が下された」という前歴は、日常生活にどのような影響を与えるのでしょうか。

牧野さん「結果として罪には問われていませんし、犯罪の容疑があっただけなので、日常生活に影響はありません。ただし、本人やその子どもが警察関係の職業を志願する時に、前歴が不利になる可能性はあるようです」

(ライフスタイルチーム)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。