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芸能人結婚で「入籍」の表現…初婚同士でも「入籍」で正しい? 弁護士に聞く

芸能人の結婚を巡って「入籍」と発表される場合があります。男女共に初婚の場合、「入籍」という言葉は使わないはずですが、なぜ「入籍」という言葉がよく使われるのでしょうか。

結婚イコール「入籍」?
結婚イコール「入籍」?

 芸能人の結婚を巡って「入籍しました!」と発表があり、雑誌なども「○○さん入籍」と報じることがあります。男女共に初婚の場合、「入籍」という言葉は使わないはずですが、なぜ「入籍」という言葉がよく使われるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

「家制度」の考え、引きずっている?

Q.「入籍」とは一般的に、どういう場合に使う言葉なのでしょうか。

牧野さん「そもそも、入籍は読んで字のごとく『戸籍に入る=入籍』の意味であって、結婚に関していえば、『戸籍筆頭者と結婚し、その人の氏(名字)を名乗ってその人の戸籍に入ること』です。例えば、離婚歴のある人は戸籍筆頭者であることが多いので、その人と結婚して配偶者になる人は入籍することになるのが原則です。これに対し、男女共に初婚の場合は、入籍とは言わないのが一般的です」

Q.初婚同士の結婚の場合、なぜ、入籍とは言わないのでしょうか。

牧野さん「先ほど述べた離婚歴のある男性との結婚などの入籍に対して、初婚同士の結婚の場合は、原則として新しい戸籍を作るので、入籍とは言えません。『結婚=入籍』と考えている人が多いですが、正確にはイコールではありません。

現行の戸籍制度では、戸籍は原則として『1組の夫婦と、その夫婦と氏(名字)が同じ子ども』ごとに編製されます(戸籍法6条)。そのため、婚姻の届け出時に、その夫婦について新戸籍を編製するという原則を戸籍法16条で定めています」

Q.芸能人の結婚報道などで、初婚同士の結婚なのに入籍という言葉を使う人がいて、一部報道機関も入籍という言葉を使うことがあります。なぜでしょうか。

牧野さん「『女性は結婚によって、男性の籍に入り男性の名字を名乗る』(旧民法788条)ことを定めていた、昔の『家制度』の考え方を現在も引きずっているのではないかと思います。

旧戸籍法は旧民法の『家』制度を基礎としており、『家』を戸籍編製の単位にしていました。現在のように1つの戸籍が『1組の夫婦と子ども』とは限らず、1つの戸籍の中に『戸主』(家長=戸籍の筆頭者)夫婦や、戸主の長男とその妻など、複数の夫婦やその子どもがいることが一般的でした。なお、旧戸籍法は終戦後の1947年に全面改正され、1948年からは現行の戸籍法が施行されています。

ただし、1994年の戸籍法一部改正を受けた戸籍の電子化が完了するまでの間は紙ベースの戸籍簿が作成・保管されており、その旧書式においては初婚同士の場合も『入籍』という表現が使われていました。そのこともあって、初婚同士でも、入籍という言葉を使う人が、今でもいるのかもしれません」

(オトナンサー編集部)

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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