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「おもてなし」と逆では? 椅子の”座り心地が悪い”飲食店がある理由

飲食店の中には、椅子の座り心地がとても悪い店がありますが、それが飲食店にとってメリットになることもあるようです。本当でしょうか。

座り心地の悪い椅子の効果とは?
座り心地の悪い椅子の効果とは?

 飲食店の中には、椅子の座り心地がとても悪い店があります。座面が硬い木の素材だったり、背もたれがなかったり、隣の席との幅が狭く固定されていたりと、店員から「ごゆっくりどうぞ」と言われても「ゆっくりできないよ!」と思わず言いたくなるような椅子もあります。「おもてなし」と逆行しているように思うのですが、こうした座り心地の悪い椅子が、飲食店にとってメリットになることもあるようです。飲食店の椅子が「座り心地が悪い」方がよいこともあるのは本当なのでしょうか。飲食店コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

客の回転率を早める効果

Q.飲食店の椅子が、「座り心地が悪い」方がよいこともあるのは本当なのでしょうか。本当の場合、どのようなメリットがありますか。

成田さん「確かに、『座り心地が悪い』方がよいこともあると思います。飲食店経営もビジネスです。席の座り心地が悪いことで、食事が終わっても長居したくない気持ちにさせ、席の回転率をアップさせる効果があるでしょう。その他にも、総合的な雰囲気づくりや初期費用削減などのメリットもあります」

Q.座り心地が悪いとされる椅子は、どのような飲食店に設置されていることが多いのでしょうか。

成田さん「基本的には、低価格帯の飲食店や、来店客がゆっくりと食事することを想定していない飲食店が多いです。これらの飲食店の来店客は、『食事をして空腹を満たすこと』を主要な目的にしていると考えられます。そのため、『座り心地が良い』とされる椅子へのニーズは、それほど高くないので、飲食店もその部分に高いコストはかけないでしょう」

Q.座り心地の悪い椅子を設置していることで、「料理はおいしいけど、椅子が座りにくいからもう行かない」として、常連になり得る客を逃すデメリットはないのでしょうか。

成田さん「店の雰囲気づくりや、顧客ターゲットに対してミスマッチの場合は、デメリットになる可能性はあります。一方、低価格帯の飲食店や、来店客がゆっくりと食事することを想定していない飲食店のように、『座り心地が悪い』とされる椅子の場合でも、その店の雰囲気や顧客ターゲットが合っていれば、逆にメリットとなり得るでしょう」

Q.座り心地がよい椅子を設置すると、喜ぶ客が多いと思いますが、飲食店側にとってデメリットになることがあるのでしょうか。

成田さん「『座り心地が良い』とされる椅子は、導入費やメンテナンス費も高額になります。また、席の回転率では、多くは提供オペレーションに問題がある場合が多いのですが、『座り心地が良い』とされる椅子を使用することで、来店客の滞在時間に影響を与える場合もあるでしょう」

Q.私たちが飲食店に入るとき、主にメニューや価格、店全体の雰囲気を比べて決めますが、今後は椅子も選択肢に入れた方がよいのでしょうか。入れた方がよい場合、どのように見分ければよいですか。

成田さん「椅子の座り心地を含め、飲食店は料理の味や接客の質、店全体の雰囲気、居心地の良さなど、その飲食店で味わえる『幸せの時間』に料金を払っていると私は考えています。

人によって合う合わないの好みもあり、飲食店の本当の良さは、入店してみないと分かりません。その飲食店の値段が高く感じるか安く感じるか、椅子の座り心地はどうか、その飲食店をまた利用したいか利用したくないかなど、試しに入店してみて、自分の率直な気持ちでお気に入りの飲食店を探してみてはどうでしょうか」

(オトナンサー編集部)

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成田良爾(なりた・りょうじ)

飲食店専門経営コンサルタント

ヴィガーコーポレーション代表取締役。厚生労働省公認レストランサービス技能士(国家資格)、文部科学省後援サービス接遇検定準1級、食生活アドバイザー2級、他。飲食業界25年以上。ミシュランガイド掲載の高級レストランから個人経営の小さな大衆店まで幅広いジャンルの飲食店に携わり、その経験に基づく統計解析および枠にとらわれないアイデアで多くの赤字店を黒字化させてきた実績を持つ。「100年続く店づくり」をモットーに、次世代育成や飲食業の働き方改革などにも力を入れており、食文化普及の他、職業訓練校講師(フードビジネス科)や子育て女性就職支援事業講師なども歴任。現在も多くの飲食店経営者のサポートを手掛ける。飲食店専門のコンサルティング「オフィスヴィガー」HP(http://with-vigor.com/)。

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