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11月の「酉の市」、そもそもどういうお祭り? 縁起物「熊手」の理由は?

毎年11月に行われる「酉の市」。関東地方以外では、あまり知られていないこともありますが、どのようなお祭りなのでしょうか。

華やかな熊手が並ぶ「酉の市」
華やかな熊手が並ぶ「酉の市」

 毎年11月になると、関東を中心に「酉の市(とりのいち)」というお祭りが行われます。華やかな縁起物「熊手」を買い求める参拝客でにぎわうお祭りですが、ネット上では「上京して初めて、酉の市のことを知った」「私の地元にはないお祭り」という声や「どうして“酉”なの?」「熊手にはどんなご利益があるの?」などの疑問もあるようです。

「酉の市」とは、どのような由来を持つお祭りなのでしょうか。日本礼法家元で、令和椿和文化協会会長の椿武愛子(つばき・むつこ)さんに聞きました。

五穀豊穣願い、鶏を奉納

Q.酉の市とは、どのようなお祭りなのですか。起源や歴史について教えてください。

椿さん「酉の市は、鳥を信仰する寺社で行われる年中行事として知られています。由来には諸説あり、発祥の地とされている大鷲(おおとり)神社(東京都足立区)で、近隣農民が秋の農作物の収穫を祝い、五穀豊穣(ほうじょう)を願って、鶏を奉納したお祭りがその始まりといわれています。

また、他の神社の伝承では、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が戦いでの勝利を祝し、そのお礼参りに訪れた日が11月の『酉の日』であったからという説もあります。現在では、商売繁盛や開運招福のご利益があるお祭りとして定着しています」

Q.酉の市が行われている地域はどこですか。

椿さん「酉の市は全国各地で行われていますが、大きなお祭りとして行っている所や、のぼりを上げるだけの所など、規模は地域によってさまざまです。中でも盛んに行われるのは関東地方で、鷲(おおとり)神社(東京都台東区)、花園神社(同新宿区)、大国魂(おおくにたま)神社(同府中市)が関東3大酉の市として有名です」

Q.なぜ、「酉」なのですか。

椿さん「先述の通り、鳥(酉)にゆかりのある寺社で行われることに由来する他、干支(えと)の『酉』も指します。十二支を日付に当てた暦では、12日おきに『酉の日』が巡ってきますが、米の刈り入れ・収穫の時期であることから、毎年11月の『酉の日』に酉の市が行われるようになりました。なお、日付の巡り合わせによって、11月の『酉の日』が2回ある年と3回ある年があり、2021年は11月9日と21日の2回が酉の市の日です」

Q.酉の市の縁起物は「熊手」が知られていますが、なぜ、熊手が縁起物として売られているのですか。

椿さん「もともとは農具である熊手が縁起物とされているのは、その形状から、『神様の御加護を集める』『幸せをかき集める』ものといわれているためです。酉の市で売られている熊手は、おかめの面や小判、ますなどの縁起物が多くつけられた豪華なものが多く、『年中の福徳を集められるように』との願いが込められています。

購入した熊手は家の中で、自分の目線より少し高い場所に飾ります。神棚がある家は目線と神棚の中間くらいの位置で、目によく触れる場所を選ぶのがよいでしょう」

(オトナンサー編集部)

【写真】「酉の市」を彩る華やかな熊手

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椿武愛子(つばき・むつこ)

日本礼法家元、令和椿和文化協会会長、ビジネスマナーコンサルタント

北海道釧路市出身。戸板女子短期大学生活科卒業。結婚後、国内における東西のマナーや風習の違いを肌で体感し、主婦の傍ら、作法・和・洋テーブルマナーを学び、日本礼法会教授資格を取得。1988年から、札幌でイベント企画を手掛け、自らも司会やマナー講師として活動。現在、椿武愛子オフィス代表として各種マナー講習会や講演、企業向け接客マナー研修に携わりながら、多様な和文化を伝えていく活動を行っている。令和椿和文化協会(https://www.tsubakimutsuko.jp/wabunka/)。

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