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「大変混み合っています」にイラッ…「コールセンター」がつながりにくいのは、企業の怠慢?

メーカーや販売店のコールセンターに電話をかけると、つながらないことが多く、イライラした人も多いと思います。なぜ、つながりにくいのでしょうか。

コールセンターはなぜ、つながりにくい?
コールセンターはなぜ、つながりにくい?

 メーカーや販売店のコールセンターに電話をかけたとき、何度かけても「現在、電話が大変混み合っております」と自動音声が流れてつながらず、イライラした経験のある人は多いのではないでしょうか。電話がつながりにくいのは、以前からずっと言われ続けており、企業イメージの悪化につながり、ビジネス的にもマイナスだと思うのですが、なぜ、コールセンターへの電話はつながりにくいのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

“つながりにくさ”の解決 難しい

Q.なぜ、コールセンターへの電話はつながりにくいのでしょうか。

大庭さん「4つの理由が考えられます。1つ目は『オペレーター不足によるもの』です。オペレーター業務はアルバイトの人材が配置されていることが多く、時間帯や曜日によっては人手不足に陥ることがあり、電話がつながりにくくなることがあります。

2つ目は『電話が集中するタイミングがあること』です。テレビショッピングでは、テレビのCMが流れた直後の時間帯は電話が集中します。アフターサービスなどの窓口となるコールセンターも、働いている人たちが帰宅した後の夜の時間帯や、お盆・年末年始などの時期は電話が混み合い、電話がつながりにくくなることがあります。

3つ目は『1人の電話にオペレーターが長時間対応することがあること』です。相手の声が聞き取りづらい場合や執拗(しつよう)なクレームなどの場合、オペレーターも時間をかけて対応する必要があり、電話がつながりにくくなることがあります。

4つ目は『顧客以外から電話がかかってくることがあること』です。コールセンターはフリーダイヤルで対応するため、取引先企業などが電話をしてくることもあり、その場合、オペレーターは担当部署への取り次ぎを行わなければならないため、電話がつながりにくくなることがあります」

Q.あまりにもつながらないと、企業イメージの悪化につながると思います。企業は、コールセンターに電話がつながりやすくするための努力をしているのでしょうか。

大庭さん「もちろん、コールセンターを保有する企業の多くは、電話をつながりやすくするための努力をしています。例えば、一人一人のオペレーターが最短時間で的確な対応を行うことができるように、研修やマニュアルの徹底を行っています。音声ガイダンスを導入して、あらかじめ録音することを伝えることで、いたずら電話や不要な電話を減らすようにしているコールセンターもあります。

近年はAI(人工知能)の機能を活用することで、電話をつながりやすくする取り組みも行われています。AIが対応すべき担当部署を判断することで、(1)電話のたらい回しを防ぐ(2)AIが通話中の音声を文字に変換することで、オペレーターが通話を記録する手間を省き、対応時間を短くする―などの取り組みです。AIとチャットを組み合わせることで24時間対応を可能にし、つながらないことによる不満を解消する取り組みも行われています」

Q.企業の努力は理解できましたが、それほど改善しているようには思えません。本気度が足りないのではないでしょうか。

大庭さん「多くの企業は改善のための努力を懸命に行っており、本気度が足りないわけではありません。しかし、想定以上に問い合わせの件数が増加していることや、オペレーターの人手不足が加速していることが原因で、消費者の印象としては、相対的に電話がつながりにくい状況が改善していないように見えるのです。

問い合わせの件数が増加する背景には、製品やサービスの差別化競争が激化したことで、それらの機能や内容が多様化し、操作が複雑になったり、簡単に理解することが難しくなったりしたことなどがあります。

オペレーター不足が加速している原因としては、従来は、コストを削減するために企業側が人件費の安いアルバイトを大量に確保する対応を行っていたのが、労働力人口の減少に伴う人材の奪い合いが生じて、必要な人手を確保することが難しい事情があります」

Q.消費者は、問い合わせなどでコールセンターに電話した際、すぐに電話がつながり、聞きたいことを聞けるのが当たり前であってほしいと考えます。これをメーカーや販売店に求めることは、ぜいたくなのでしょうか。

大庭さん「消費者は、自身の思うように使用や利用を続けられることを前提にして、商品やサービスを購入します。購入するかどうかは、現物を見たり、口コミで評判を把握したりして判断するのですが、購入後に商品やサービスを使用したり、利用したりする中で、新たな情報が必要となる場合もあります。

その場合、メーカーや販売店は、商品やサービスを販売したことに付随する対応として、消費者が必要とする情報を正確、かつタイムリーに提供する道義的責任があります。その手段の一つにコールセンターがあり、すぐに電話がつながり、聞きたいことを聞けるのが当たり前だと消費者が考えることは当然の欲求で、ぜいたくではありません」

Q.コールセンターにつながりにくい問題は今後、どのようになると思われますか。

大庭さん「コールセンターへの電話がつながりにくい状況は、今後も続いていくものと考えられます。消費者のニーズが多様化し、コールセンターへの問い合わせ件数が増えることが想定される半面、労働力人口が減少傾向にあり、慢性的なオペレーター不足が想定されるためです。

ただ、コールセンターは企業イメージの向上につなげるだけでなく、消費者のニーズを把握するためにも重要です。そのため、今後もコールセンターがなくなることはないと考えられます。

しかし、つながりにくい状況が常態化してしまうと消費者の不満が高まるため、メールやチャットでの対応、AIの活用など、コールセンターの形態が多様化していくのではないでしょうか」

(オトナンサー編集部)

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大庭真一郎(おおば・しんいちろう)

中小企業診断士、社会保険労務士

東京都出身。東京理科大学卒業後、企業勤務を経て、1995年4月に大庭経営労務相談所を設立。「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心に企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。以下のポリシーを持って、中堅・中小企業に対する支援を行っている。(1)相談企業の実情、特性に配慮した上で、相談企業のペースで改革を進めること(2)相談企業が主体的に実践できる環境をつくりながら、改革を進めること(3)従業員の理解や協力を得られるように改革を進めること(4)相談企業に対して、理論より行動重視という考えに基づき、レスポンスを早めること。大庭経営労務相談所(https://ooba-keieiroumu.jimdo.com/)。

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