酔ってタクシー乗車、車内で嘔吐…法的責任を問われる? 「車内清掃費」を請求されたら?
酒に酔った状態でタクシーに乗った後、車内で嘔吐してしまった場合、法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。弁護士に聞きました。

新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向にあり、夜になると飲食店で酒を飲む人を多く見掛けるようになりました。中にはつい飲み過ぎてしまう人もいるようで、よろめきながらタクシーに乗り込む人もいます。そうした酒に酔った人がタクシーに乗った際、気分が悪くなって車内で嘔吐(おうと)してしまった場合、何らかの法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。また、タクシーの運転手から「車内清掃費」などを請求された場合、支払いに応じなければならないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
損害賠償責任が発生
Q.酒に酔った状態でタクシーに乗車後、気分が悪くなり車内で嘔吐してしまった場合、その人は何らかの法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。
牧野さん「タクシーの車内を汚した場合、過失でタクシー管理者(タクシー会社か個人事業主)に損害を与えたことになり、タクシー管理者に対して、発生した損害を賠償する責任が生じます(民法709条・不法行為)」
Q.では、タクシーの車内で嘔吐してしまった人が運転手から「車内清掃代」を請求された場合、支払いに応じる必要があるということでしょうか。
牧野さん「タクシー管理者は発生した損害を証明する必要がありますが、先述のように、車内で嘔吐した人は、民法709条の不法行為に該当し、発生した損害を賠償する責任が生じます。運転手から『車内清掃代』を請求された場合、嘔吐した人は支払いに応じなければならないでしょう。
ただし、賠償額の決定には客側の合意が必要なので、運転手は免許証などの身分証明書を客に提示してもらい、後日双方の話し合いで解決するケースが多いと思います。
一般的にタクシーが被った損害は、汚れの度合いにもよりますが、汚物などを清掃して消臭することになり、数万円程度を請求されることが多いでしょう。基本的に運転手は清掃が完了するまでは業務ができないため、休業せざるを得なくなった場合、客は合理的な逸失損害(本来、通常通り業務していれば得られるはずだった売り上げ・利益が客の不法行為によって得られなくなること)の賠償を請求される場合もあるでしょう」
Q.タクシーの運転手から「車内清掃代」あるいは「合理的な逸失損害」として数十万単位の賠償を請求された場合、支払いを断ることができるのでしょうか。
牧野さん「先述のように、タクシーの車内を汚した場合、清掃代として数万円程度を請求されるケースが多く、また一般的に、タクシー運転手の1日の売り上げは数万円程度と言われているので、数十万円単位の請求は過剰だと思います。客は過剰な請求として支払いを断ることができるでしょう」
Q.ちなみに、タクシーの運転手が酒に酔った客の乗車を断った場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。
牧野さん「タクシーは公共サービスの側面もありますが、原則として契約自由の原則が適用されます。客を乗せる前の時点であれば運送契約はまだ成立していないので、そのときに乗車拒否をしても法的責任を問われないでしょう。
ただし、一度客を乗せてしまうとタクシーの運送契約が成立してしまうので、その段階で乗車を拒否すると契約違反となり、そのことで客に損害が発生した場合、運転手側に賠償する義務が発生するでしょう。
なお現実的に、客は乗車を拒否されても別のタクシーを拾えば損害が発生しない場合が多いので、過疎地の場合を除き、通常は客には損害が発生しないのではないでしょうか」
(オトナンサー編集部)
酒は55歳できっぱり止めた。人生残り少なくなると、脳を麻痺させている時間がもったいないから。
閑話休題。
自分なら、数万円こちらから申し出て払っちゃうけどなあ。迷惑掛けているのは事実だから請求されるまでほっとく?
それと、弁護士保険に入っています。不当請求は弁護士を入れましょう。