「泡盛」酒税軽減廃止へ 増税乗り越えた「本格焼酎」ブームの再現はある?
「琉球泡盛」世界進出に期待
Q.では、泡盛については、本格焼酎の税率アップのときと同様にはいかない、ということでしょうか。
狩野さん「今回、前回のときのような追い風が生まれる条件はありません。ただし今回酒税が上がるのは県内で飲まれている分だけであり、本土に出荷している分は影響ありません。そもそも沖縄県内酒類市場での泡盛は異常といえるほどシェアが高いのです。その理由は地元産品を愛するという精神的なもの、食べ物との相性がよいこと、泡盛の飲み方のレシピ開発が進み多くの飲酒シーンで泡盛が飲まれているからですが、相対的に価格が安いという理由も大きいと思います。
泡盛や本格焼酎も装置産業の側面もありますから、酒税というアドバンテージがなくなると、本土や海外の大きなメーカーの商品との価格競争に巻き込まれて不利になります。どこの国でも日常的に飲む酒の選択理由には経済性という側面が大きいですから。例えば日本酒の市場でも、市場の大きな日常の晩酌では大メーカーの経済酒が中心となり、小規模な地酒は高付加価値・高価格の嗜好(しこう)品市場や海外に勝機を見いだして、すみ分けられてきました。泡盛でも中小規模の生産者は、より高付加価値・高価格にシフトしていくと思います。
政府も付加価値を付けた日本産酒類の海外輸出振興には積極的です。他の酒類同様に2004年、『琉球泡盛』が地理的表示(GI)として使えることになり、本土や海外で差別化がしやすくなりました。これに対応して泡盛業界も古酒の品質を高めるため、基準を厳格化しました。かつては、一定年数寝かせた古酒に、仕次ぎで新しい酒を足したもの、ブレンドものでも『古酒』と表示できましたが、今では、『〇年古酒』と表示するには、中身すべてが表示している年数以上貯蔵したものでなければ表示できなくなりました。英米のウイスキーの年数表示基準に合わせて、堂々と世界の市場に打って出られるようにしたのです。
いま、日本産のクラフトウイスキーが海外でも注目を集めています。これは何回もサントリーやニッカが世界の品評会で好成績を収めて、スコッチメーカーにも一目置かれていたところに、新興の『ベンチャーウイスキー』(埼玉県秩父市)なども高い評価を受けたので、特定の商品だけでなく、『ジャパニーズウイスキーがすごい』と産地としての評価が高まったからです。
泡盛でも、同じことが起きてほしいと思います。まずは海外でも複数の生産者の泡盛が高く評価されて『琉球泡盛』という産地カテゴリーとして高く評価されるようになることを期待しています。
本土復帰50年を機にした軽減措置全廃を逆手に取り、県内だけでなく本土や世界市場を見据えて、泡盛のマーケットが拡大していくことを期待しています」
(オトナンサー編集部)
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