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石川震度6弱…地震頻発の日本列島 「命を守るための第一歩」とは?

世の中のさまざまな事象のリスクや、人々の「心配事」について、心理学者であり、防災にも詳しい筆者が解き明かしていきます。

家具を固定していないと、どうなる?
家具を固定していないと、どうなる?

 石川県で最大震度6弱を記録する地震が6月19日に起きるなど、このところ地震が頻発しており、南海トラフ地震の前触れではないかという臆測が飛び交っています。来る大地震に備えて何をすべきか、いろいろとお話したいところですが、防災はケース・バイ・ケースなので、「これでOK」という正解はありません。ただ、「命を守るための第一歩」として、ぜひ最初にやっておいてほしいことがあります。

最初の揺れから命守る

 筆者は地震の専門家ではないので、実際のところ、最近頻発している地震と南海トラフ地震の関係はよく分かりません。しかし、一つ言えることは、現代の科学では、私たちが身構えるのに役に立つほど正確に、地震の発生時期を予測することはできないということです。

 南海トラフ地震のような海溝型の地震は、プレートが動いている限り、周期的に繰り返し発生します。だから予測時期の範囲を数十年単位まで広げれば、かなり正確に発生を予測できます。実際に、南海トラフ地震は向こう30年間に70~80%の確率で発生すると予測されており、これはかなり高い確率です。

 しかし、30年の間のいつ身構えたらよいのかは、この情報からは全く分かりませんし、30年間机の下に潜って生活するわけにもいきません。それでも海溝型地震はいつか必ず起きるので、最近の地震が巨大地震の前触れであろうがなかろうが、被害を減らす準備をしておくに越したことはありません。

 先ほども触れましたが、筆者は繰り返し「防災はケース・バイ・ケースなので、これをやっておけばOKという正解はない」ということを書いてきました。この主張を曲げるつもりはありませんが、地震防災でみんなが共通してやっておいた方がよい対策を一つ挙げるとすれば、「最初の揺れでけがをしないための準備」だと思います。

 最初の揺れでけがをすると困るのは、個人属性も地域特性も家族構成も季節も時間帯も関係ありません。特に大災害の直後は、救助や医療の人員・設備・資材などが圧倒的に不足するので、平時のように適切な医療を受けられる保証はありません。また、津波や火災など、地震に付随して危険なことが起きた時に、けがをして逃げられなくなってしまうと、生き延びられる確率が大幅に下がります。

 では、私たちは何をしておけばよいのでしょうか。まずは倒壊した建物の下敷きにならないことが重要なので、自宅や職場など、長い時間いる建物の耐震性に問題がある場合には、補強をするか引っ越すことを検討してください。

 また、耐震性が十分か分からない場合には、専門家の診断を受けましょう。もちろん補強や引っ越しには大きな費用がかかり、生活の変化を伴うこともあるので、容易ではありません。しかし諸般の事情が許すなら、シンプルで有効な対策です。自治体によっては、診断や補強に補助金を出しているところもあります。

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島崎敢(しまざき・かん)

近畿大学生物理工学部准教授

1976年、東京都練馬区生まれ。静岡県立大学卒業後、大型トラックのドライバーなどで学費をため、早稲田大学大学院に進学し学位を取得。同大助手、助教、国立研究開発法人防災科学技術研究所特別研究員、名古屋大学未来社会創造機構特任准教授を経て、2022年4月から、近畿大学生物理工学部人間環境デザイン学科で准教授を務める。日本交通心理学会が認定する主幹総合交通心理士の他、全ての一種免許と大型二種免許、クレーンや重機など多くの資格を持つ。心理学による事故防止や災害リスク軽減を目指す研究者で、3人の娘の父親。趣味は料理と娘のヘアアレンジ。著書に「心配学〜本当の確率となぜずれる〜」(光文社)などがあり、「アベマプライム」「首都圏情報ネタドリ!」「TVタックル」などメディア出演も多数。博士(人間科学)。

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